使ってみて、なるほど便利だと思うものから、果たしてどれほど売れるのだろうかと首をかしげるようなものまで、いろいろ売られています。いわゆるアイディア商品と呼ばれるようなものも、次から次へと出てきます。その中には大ヒット商品となるものもあります。
最近話題になったもので言えば、凍ったアイスクリームを簡単にすくえるスプーンでしょうか。富山の鋳物メーカーが開発したアイス専用スプーンで、カチカチに凍って歯が立たないようなアイスクリームでも、吸い込まれるようにスプーンが入ってしまうと評判のスプーンです。
一見不思議ですが、熱伝導率が高いアルミ素材を使うことで、体温でアイスを溶かしているそうです。その使い心地が評判となって、世界的なアイスクリームのブランド「ハーゲンダッツ」が専用スプーンとして海外の店舗で採用するほどになっています。今では生産が追いつかないほどのヒット商品だといいます。
スプーンのような定番商品に、今さら工夫の余地があったことが意外ですが、ちょっとしたアイディアでヒット商品になることもある例と言えるでしょう。当然ながら、自転車部品、用品の分野でも、新しいアイディア商品を生み出そうと考えている人がたくさんいます。
こちら、“
Bicycle Frame Handle”の用途は一目瞭然、自転車を持ち上げるときに使う持ち手です。わざわざ持ち手をつけなくても..、とも思いますが、すでに2年前にクラウドファンディングサイトで資金調達に成功して売り出され、日本でも通販などで売られる商品となっています。
車体の軽いスポーツバイクに乗っている人なら、自転車を持ち上げるのは苦もないことでしょう。フレームを持てばいい話で、わざわざ余計なものを取り付ける必要はないと考える人も多いはずです。しかし、持ち上げるにはズシリと重い自転車に乗っている人も少なくありません。
自転車はタイヤが接地しているのが当たり前で、持ち上げるなんて考えもしない人もいるでしょう。でも、段差を越えたり、階上に保管したり、イザというとき階段を持って上れれば便利な場合は少なくありません。これがあれば、力の弱い女性でも自転車を持ち上げやすくなります。
いや、
どうせなら肩掛けベルトのほうが、より便利だろうと考えた人もいます。これも使い方は一目瞭然でわかります。必要な時にベルトを引き出せば、肩にかけてラクに持ち上げることが出来るというものです。握力の弱い女性には、肩掛けベルトのほうが、よりラクでしょう。
ちよっとした段差を持ち上げるなら、わざわざ引き出す手間がない持ち手のほうが便利ですが、階段を上がるような場合は肩にかけたほうがラクです。言われてみれば、今まで無かったのが不思議にも思えてきます。こちらはクラウドファンディングサイトでの資金調達が始まったばかりです。
自転車のリアキャリア、荷台に不便を感じた人もいます。普通の状態では小さく、荷物があまり載せられません。かと言って、大きな荷台は邪魔ですし、見た目もよくありません。そこで、使う時、
必要な時だけ広げればいいというアイディアです。これも言われてみれば、その通りです。
折りたたんだ状態でコンパクトに収納されている荷台を広げると、荷台の幅が大きく広がります。ネットとバンジーコードによって固定できるようになっています。ふだん運ぶものが決まっている場合は、いろいろ選択肢があるでしょうが、イザという時、大きなものでも運べるのは便利です。
前輪だけ支える形の駐輪ラックがあります。そのようなラックに駐輪するとき、前輪にロックをしてしまうと、車輪を外して簡単に盗まれてしまいます。これは不注意ですが、普通に駐輪していても、タイヤだけ盗まれてしまうこともあります。スポーツバイクのホイールは高価なものも少なくないからです。
スポーツバイクの場合、クイックリリース機構になっていれば素手で、そうでなくてもスパナ一本あれば、タイヤは簡単に外せてしまいます。そこで、
専用の工具でないと外せないナットです。これも非常にわかりやすい発想です。すでにクルマ用ではポピュラーですが、自転車用は見たことありませんでした。
考えてみれば、自転車用にもあってもいいわけですし、普通のナットの代わりに使っておけば、少なくともホイールが盗まれにくくなることは間違いありません。専用の工具はキーホルダーなどにして持ち歩けば、パンク修理などでタイヤを外す必要が生じても問題ありません。
私が知らないだけかも知れませんが、今まで無かったとしたら不思議なくらいです。確かに欧米では、タイヤだけ盗まれた自転車車を見ることがあります。使っておいて損はないでしょう。ちなみに、この専用工具は、こういうツールのお約束(笑)で、栓抜きとしても使えます。
スポーツバイクの場合、スタンドをつけない人は多いと思います。むしろそれが普通でしょう。邪魔ですし、そのぶん重くなります。見た目もよくありません。駐輪する場合は、いずれにせよ固定物とつなげてロックするので不要ということもあります。
ただ、何も無い場所では自立させておくことが出来ません。横に倒しておくしかありません。それが不満だった開発者は、ハンドルの
バーエンドに小さなアダプターをつけました。別のアダプターと簡単に接続できる形状になっています。つまり、2台以上あれば、ハンドルをつなげて自立させておくことができるわけです。
このパーツだけ壁などに取り付けておけば、壁に立てかけた自転車を固定することもできます。フラットハンドルだけでなく、ドロップハンドルなどでも装着でき、違うタイプのバーエンド同士をつなげることも出来ます。ゴムのコードでブレーキをかけておけば、動き出してしまうこともありません。
一人で出かけたときは使えませんが、2台以上あれば、どこでも連結して自立させることが出来るわけです。スタンドと違って小さく、軽く、邪魔になりません。愛車を無造作に転がしておかなくてすみます。これも非常にわかりやすいアイディアと言えるでしょう。
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どれも、ちょっとした不満、不便に対するアイディアを形にしています。言われてみれば、なるほどと思う工夫です。誰にでも思いつきそうに思えます。ただ、それほどニーズがあるとは思えなかったり、便利は便利だげと、それほど魅力的とは思えなかったりする人が多いに違いありません。
アイスクリーム用のスプーンにしても、あれば便利ですが、あまり使わないような気もします。いつもコチコチのアイスとは限りませんし、少し待てばいいことです。わざわざ専用のスプーンでなくても..、と考えてしまう人は多いでしょう。そんなスプーンに需要があるのかと思ってしまいます。
しかし、そんな風に考えてしまう人に、アイディア商品が生み出せないのは間違いありません。ニッチで、限られた需要のような気がしても、実は大きなニーズを掘り起こし、大化けしないとも限りません。でも、まず製品化しないことには、ヒット商品になることもないのは確かです。
今どきはクラウドファンディングもあるわけですし、たいしたニーズがあるとは思えなくても、作ってみなければ始まらないということでしょう。今さら工夫の余地のないように思える自転車用品やパーツにしても、作ってみれば、まだまだヒットの種が埋まっているのかも知れません。
ウクライナ情勢も報復の応酬になってくると、いよいよ世界経済への影響が心配になってきますね。