少し前に報道されたものですが、自転車保険への加入を義務付けるという条例案です。
兵庫県:自転車保険、加入義務付けへ 全国初の条例案
◇自転車安全利用の検討委専門部会が提言、罰則は設けず
自転車と歩行者の事故が増加しているのを受け、兵庫県は自転車保険の加入を義務付ける条例をつくる方針を固めた。自転車側に高額賠償を求めるケースが出ており、自転車販売店などに協力を求め加入を促すのが狙いで、罰則は設けない。今後、県議会に条例案を提案し、成立すれば全国初となる。
兵庫県が設置した自転車の安全利用を検討する委員会の専門部会が、条例化の提言を決めた。保険会社にも協力を求め、任意保険加入を促進させるよう県に求める内容だ。更に、委員会で細部を詰める。
自動車の自賠責保険と異なり、自転車に強制加入の保険はない。東京都や京都府などに保険加入を「努力義務」とする条例がある。
兵庫県内では、自転車と歩行者の事故は2013年までの10年間で約1。9倍に増加したが、県の調査では保険加入率は約24%にとどまっている。
昨年7月には神戸市内で、自転車で歩行者と衝突した男児の保護者に約9500万円の賠償を命じる民事訴訟判決が出るなど、各地で高額賠償を命じる判決が出ている。(毎日新聞 2014年10月18日)
私もニュースは知っていましたが、自転車保険加入の必要性が叫ばれている昨今の流れの中での動きであり、それほど話題になるようなことだとは思っていませんでした。しかし、この報道に対し、自転車に保険を強制するなんてと反発する人が少なくないようです。
そもそも自転車に保険が必要かという点で反発しているようです。そこが論点になることには驚きます。そのような考えの人がいるということ、すなわち自転車による事故に対する誤解、あるいは無理解、認識の低い人がいるということに、あらためて気づかされます。
自転車で歩行者と事故を起こすような人は一部であり、普通に自転車に乗っている人には賠償責任保険など必要ないと考えるようです。しかし、実際に高額賠償が命じられた事例が報じられています。そのリスクをどう考えるかですが、自転車の事故に保険は不要ということはならないでしょう。


保険料があまりに高いとなれば問題ですが、補償内容によっても違うものの、保険料は年額500円程度からあるようです。TSマークの付帯保険などもあります。他の保険の特約や共済などに付帯する個人賠償責任保険でカバーできるものもあります。その場合、さらに低額ですむ場合もあると思います。
自分には事故は起きないと考えるのでしょうが、誰も事故を起こそうと思って起こすわけではありません。クルマの場合も、普通にクルマを運転しているぶんには、滅多に起こることではなかったとしても、いざ起きた時、相手を死傷させ、高額の賠償責任を負うような事態になったら困るから保険に入るのでしょう。
そのリスクに備えて保険に加入するのは常識であり、クルマの場合は義務づけられています。クルマが自転車になっても同じことです。高額の賠償を負う可能性があります。安全を心がけて乗っていれば、自転車で事故を起こすことは滅多にないとしても、万一に備えるのが保険です。
確かに、これまで加入していない人が多かったのは事実です。しかし、実際に数千万円とか1億近いような賠償が命じられる事例が報道されています。そのリスクに気づき、万一の多額の賠償責任に備える必要を考えるからこそ、自転車保険に加入する人が増えているのでしょう。
クルマと比べて、自転車が起こす事故は大したことがないと考える人も多いと思います。しかし、そうとは限らないことは、自転車対歩行者の事故で、高額の賠償例が出ていることでも明らかです。時速15キロ程度でも、自転車の重さと人間の体重を合わせれば、大きな衝撃力になります。
相手が高齢者でなくても、衝突されたはずみで転倒し、頭を打つなどして重篤な状態になることは十分考えられます。たとえ自転車に乗っていたのが子供であっても、重大な事故は起きています。子供が高額賠償事故を起こす可能性を考えて保険に加入する人が急増しているのも、そのあたりが認識されてのことでしょう。
自転車だからといって、賠償責任が軽減されるわけではありません。事故で死亡したり、重度の後遺症を負った被害者側にしてみれば、相手がダンプだろうと、軽トラだろうと、はたまた自転車であろうと関係ありません。賠償金額も、クルマの場合と同じように、被害の大きさによって算出されます。
例えば最寄り駅まで往復する程度の利用で、自分が事故を起こすとは思えない、想像できない人もあるのでしょう。これまでも加入していなかったし、自転車ごときに保険など不要という思考になるのもわからないではありません。ただ、自転車の乗っている限り、事故を起こす可能性はゼロでないのも事実です。

