祭典と言っても、ワールドカップのような世界的なものから、ごく限られた人にしか知られていないようなものまで、さまざまです。自転車に関連するものだけに絞っても、世界では無数のイベントが開かれています。その一つに、世界のカーゴバイクの祭典、“
The International Cargo Bike Festival "という催しがあります。
日本で自転車と言うと、ほとんどの人がママチャリをイメージします。実際に街を走っている自転車のほとんどがママチャリと言っても過言ではありません。一部のスポーツバイクも含めて、そのほとんどが乗用の2輪の自転車であり、欧米のようなカーゴバイクは全く普及していません。
ですから、輸送に自転車を使うと言っても、新聞や郵便を運ぶくらいしかイメージ出来ないのが普通でしょう。場所によっては、電動アシスト自転車の後ろにリヤカーを牽引して配達する宅急便を見ることもありますが、あまり自転車が輸送のために使われているシーンは多くありません。
これがヨーロッパなどに行くと、都市にもよりますが、当たり前のようにカーゴバイクが走っています。前回、自転車による輸送の話を取り上げましたが、欧米では、自転車での輸送は珍しいことではなく、そこにたくさんのカーゴバイクが活用されています。
前回は、トラック輸送の代替ということで、UPSやFedEx、DHLをはじめとする集配業者のカーゴバイクを載せましたが、当然ながらそれだけではありません。運送会社以外でも、配達や運搬に使っている企業や商店があったり、街頭で商売する露天商がいたり、街を巡回するサービスマンが使っていたりします。
一般の市民も子どもや荷物を載せて走っています。カーゴバイクと言っても特殊な人が使うものではなく、とても身近なものなのがわかります。その用途、運ぶものによって、タイプ、形もさまざまです。挙げればキリがないほど、たくさんの種類があります。
このカーゴバイクの祭典、“The International Cargo Bike Festival"が、今年は四月にオランダのナイメーヘンというところで開かれています。 主に、このイベントに集まった自転車から、どんなカーゴバイクがあるのか、見てみたいと思います。
まず、このあたりがポピュラーなタイプと言えるでしょうか。どちらも前方に荷台がありますが、前輪が1輪のものと2輪のものがあります。子どもを3〜4人乗せても余裕です。このことからも、相当の重量のものが意外にラクに運べることがわかります。
荷台部分の重心が低いので安定しています。万一、倒れたとしても、日本の子ども乗せ自転車と比べて乗せる位置が低いため、落下による衝撃が小さいのは明らかです。3輪のものは大きな荷台が可能で、かなり大きなものが載せられます。
後ろに荷台のあるタイプもあります。普通の自転車の荷台に取り付けるのと比べて相当大きな箱が取り付けられます。ビールケース4箱と人間一人を乗せても余裕です。さすがに、坂になるとキツいだろうと思いますが、起伏の多い場所では電動アシストという手もあります。
この大きな荷台を使えば、さまざまな用途に対応したカーゴバイクが作れるでしょう。焼きそばの屋台を載せ、止まったその場ですぐ営業も可能です。
こんな長尺物が運べるカーゴバイクもあります。街路樹やクリスマスツリーの運搬だって出来るでしょう。
荷台の箱の大きさによっては、日本の軽トラ並みの積載量が実現できそうです。
普通の自転車で牽引するトレーラータイプもあります。カーゴバイクでトレーラーを牽引すれば、さらに大積載量が実現します。
運転席にフードを取り付けることも容易になります。少しくらいの雨なら問題ありません。
左は、テーブル部分がカーゴバイクです。ちょっとしたテラスが丸ごと移動可能です。右はクレープ屋さん用でしょうか。
流線型のカウルやボディーを取り付けた、オシャレなデザインのものもあります。一方、荷台だけのものは汎用性が高く、何でも運べそうです。
普通のビジネスマンでも、ちょっと荷物が多い場合はカーゴバイクが便利です。ふだんからカーゴバイクでもいいかも知れません。一方、イザという時のために、カーゴバイク的に使うことを想定したフレームというアイディアもあります。
左は、ピザを焼く竈のようです。これなら本格的なピザも露店で販売できます。右のように、シンクや冷蔵庫なども、まとめて移動可能になります。
都市近郊の農家なら、採れたて野菜の移動販売なんかも出来るでしょう。自転車を離れる場合に、シャッター式ならば安心です。
