家電などの国際見本市、“
IFA2014 ”です。「コンシューマ・エレクトロニクス&ホーム・アプライアンス業界の世界最大の見本市」となっています。家電一般やスマホなどの携帯端末だけでなく、次世代のウェアラブルコンピュータなどにも注目が集まります。
日本の家電メーカーも出展しており、その一つ、ソニーは新製品のラインアップとして、スマホやタブレットなどをお披露目しています。スマホの次とも目されるウェアラブル端末としては、腕時計型のスマートウォッチの新型やメガネ型のスマートアイグラスなどを発表しました。
9日にはアップルの新しい製品の発表が予定されていることもあって、この時期、新しいスマートフォンやウェアラブル端末に注目が集まるわけですが、ソニーは、そのほかにも“XPERIA Bike”をコンセプトモデルとして出展しています。Engadgetの記事から引用します。
ソニーが電動自転車 XPERIA Bike を公開。スピーカー、360°ビデオカメラ搭載
ソニーはドイツ・ベルリンで開催中のIFA 2014で、Xperiaスマートフォンと電動付きアシスト自転車を融合させたコンセプト XPERIA Bike を公開しました。
Xperia Bike は、Xperiaスマートフォン連携する電動アシスト式自転車。ハンドル上のマウントにXperiaを固定して使用します。
自転車のフロントとリアには、それぞれ180°の風景を撮影できる広角カメラを搭載。前後あわせて360°の風景を録画できます。録画した映像はXperiaスマートフォンのストレージに保存され、クラウドにアップロードすることも可能です。
ハンドルには高音質スピーカーを搭載。音楽を聞きながら、坂道は電動アシストでらくらく上り、下りは本格的なマウンテンバイクを楽しむといった遊びを想定しています。Xperiaの画面には、速度、電動アシストの電池残量、電動アシスト率などが表示されます。
このXPERIA Bike、ガジェット好きにも自転車好きにもたまらない製品に思えますが、今回のIFAではあくまでもコンセプト出展。残念ながら商品化は未定です。(2014年09月05日 Engadget)
このソニーの自転車については、いろいろな意見があるようです。ソニーらしさの復活と捉え、面白い、ソニーのファンでないが是非欲しいという人もあります。くだらないけれど魅力的、物欲を刺激する、デザインは良いなどと評価する声、ぜひ商品化すべき、出たら買うと期待する声もあります。
一方、ワケがわからない、一体どこに行くのだろうとソニーの迷走ぶりを危ぶむ声もあります。XPERIA は好きだが、ちょっとこれは、という人、走行するのに危ないと心配する人、自転車としてもこのデザインはない、重そう、ダサい、笑える、ブランド戦略として間違いなどと否定的にみる声も少なくありません。
自転車はスマートフォンの周辺機器ではないとか、この手のコンセプトモデルが製品化された試しがない、などと冷静に見る人、パナソニックに対抗して、ついに自転車参入かと揶揄する声、同社のスマホを買わせたいだけ、単に話題や注目を集めようとしただけなどと、さめた分析をする人もあるようです。
スマホやウェアラブル端末については取り上げても、ソニーがこのようなコンセプトモデルの自転車を発表したことには触れていないメディアも多いようです。反応する人は限られるのかも知れませんが、ファットバイクということもあって、一部の人には、それなりのインパクトがあったのは間違いないようです。
自転車として見ると、坂道を電動アシストで上るマウンテンバイクというのは疑問ですし、前後ともサスペンションがついていません。そのような用途にスピーカーが必要とは思えませんし、オフロードのダウンヒルで何かにぶつかったり、転倒したりしたら、スマホが割れたり壊れたりしてしまうような気もします。
ファットタイヤは、砂浜とか雪道には強いですが、普通の道を走るのには向きません。重くてスピードも出ません。普通に使う自転車ならば、なぜファットバイクなのか不明です。最初から砂浜や雪道というニッチを狙ったとするなら、その理由がわかりません。単に見た目のインパクトを狙ったと見るのもわかります。
自転車として疑問を差し挟む余地は多く、このまま商品化・量産化されるとは思えませんが、このようなコンセプトバイクを出したこと自体は面白いと思います。今後、自転車に乗る人がスマホを使う形を見据えて開発する意図があるとしたら、その行方には関心が高まります。
自転車とスマホを組み合わせた商品なんて突飛な気もしますが、すでに韓国のサムスンも「スマートバイク」としてコンセプトモデルを発表しています。もしかしたら、ソニーはサムスンを意識したのかも知れません。スマホを持つ人が増え、一定程度自転車に乗る人がいるわけですから、このような提案も不思議ではありません。
サムスン発表の「スマートバイク」はスマホ連動の次世代自転車 ― FUTURUS
今のところ、サムスンのほうもコンセプトモデルに過ぎず、具体的に商品化の見通しが示されているわけではありません。対抗上、一応発表しておくという判断もありえるでしょう。でも、各社が動き始めているところをみると、いずれ自転車もスマート化すると見られているのかも知れません。
サムスン、自転車メーカーのトレックと提携 ― CNET Japan
ちなみにサムスンは、大手自転車メーカートレックと提携し、自社のモバイル端末と自転車を連携させる試みも進めています。現在はテスト段階としていますが、自社の製品にサイクリング向けの機能を搭載することを考えているようです。フィットネス面の機能を充実させてサイクリストに使ってもらおうという狙いでしょう。
実は、
アップルも既にスマートバイクの特許 を申請しており、アメリカ特許商標庁から2010年8月5日付で公開されています。もちろん、だからと言って商品化されるとは限らないわけですが、他社の動向、市場の動向によっては、アップルバイク、“iBike”が登場しないとも限りません。