極端な話、自転車でなく、ちよっと小走りで駅まで急いでいた時、出会い頭に誰かとぶつかった程度でも、場合によっては転倒させるなどして深刻な怪我を負わす可能性だってあるわけです。ふだんは、特に危険のない近所の道でも、何かの拍子で子供が飛び出してくるとか、事故にならない保証はありません。
そして万一、事故が起きてしまった時、数千万円、あるいはそれ以上の賠償責任を負う可能性があることを真剣に考えれば、むしろ賠償責任保険に加入していないほうが、ゾッとするのではないでしょうか。誰でも事故は起こしたくないですが、誰の身にでも起こりうるのが事故です。
高額賠償の事例としてニュースなどで報道された以外にも、自転車と歩行者の事故は急増していると言います。ネットで検索してみても、自転車と歩行者の事故で、賠償や示談などでトラブルになっている例などが見受けられます。賠償金額はともかく、実際に事故は相当な頻度で起きているのです。
ロードバイクなど、スピードが出る自転車に乗っている人の話だと思っている人もいるでしょう。しかし、実際には、ママチャリで普通に歩道を走っている人のほうが事故は多いと言います。たいしたスピードを出さないから事故は起きない、重篤な事故にならないということはありません。
中には、万一事故になって、高額の賠償責任を負ったら自己破産すればいいだけと安易に考えている人もあるようです。しかし、賠償責任の場合は、自己破産しても免責にならない可能性があります。免責になったとしても、自己破産すれば、最低限の家財などを除いて、財産を失うことになります。

自己破産すれば、マイホームを含め、土地や不動産は全て失います。100万円以上の現金、20万円を超える預貯金、株や有価証券、解約返戻金のある生命保険、マイカーといった財産は、全て差し押さえの対象となります。つまり、ほとんどの財産を失うわけです。それらを残して賠償責任だけ逃れることは出来ません。
一般的に、多額の借金が返済できなくなって自己破産する場合なら、失う財産はほとんど残っていないことが多いでしょう。その場合、自己破産しても失うものはないかも知れません。しかし、突如賠償責任を負って、自己破産すれば生活は激変します。よくよく考えれば、自己破産すればいいなんて話にはならないでしょう。
ルールを守って安全に心がけていても、運悪く事故を起こしてしまうことはあります。相手に重篤な後遺障害が残るなどして高額賠償を負い、払えずに自己破産すれば、ほとんどの財産を失い、家族に迷惑をかけ、生活は一変してしまいます。そのリスクに備えて自転車保険に加入するのは、きわめて合理的な行動でしょう。
もちろん、今のところ義務でない以上、保険に加入しないのも自由です。でも、逆に自分や家族が自転車との事故で高額の治療費が必要になったりした時、相手が無保険で賠償も受けられないことも考えられます。そう考えたら、自転車も車輌の一種として保険を義務付けたほうが社会的にも望ましいのではないでしょうか。

生命保険や火災保険などへの加入と違って、クルマの保険の加入が義務付けられているのは、被害者を救済する必要があるからです。クルマとは事故の発生確率などが違うかも知れませんが、自転車も同じように事故で被害者を生み、保険未加入で救済されない可能性があるのですから、今まで不備だったのが問題とも言えます。
近年、そのリスクが意識されるようになり、自転車保険を発売する会社が増え、加入者も急増しています。兵庫県の条例案は、こうした流れにも沿い、保険の義務化への問題提起にもなっています。兵庫だけ罰則を課すなど突出するのは難しいのだと思いますが、少なくとも保険加入を促す効果はありそうです。
まだまだ加入率は低いですが、自転車保険に加入する人が増えれば、多くの人でリスクを分担することになるので、基本的には保険料も安くなるはずです。あらかじめ平均的な使用年数分の保険料を自転車の価格に上乗せすることも考えられるでしょう。
自転車が走行し、物理的に歩行者を傷つける可能性がある以上、保険の果たす役割について議論の余地はないと思います。そのリスクをどう考えるかは、人それぞれですが、社会生活を営む上での基盤として、また自分の生活を守る意味でも保険は必要だと思います。
保険なんて必要ない、普通に自転車に乗っている限り事故など起きないと思っている人ほど、安全を軽視しがちであり、事故を起こす可能性が高いとも考えられます。今回のニュースは、自転車事故のリスクに気づいていない人が少なくない事実を、あらためて浮き彫りにしたと言えるのかも知れません。
日本でもハロウィンが定着しつつあるようですね。仮装する部分とコスプレがマッチしたんでしょうか。