人手不足が懸念されているのは、運転手で言えばバスもそうですし、建設関係とか、飲食店の店員なども集まりにくくなっていると言います。これから労働人口が減っていく時代、物流を支えるトラックドライバーを含め、各方面の人手不足は、私たちの生活にも直接影響が及ぶ可能性があります。
国土交通省は、潜在的に相当な人数のトラックドライバーが不足していると見ています。すでに、ドライバーの手配に苦慮するところも出てきており、全日本トラック協会などの調べでも、今後急速にドライバーのなり手が減っていくと予想しています。
ヤマトなど8社が共同輸送 運転手不足で対策
ヤマト運輸、西濃運輸など物流大手が、企業向けの幹線輸送でトラックを共同運行する。トラックの空きスペースや集配拠点を相互活用する。輸送費が割高になりがちな地方路線が対象。景気回復による人手不足でドライバーの確保が難しくなっており、企業の枠をこえた異例の連携で定時輸送などサービス品質の維持とコスト低減を狙う。(後略 2014/6/12 日本経済新聞)
トラック・バス運転手不足、若者や女性に「やさしい働き方」を…労働力確保対策へ
国土交通省は、トラックやバスなどの運転手、自動車整備士の不足が深刻化していることから「自動車運送事業における労働力確保対策」を実施すると発表した。(後略 2014年07月08日 レスポンス)
物流システムの進歩で即日配達など利便性が増し、ネット通販などの普及もあって、物流量は増加する一方です。しかし、それを支えるトラックドライバーが確保できなければ、物流システムの根幹を揺るがしかねません。この業界でも人手不足対策が急務となっています。

対策として考えられるのは、まずモーダルシフトでしょう。これまでは、船や鉄道からトラック輸送へと置き換わってきましたが、その流れの逆転です。長距離の輸送をトラックから貨物列車に積み替えたり、時間がかかることから敬遠されてきた内航海運、国内の港間の船による輸送が注目されています。
海外を中心に、トラックの自動運転化や、小型の無人ヘリコプターによる輸送なども開発されていますが、実用化されるとしても、まだ先のことになるでしょう。長距離の輸送には鉄道などが使えるとしても、問題はその先です。駅や港から倉庫や工場、物流基地などへの輸送にはトラックが必要となります。
さらにその先、顧客企業や個人宅などに届けるには、どうしてもトラックに頼らざるを得ないでしょう。宅配便などの集配の部分はトラックドライバーに依存する形となっています。この集配の部分について、宅配便大手の佐川急便の新しい試みが報道されています。
主婦の宅配パート1万人採用へ 佐川急便、空き時間を活用
佐川急便が2016年3月末までに約1万人の主婦のパート採用を進めることが19日、分かった。1日30個程度の宅配便を子育てや炊事の空いた時間に自宅周辺で届けてもらう考えだ。主婦の労働力を積極的に活用し、インターネット通販の普及による宅配便の増加に備える。
佐川急便がパートの自宅に荷物を届け、自転車や徒歩などで配達してもらう。都市部では1日に約3時間で配達できる個数を目安に仕事をしてもらう。採用後に研修を実施。原則として配送個数に応じて給与を支払う。都市部で平日5日間働いた場合、月5万〜8万円になるという。(2014/06/19 共同通信)
幹線部分はトラックで輸送し、その先を徒歩や自転車の主婦に分担してもらおうという作戦です。トラックではなく徒歩や自転車であれば主婦でも出来ます。運転手不足が理由とは書いてありませんが、トラックの運転手が集まらないなら、違う形の労働力で代替しようという発想なのでしょう。
もちろん、中には重かったり大きかったりするものもあると思いますが、宅配便の貨物の多くの部分を、我々が玄関で受け取るような贈答品や通販のダンボールが占めるのでしょう。少なくとも住宅地などへ配送する荷物の相当の部分が、徒歩や自転車でも配達可能だからこそ、成り立つ作戦だと思われます。
トラック物流の一部を自転車で代替する試みと言うことが出来るでしょう。実は、トラックを自転車で代替する動きは、欧米の各都市でも進んでいます。海外の場合は、必ずしも人手不足対策ではありませんが、自転車による配送には、多くのメリットがあるからです。

