秋分の日は9月23日ですから、まだ昼間のほうが長いですが、6月の夏至の頃と比べると、暗くなるのが早くなってきています。通勤などに自転車を使っている人なら、毎日の帰宅に、そのあたりを実感として感じているのではないでしょうか。
夜は自転車に乗らないという人でも、何かの都合で遅くなることもあるでしょう。早めにライトをつけ、周囲のクルマなどからの視認性に気をつけたいところです。前を照らすライトは法的にも必須ですが、出来れば後ろからくるクルマに注意促すテールライトも点灯させたいところです。
たまに、黒っぽい服装で自転車に乗り、薄暮や暗がりに溶け込んでしまって目立たず、視認性の低い状態になっている人がいます。反射板も汚れていたりして、暗がりの中から突然現れる形になって、クルマのドライバーの肝を冷やすようなケースもあるのではないでしょうか。
当然ながら、夜間でも後続のクルマには前方を注意して運転してもらわなくてはなりませんが、もし何かの拍子に発見が遅れ、事故になったら死傷するのはこちらのほうです。後から悔いてもらっても取り返しがつかないわけで、そうならないためにも視認性アップには注意したいところです。
視認性の重要さを意識するならば、後続車に向けた赤いテールライトは当然使うべきです。すでに携行して使っている人も多いと思いますが、そんな夜間の視認性の向上、後続車からの安全に注意したいサイクリストに訴える製品があります。iKubu 社の“
Backtracker”という商品です。
このテールライト、レーダーが組み込まれていて、後続車の接近を知らせてくれます。レーダーで後続車を感知すると、ワイヤレスで手元の表示機に、その距離とタイミングを表示してくれるのです。しかも、後続車接近にあわせて、テールライトの点滅を早め、後続車に注意を促す仕組みになっています。
後続車が、およそ140メートルほどに接近した時点で感知します。後続車の接近に気づいていれば、例えば路上に障害物があった場合、不用意に進路を変えるのではなく減速するなどの対処が落ち着いて出来ることになります。突然内側に避ける形になっての接触や追突事故を防ぐことが出来るでしょう。
後続車の接近がわかったところで、特に挙動を変えるわけでもなし、意味がないという意見もあると思います。点滅にしても、最初から点滅させておけばいいだけという考え方もあります。ただ、後続車の接近がわかっているという安心感には貢献するのではないでしょうか。
この会社、南アフリカのベンチャー企業です。自転車のテールライトにレーダーを搭載するという、ちょっとしたアイディアですが、これによってサイクリストの夜間走行の危険を減らせるという点に着目しました。クラウドファンディングで資金調達し、200ドル程度で販売する計画です。
テールライトにレーダーまでついている製品を買おうという人は限られるかも知れません。ただ、せっかくテールライトをつけていても、そのライトが小さかったり、あまり光量がなくて目立たないのでは、効果も限られます。ライトを別のものと誤認されないとも限りません。
沿道の環境にもよりますが、周りのネオンや照明などのせいで目立たなかったり、何かの反射や投影と見間違われたり、見落とされたのでは意味がありません。そこで、少しでも視認性と安全性を上げようと考えられたのが、こちらのライト、“
Brainy Bike Lights”です。
テールライトが、自転車のマークになっています。これならば、赤い点と違って、何かの反射光などと見間違う心配はありません。ひと目で自転車が走っていることがわかります。自転車なのに、自ら自転車のアイコンを掲げて走行するというのも、カッコ悪い気がしないでもないですが、一目瞭然なのは確かです。
オーソドックスな自転車のマークなので、万国共通で自転車と認識してもらえるでしょう。さらに、わざわざライトがマークの形になっているのにはワケがあります。これだと、ただの赤いライトと比べて、100ミリ秒ほど早く、自転車だと脳が認知してくれるというのです。
オックスフォード大学の研究によれば、シンボルの形だと、脳の反応時間が100ミリ秒速いことが実験でわかっています。わずかな時間ですが、それでも時速30マイル、約48・28キロの場合で、1・34メートルの差になります。この距離が衝突するかどうかを分ける可能性があります。
自転車全体の形や、乗っている人のシルエットなどは別として、光だけでも、より遠くから認識できるというメリットもあります。近づかないと何かわからない赤い光でなく、自転車のテールランプと遠くからでも判別できれば、ドライバーに、より早めの注意を促すことになるでしょう。
こちらは前方のライトも同じように自転車のシンボルになっており、前方からの視認性にも配慮しています。前方は当然ですが白色です。赤色は後ろ側と国際的に決まっていますので、赤を前に使うのはNGです。二つセットで45ユーロで販売されています。
人によっては、そこまでやるか、という印象かも知れません。しかし、考えてみれば、LEDが直線に並んでいる必要はありません。同じLEDでも、シンボルの形になっていたほうが効果的だとするならば、そのほうがリーズナブルです。わずかなことが生死を分けるということもありえます。
日本では、自転車での夜間の視認性ということに気を配っている人は、まだまだ少ないのが現状でしょう。夜間でも、発見して注意するのはクルマの責任と言わんばかりに、黒っぽい服装、テールライトなし、反射板も見えにくい、といった自転車がたくさん走っています。
自転車は、後続車に追突されたり接触されたら、ひとたまりもありません。正しく走行している限り、悪いのはクルマであったとしても、被害を受けるのは自転車です。ドライバーの注意力に全面的に頼るのではなく、こちらは少しでも視認性を上げるべきではないでしょうか。
ときどき、早朝の道路に、人と自転車が倒れているのを通行人が発見したが、既に死亡していたなんて記事やニュースを見ることがあります。夜間に事故に遭い、そのままひき逃げされたと推測されます。事故の原因はいろいろだと思いますが、なかには発見が遅れた、暗闇で見えなかったなんて原因もあるはずです。
もちろん、不幸にして事故に遭われた方の不注意などと言うつもりはありません。酒酔い運転をはじめ、理不尽なケースもあるでしょうし、不運な偶然が重なった例もあるでしょう。必ずしも視認性が高ければ防げるものではありませんが、事故に遭わないために自分で出来ることの一つではあると思います。
夜間、自転車で家路を急いでいたはずのに、突然後ろに衝撃を感じた瞬間、硬いアスファルトに叩きつけられ、あとは何が起こったのかもわからないうちに死亡する..と想像してみたらどうでしょう。少しでも目立つようなテールライトをつけたくならないでしょうか。
そう頻繁に起きることではないにしても、起きた時には手遅れという可能性があります。今どき、電池式のLEDのテールライトなんて安いですし、とても軽量になっています。ぜひ夜間の走行には前後のライトと反射板、そして出来れば目立つ色を着て乗ることを心がけたいものです。
なんだか急に涼しくなりました。過ごしやすくていいですが、ちょっと寂しい気がしないでも..。