中国のインターネット検索大手、「百度」が、「世界初の自動運転自転車」を売り出すとの報道もあります。自動運転のクルマは話題ですが、自動運転の自転車とは一体どんなものか、果たして意味があるのかという疑問も頭をよぎりますが、そのような動きもあります。
百度、自動運転の自転車を年内発売か
度(中国インターネット検索大手) 自転車の自動運転技術の開発を進めている、と中国のネットメディアが伝えた。年内にもこの技術を使った自転車を「世界初の自動運転自転車」として売り出す計画としている。
同技術は自転車に人が乗っていなくても自動的に平衡を保ち、センサーを通して周囲の障害物などを避けて通るという。ただ米グーグルが研究開発を進めている自動車の自動運転技術と違って、自転車の自動運転にどれだけの需要があるかは未知数で、具体的な用途も不明だ。(日本経済新聞 2014/7/11)
クルマの電子化は、さらに進み、ネットワークに接続するようになっていくでしょう。あらゆるモノがインターネットにつながっていく、IoT、Internet of Things も拡大していくとされています。スマートバイクの商品化を目指すベンチャーも出てきています。自転車だけがネットにつながらないとする理由はありません。
そう考えると、今回のソニーの自転車も、未来の自転車への潮流の一つと見ることも出来るでしょう。自転車に乗った時、スマホを自転車に装着するというスタイルは十分想定されます。電動アシストで、バッテリーを搭載するならば、そこからの充電ということも当然考えられます。
スピーカーは、イヤホンをしながら走行する危険に対する一つの答えなのでしょう。一方で、周りに音を響かせながら走行することになるので、果たして適切かどうかは疑問ですが、スピーカーの指向性を強めるなど、安全性との両立を目指した開発が進むことも考えられます。
カメラを搭載し、後方の確認が出来ることは安全性の向上に貢献する可能性があります。走行経路の動画をアップロードするなどの使い方に加え、ドライブレコーダーのような使い方も考えられます。事故時の過失割合や、ひき逃げ犯の特定などに役立つでしょう。
走行中のスマホ画面に、速度などの自車情報やナビゲーションが表示されれば便利です。一方で、走行中に脇見になるような操作をさせない仕様、あるいは脇見をしなくて済むような機能が搭載されれば、スマホを見ながらの走行による危険の回避につながる可能性があります。
ここにはありませんが、GPSの精度も上がっていきますから、車道の右側通行をすると警告表示が出るとか、見通しの悪い交差点とか、事故多発地点で注意を促すような機能も考えられます。乗り手の注意を散漫にする危険性も否定できませんが、安全性の向上に貢献することも考えられるでしょう。
もちろん、ネットにつなげ、走行データを蓄積することも考えられます。多くの人のデータが集まれば、速度や交通量などを使って、いろいろな面に応用できるはずです。近くを走行中の友達を発見するとか、効率のいいルートを共有するなど、SNS的な使い方も広がるかも知れません。
スマホユーザーが増え、実際に自転車で移動している以上、自転車自体の電子化、ネット化、あるいはスマホとの融合が進んでいくことは十分考えられます。好むと好まざるとに関わらず、新しいタイプの自転車が登場しても不思議ではないでしょう。、
今回のソニーの自転車は、ファットタイヤを使ったところなど、単に見本市でのアイキャッチとして、あるいは話題づくりを狙っただけの可能性もあります。でも、他社の動向や今後の展望なども考えると、ソニーがスマートバイクの研究をしていてもおかしくはありません。
自転車は、部品を集めれば誰にでも製造出来ます。台湾あたりに行けば、OEMで製造・組み立てを請け負う企業もたくさんあります。家電メーカーだろうと、何の商売であろうと、自社ブランドの自転車を作るのは容易です。ソニーの自転車だって十分に考えられます。
これまでにも、自転車メーカー以外の会社がつくる自転車はありました。しかし、それは単に既製品に企業ブランドのロゴをつけただけのアイキャッチだったり、自社ブランドのファンだけにしかアピールしない商品、キャンペーンやプレゼントにするためだけのノベルティグッズなどがほとんどだったと思います。
異業種として、ある種の次世代のモバイル端末としての開発を目指すならば、自転車としての基本的な性能と魅力に加え、今までの自転車の概念を突き破るような製品が期待されるところです。単なるソニーの名前が入っただけ、目先を変えただけの自転車では、わざわざ参入する意味がありません。
一方で、これまでのソニーの製品開発に見られたように、Xperia Bike というソニー自転車が、自社のスマホとの連動に固執し、自社製品しか装着できない仕様にして、単にユーザーの囲い込みを目指すなら、その先行きは暗いと言わざるを得ません。
自社のコンテンツ販売にこだわり、アップルの後塵を拝した音楽配信などの失敗の例を挙げるまでもないでしょう。よくわかっているとは思いますが、やるなら、新しい世代の『自転車端末』のプラットフォームを開発し、それをオープンにするくらいのことを期待したいところです。
もちろん自転車乗りの中には、そうした“電子的”な自転車には触手が動かない人も少なくないに違いありません。しかし、家電でもケータイでも何でもそうですが、真に新しい価値が創造され、そのメリットが認められるなら、自転車という商品も変わっていく余地は十分にあると思います。
もっと人々を引き込むような、新しい可能性や魅力的な機能を提案するような自転車が出てきたら面白いと思います。新しい価値観が生まれれば、自転車産業も活性化し、格安ママチャリに席巻された格好の日本の自転車市場も変わるに違いありません。そんな変化を見てみたい気もします。
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錦織圭選手準優勝、やはり日本人が世界で活躍すると盛り上がりますね。今後はテニスも注目されそうです。
身体の内部だけの違い 【哲学はなぜ間違うのか?】at September 11, 2014 23:05