趣味でマウンテンバイクを楽しむ人もあると思います。
この時期は、里山のシングルトラックに出かけたくなったりする頃かも知れません。ただ、そんな趣味を自粛せざるを得ない時期もあるでしょう。例えば、子供が生まれてまだ小さい時期です。ある程度大きくなれば一緒に出かけることも考えられますが、まだ自転車にも乗れないのに連れて行くのはたいへんです。
子供の世話を妻、もしくは夫にまかせきりで、自分だけ出かけられるという人なら別ですが、なかなかそういうわけにもいかないでしょう。マウンテンバイクに普通のチャイルドシートはつきませんし、背負って出かけるのでは、子供に苦痛を与えるだけになりかねません。
エンジニアであると同時にマウンテンバイク乗りであり、根っからのアウトドア派である、Glen Dobson さんは、カナダはバンクーバー在住です。週末は当然のようにマウンテンバイクで出かけたいのですが、自分だけ出かけるわけに行かず、どうやって子供を連れて行くかが懸案でした。
シティサイクル用など普通のチャイルドシートは使えません。オンロードならともかく、オフロードでキッズトレーラーを連結するというのも、いい案ではありません。トレーラーを連結してのオフロード走行は、場所によっては困難ですし、子供も中で跳ねるだけで乗り心地が悪く、現実的でありません。
そこで、自分で考案したマウンテンバイク用のキッズシートを製作することにしました。息子の、Mackinley 君にちなんで、その名も“
Mac Ride”です。ステムとシートポストに連結し、トップチューブ上に子供用の席が来るようになっています。この位置の最大のメリットは子供の視野が確保されることです。
オフロードですから、ハンドルの前では木の枝がぶつかったりするので向いていません。かと言って、自分の後ろ、後輪の上に来るような、よくあるシートでは、子供が前を見られません。親の背中を見ているだけでは、コースの起伏やカーブもわらず、子供も面白くないでしょう。
この位置であれば、子供は親の腕の中で守られる形になります。イザという時にも保護しやすいのが利点です。そして、なんと言ってもこの位置ならば、子供と会話を楽しむことが出来ます。“Mac Ride”はシンプルで子供でも持てるほど軽量ですが、頑丈に出来ており、大人がまたがっても平気です。
子供はシートではなく、専用のサドルにまたがる形です。そして自らもハンドルを握ります。まさにライダーの視点で乗ることが出来るので、オフロード走行のスリルと興奮を楽しめます。まだ自転車に乗れない子供に、バランスやスピードなど、自転車の感覚を覚えさせるにも持ってこいです。
また、簡単に取り外しが出来るので、途中、夫婦で分担を変わることも出来ます。スライドしてサドル部分と足を乗せる部分が動くので、子供の年齢・体格に応じて、対応させることが出来ます。2歳から6歳くらいまでを想定してつくられています。残念ながら犬用はありません(笑)。
マウンテンバイク用を想定していますが、ほとんどの自転車に装着可能です。ふだん、子供を幼稚園に送迎するような用途にも使えます。逆に言うと、子供の送り迎えにスポーツバイクを使うことが可能となるわけです。これがあれば、そのまま職場まで自転車通勤する人の車種の選択肢が広がるに違いありません。
そのままでも邪魔にはなりませんが、簡単に取り外して折りたたむことも可能です。旅行先で借りたレンタル自転車にも装着できます。その点も、よくあるチャイルド用のシートにはないメリットです。オフロードだけでなく、いろいろなシーンで活躍することになるでしょう。
一般的な、街でよく見るようなチャイルドシートとは設計思想が違います。プラスチック製で、背もたれやサイドガードなどがついて、子供を覆うような形状にはなっていません。子供自身がハンドルを掴み、まさに自転車に乗るような姿勢で乗ることになります。
そのため、背もたれにもたれて眠ったり、左右にカーブしても、ガードに身を任せることは出来ません。子供にも緊張感を強いることにもなりますが、子供にとっては、そのほうが絶対に楽しいはずです。Glen Dobson さんは、使ってみた経験もふまえて、そう考えています。
普通のシートにあるようなハーネスやベルトのようなものも一切ついていません。これは、あえてつけていないのだと言います。大人は、自転車に乗るのにシートベルトをしません。それと同じように、子供もシートベルトやハーネスで、自転車に縛り付けるべきではないと考えているのです。
子供が足を乗せる部分には、やわらかく調整可能なバンド状のものがついており、足を踏み外したり、前輪に巻き込まれないようになっています。子供が乗車姿勢を保つのにも役立ちますが、一方で、足をガッチリ固定するようなものではなく、簡単に外れます。
イザという時に、子供を自転車のほうに縛り付けるのではなく、親がすぐに抱き上げられるようになっているのです。このあたりは設計思想でそうなっていますが、子供の安全には、細心の注意が払われており、ベルトやハーネスを除いては、EUなどの基準にも極力沿うように配慮されています。
プラスチックなどでガードするのではなく、親の腕でガードするという考え方です。腕の中にいるとは言え、親は子供の安全に注意し、常に意識しながら乗ることになるでしょう。子供も受動的に乗ることを許されませんが、親と話も出来るので楽しいはずです。
これは、なかなか優れたアイテムと言えるのではないでしょうか。、Glen Dobson さんは、自分で使うためだけでなく、多くの家族をアウトドアに連れ出すため、クラウドファンディングサイト“
Kickstarter”で資金調達をして、製品化することを目指しています。
すでに多くの人の支持を受け、6万5千ドルという目標額を大きく上回る7万9千カナダドル近い金額の調達に今年の7月、成功しています。支援者には、製品が今年のクリスマスまでの受け取りに間に合うよう製造される予定になっています。満足できなければ、全額返金することも既にアナウンスされています。
バンクーバーには私も行ったことがあります。しばらく滞在して自転車にも乗りましたが、とても美しい街であると共に、少し足を伸ばせばカナダならではの自然が広がっています。アウトドアを満喫できるようなところがたくさんあり、ここに住んでいたら、郊外のオフロードにも出かけたくなるのは、よくわかります。
早くから子供を自然に親しませ、のびのびと育てたいと思うのは、根っからのアウトドア派という、Dobson さんに限ったことではないでしょう。日本も、少し郊外に行けば、山がいくらでもあります。むしろ子供が小さい頃から、アウトドアに連れて行ってみるのもいいのではないでしょうか。
結果いかんでは、経済も混乱するでしょうし、日本にも影響するでしょうから気になるところです。