まず、小回りがきき、渋滞の影響を受けにくいことがあげられるでしょう。都市部では、渋滞に巻き込まれるトラックより速く運べる場合も少なくありません。トラックの駐車スペースや荷捌きスペースを探す手間も省けるため、より時間の短縮になります。
駐車スペースの関係でトラックより近くまで運べることも多いはずです。そして、何より燃料代がかかりません。トラックと自転車では車輌購入の初期費用も比べものになりません。駐車場代とか保険料、整備費用などのランニングコストも圧倒的に安く済みます。
環境への負荷の観点が注目されるヨーロッパでは、特に温暖化ガスを排出せず、大気汚染もなく、騒音も少ない、化石燃料を消費しないといった点も大きなポイントです。欧州の集配業者の中には、あえて自転車しか使わないことで付加価値を高め、人気を博している会社もあります。

自転車が事故を起こさないわけではありませんが、少なくともトラックよりは人を殺しません。道路の大きなスペースを占めて邪魔になるのもトラックの比ではありません。欧米では、自転車のイメージが総じていいことも、その背景にあるようです。
ただ、トラックと比べれば運べる荷物が少ないのが難点のような気がします。でも、実は必ずしもそうとは限らないと言います。トラックの荷台の大きなアルミの箱の中に、荷物が満載されているとは限りません。大きな車輌がごく少ない、小さな荷物しか運んでいない場合も少なくないのです。
トラック輸送において、最終的な顧客への集配部分、都市部における貨物輸送の部分は、とても効率が悪いことがわかっています。宅配便などの場合、細かく担当エリアが分かれていますが、いつも満載になるほど荷物があるわけではありません。つまり、必ずしも自転車が効率が悪いとは言えないのです。
もちろん、自転車では運べないものもあるでしょう。ただ、これについても、都市での一定期間の積荷を調べた結果、トラックでなければ運べない荷物は全体の10%以下だったとの調査もあります。場所や時期にもよるでしょうが、自転車でも、かなりの部分が代替でき、必ずしも効率が悪いとは限らないのです。

国際総合物流のUPSは、ロンドンオリンピックの期間中、市内のひどい渋滞で業務が滞るのを防ぐため、自転車を使って集配を行ないました。しかし、オリンピックが終わっても、そのまま自転車を使い続けています。むしろ自転車のほうが効率がよく、コストが削減できることがわかったからです。
日本では普及していませんが、欧米の場合はカーゴバイクの存在があります。これを使えば、かなりの重さ、かなりの量の荷物が運べます。佐川急便のパートが自分の自転車の持ち込みだとすると、多くはママチャリということになりますが、ママチャリで運べる荷物は限られます。
カーゴバイクであれば、普通の自転車と違って、相当な荷物が運べます。例えば子ども4人を乗せても安定しており、実用的なスピードが出ます。一般的な日本人の感覚では考えられないようなもの、例えばビール瓶のケースのような重い荷物でも運べ、十分に実用的です。

もちろんトラックドライバーより脚力は必要になりますが、今どきは電動アシストもあります。狭いエリアの範囲内の集配ならば、距離も短く自転車で運んだほうが手っ取り早いことも少なくありません。動力が人力であることは、問題にはならないようです。実際、自転車配送が増えているのが、それを裏付けています。
配送に限らず、サービスや物販などにも自転車が使われ始めています。用途に応じて、さまざまなタイプのカーゴバイクが利用出来ます。日本でも、こうしたカーゴバイクの利用が進めば、さらに自転車の活用が効果的になるに違いありません。
日本では、自転車の輸送手段としての活用は限られてきました。ほとんどは、普通の自転車の前カゴや荷台に乗るくらいの荷物にしか使われてきませんでした。でも、欧米で普及しているようなカーゴバイクを使えば、輸送能力も上がり、さまざまな可能性も広がります。
今後はトラックドライバーの不足が懸念され、自転車による代替が大きな力になる可能性があります。渋滞や公害、交通安全の面などからもメリットは大きいはずです。物流の面から考えても、都市部においては、カーゴバイクが使えるような環境整備を進めていくべきではないでしょうか。
台風で初めての特別警報ですか。この時期最強クラスの台風とのこと、その影響が心配されます。
Posted by cycleroad at 23:30│
Comments(6)
クロネコヤマトは既にトラックとリヤカーを使い分けて配達しているし、日本郵便は軽四・バイク・自転車を、佐川急便はトラックと軽四を使い分けている。ヨーロッパだけでなく、日本の運送業も既に以前から目的と地域に合わせて配送手段を使い分けているんだよね。
うちの会社でも2トントラック、ハイエース、ライトエース、軽四、バイク、自転車を使い分けている。近々、原付二種?(50ccよりちょっとだけ大きいバイク)も採用するとかしないとかいっている(50ccはどこでも止めれるが、移動力が低い為)。
一般人は知らないだけで、既に企業の現場では色々な取り組みが試行錯誤されているんですよ。