November 02, 2014

自転車を使うと歯車が回わる

14110201ラゴスはナイジェリア最大の都市です。


西アフリカに位置するナイジェリアは、アフリカ最大の人口1億7千万を擁する国であり、ラゴスは、都市圏人口としてアフリカ最大の2千万の人が住むと推定されています。ナイジェリア全土から人が集まってくるため、人口増加率も高く、人口密度も非常に高い過密都市です。

そのラゴスでもエボラ出血熱の患者が発生したため、非常に懸念されましたが、先月、世界保健機関(WHO)は、セネガルに続いてナイジェリアでのエボラ出血熱終息を宣言しました。この大都会でのエボラ感染拡大が防げたことは、世界のエボラ出血熱との戦いにおける希望となっています。

先進国だったら、人権侵害として問題になりかねない方法も含め、感染ルートの強力な追跡調査や隔離、厳重な経過観察が功を奏したと見られています。医療環境が脆弱で、爆発的な感染拡大になりかねない過密都市において、ひとまず収束させられたことに、関係者は胸をなでおろしています。

ラゴスは過密なだけでなく、犯罪発生率や失業率の高さもナイジェリア最悪です。現在のアブジャに移るまでは同国の首都であり、中心部には高層ビルが立ち並ぶ一方で、貧富の格差がひどく大規模なスラム街が広がっています。世界最悪の交通渋滞都市としても知られています。

ナイジェリアの最大都市ラゴス

ナイジェリアは、植民地時代に奴隷貿易の拠点とされていた国です。独立後も今に至るまで、民族や宗教が複雑に絡み合い、内戦や混乱を繰り返してきました。輸出量で世界8位の産油国でもありますが、その利権を巡って激しい抗争が絶えず、独立から50年以上にわたり政治的には不安定です。

ナイジェリアのテロ組織、ボコ・ハラムが女子生徒240人を拉致した事件は記憶に新しいところですが、同組織は、そのほかにも各地の村や町を襲撃して数百人規模の殺害を繰り返しています。このボコ・ハラムのほかにも反政府組織やテロ組織、人民志願軍などが武装闘争を激化させており、治安は悪化しています。

経済的には、豊富な石油収入があり、サハラ以南で初めてOPECにも加入しています。人口が多く、肥沃な土地でフルーツなどの生産も盛んなため、アフリカ有数のGDPを誇り、NEXT11として21世紀に有数の経済大国に成長する高い潜在性がある国と目されています。

しかし、政治は腐敗し、利権争いや汚職によって石油収入の3分の2は使途不明として消え、国民生活には還元されません。この石油を巡る紛争が絶えない上に、石油依存の経済、放漫財政、巨額の累積債務にも苦しめられています。富裕層も存在する一方で、貧困に苦しんでいる国民が多いのも間違いありません。

Photo by Guety,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

さまざまな困難に直面するナイジェリア、あるいはラゴスにおいて、課題は山積しています。医療体制が脆弱なだけでなく、衛生環境も劣悪な状態にあります。スラム街などではゴミの投棄がひどく、そのゴミが積みあがって病気の発生源となり、衛生状態を著しく悪化させています。

このゴミ問題を解決するべき行政は、汚職や非効率な組織によって十分に機能していません。国内の政治対立の影響で、正確な人口調査すらされていません。ラゴスの市議会は50年も前に廃止されたままですし、市長もいません。管轄するのは、ラゴス州の州政府になっています。

その当局がゴミを回収しますが、収集能力が限られており、かろうじて全体の4割ほどをカバーできるに過ぎません。2千万人が一日1万トンを排出し、さらに増え続けるゴミに、その処理能力は全く追いつかない状況です。多くのスラム街では、ゴミがたまり続けて危機的状況だと言います。

近年、ナイジェリアではペットボトル入りの水や飲料が安く流通するようになり、飲料水の問題は改善しつつあります。しかし、その空きボトルを川や下水の流れる水路に投げ捨てるため、水路が堰き止められ、雨が降ると洪水が発生し、死者まで発生する状況になっています。

WecyclersWecyclers

さて、この故郷の危機的状況を何とかしようと考えたのが、同国出身で、アメリカのMITで学び、IBMに勤めたこともある、Bilikiss Adebiyi さんです。リサイクル出来るカンなどの金属やペットボトル、プラスチックを民間の力で収集し、リサイクルする仕組み、“Wecyclers”を立ち上げたのです。

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まず、各家庭にストックされたリサイクルできるゴミを、組織に雇用された収集員たちが専用の自転車で集めて回ります。集めた資源をリサイクルし、再生資源として売ることで収益を上げます。その収益を協力した家庭と、自転車で集めた収集員の報酬にするのです。



日本でなら容易に理解される仕組みですが、まず、ゴミは捨てるものでしかなく、リサイクルという概念のないナイジェリアの人に理解させ、協力してもらわなくてはなりません。そのため、家庭でストックした資源ごみに対し、量に応じてポイントを付与することにしました。

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このポイントは、食料品や炊事用品の購入、携帯電話の利用料などとして使えます。こうしたインセンティブを与えることで、資源ゴミを捨てなくなります。同時に投棄されるゴミが減れば、生活環境が改善され、水路が堰き止められなくなり、洪水で人の死ぬことがなくなることを理解してもらうのです。

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回収は、専用の自転車で行なわれます。イニシャルコストが安く、ランニングコストの低い自転車でなければ、利幅の薄い同国でのリサイクル事業は成り立ちません。それだけでなく、スラム街などの狭い路地や、舗装されておらず、ひどい轍のついた悪路など、自転車でなければ入っていけない場所も多いのです。



この仕組みは、回収員や分別作業員という雇用を生み出すことにもなります。貧困対策にも大きな貢献になるのです。投棄されるゴミを減らし、資源の再利用を促進し、協力する家庭の家計を補助すると同時に、地域の雇用を増やして貧困を減らし、地域の衛生状態も改善するという、優れた仕組みと言えるでしょう。

現在では約5千世帯から200トンの資源ごみを収集するまでになりました。この仕組みをさらに拡大していくため、当局とも連携してシステムの拡充を進め、人々の参加を募っています。これが市街全域に広がっていけば、ラゴスのゴミ問題、洪水対策、衛生状態の改善に大きく貢献することになるでしょう。

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ゴミ収集車を使う先進国の発想では、いろいろな点で上手くいかないのは明らかです。現地の人件費の低さがあるとしても、自転車を使うからこそ成り立つ面があります。おそらく、この形は今後、都市が発展することで発生する可能性のある、アフリカの他の都市のゴミ問題にも役立つでしょう。

これまでにも、デリバリー用のバンの代わり、救急車、タンクローリー、スクールバスなど、先進国では思いもよらぬような形で、クルマの代替となって貢献しているアフリカの自転車を取り上げてきました。ナイジェリアでは、ゴミ収集車としても自転車が使われ、社会の福祉に大きく貢献しているのです。




盛岡で突然石油が湧いたと話題になっているそうです。日本が突然産油国になったり..しませんか。

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