大きな荷台の箱は、そのまま看板にもなり、広告効果が期待できます。運転席に「ひさし」の出たデザインは、暑い日にありがたいでしょう。右は新聞記事ですが、新聞や雑誌の販売スタンドも移動で営業する人がいるようです。
オーダーメイドしたり、自分でカスタマイズする以外にも、用途ごとにパーツを乗せかえる形のカーゴバイクも販売されています。
メッセンジャーもカーゴバイクを使えば、書類や図面など以外の荷物を引き受けることが出来ます。
荷物でなく人を乗せられるようにすれば、スクールバスのように使うことも出来ます。右のようにトレーラー型に連結していけば、相当大きなものも運べます。
トレーラー以外の本体部分も、2輪や3輪、4輪とは限りません。なかには、8輪の自転車版大型トラックとでも言うべきカーゴバイクまであります。重さ450キロ、10立方メートルの荷物でも運ぶことが出来ます。
カーゴバイクを載せて運ぶことも可能なカーゴバイクです。ここまで大きなカーゴバイクは、さすがに珍しいと思います。二人でこいでも、それほどスピードは出ないでしょう。渋滞をひき起こさないか心配になります。
でも、考えてみれば、クルマだって、たまに大きなクレーンなどの重機が低速で走っていることもあるわけですし、軽車両が遅いのは仕方がありません。抜かしてもらえばいいことですし、渋滞する都市部では、スピードが多少遅くても、それほど問題にならないのかも知れません。
いろいろと個性的なカーゴバイクがあるものです。もちろん欧米でも、日本のように普通の自転車の前後に荷物を積んで走っている人がいないわけではありません。しかし、荷物を運ぶのがわかっているなら、最初からカーゴバイクにしたほうがリーズナブルにも見えてきます。
こうして見てくると、用途や運ぶものによって自転車の形が変わるのは当たり前で、日本のように、何でもママチャリを使おうとするのが、むしろ不自然に見えてきます。誰もがみんなママチャリに乗っている光景のほうが、不思議な感じがしてこないでしょうか。
実際に、日本は世界的にみても特殊な自転車環境であり、基本的に自転車が歩道を走っている国は他にありません。その日本の法令でも、さすがにカーゴバイクは歩道走行できません。だからこそ、日本ではカーゴバイクが走っておらず、普及しないわけです。
これほどまでに車道を『クルマ優先』にして、自転車を歩道に押し込めるほうが、世界的に見れば異様な光景であることは知っておくべきでしょう。日本でも、もっといろいろな自転車、個性的なカーゴバイクが走るようになって、『貨物自転車祭り』が行なわれるのを見てみたいものです。
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台風が過ぎたと思ったら、すごい暑さです。エルニーニョも遅れるそうですし、今年も猛暑ですかね。
カーゴバイク,良いですね。3輪のクリスチャニアタイプのニホラに乗ったことがあるのですが,左右に傾かないあの乗り味に慣れることができませんでした。(動画を見ると3輪でも左右に傾くタイプがあるのですね。)私は2輪のロングテールタイプのカーゴバイク(折り畳み式サイドカー付き)を,毎日通勤や買い物に使っています。仕事でも運搬作業があると聞いては自ら買って出て,大量の書類や草花の苗に土,PCデスク等の運搬に自転車を使い,クルマの利用を減らしています。トレーラーも一輪タイプのBOBトレーラー,2輪のトラヴォイ,チャイルドトレーラーと3種類所有していて,それらもとても活躍してくれます。
また,荷物とともに運べたら良いと思うのが乗客,人間です。別に輪タクをしようと言うのではなくて,家族や友人を自転車で駅まで送迎したりする程度です。もしくは家族でクルマに乗って食事に行くように,一台の自転車でそれをできたらと思うのです。そんな用途に欲しいのが,タンデムカーゴバイクです。荷物や乗客が増えるとやはりツライので,子どもはともかく大人に一人お手伝いしてもらえたらラクだし楽しいと思うのです。実はタンデムも所有しているので,それにチャイルドトレーラーを取り付けて家族を駅まで迎えに行ったことがあったのですが,息子はトレーラーに乗ってくれたものの妻からは「歩いて帰る」と断られてしまいました。これがチャイルドトレーラーを取り付けたタンデム車でなく,“タンデムカーゴバイク”だったら仰々しさも抑えられ,妻も乗ってくれたかもしれません。もっとも東京都ではタンデム車の定員乗車は規則違反なので,こちらもハードルとして残っていますが。30kgの積載制限や大人の乗員を1名に限る無駄なルールは,早く改めさせなければなりませんね。まずは今回の記事のような自転車や,便利なトレーラーの存在を知らしめんと,日々走り回ります。