今年1月の都知事選の際には、NPOの自転車活用推進研究会による「
新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」というサイトが立ち上がりました。都知事への立候補者に、それぞれの自転車政策を問い、
自転車活用政策の推進を公約に採用するよう求める、オンライン署名キャンペーンでした。
舛添都知事は、
公約にはしないものの趣旨に賛同し、実現に向けて努力すると約束しました。自転車政策については、その後の会見などでもたびたび言及し、自転車走行環境の整備の推進が
大いに期待されたのは記憶に新しいところです。その後の経緯については、このブログでも注目してきました。
都知事の就任会見では、東京の問題点の一つを交通体系と指摘しました。「私がやりたいのは欧州の先進都市のように、歩道と自転車専用道と自動車専用道の3車線を併設」と、自転車の利用拡大に取り組む考えを明らかにしたと各紙で報じられました。
メディアによっては、その後も、自転車政策が舛添都知事の政策の一つの目玉として捉えているところもありました。もう9ヶ月経つのですから、その方向性を具体的に打ち出してほしいところですが明らかにはなっていません。当初と比べ、かなりのトーンダウン、失速している感が否めません。
舛添知事、実はあまり自転車の活用に関して、その
本質的な部分をよく理解していないのではないか、と思われることが明らかになってきました。具体的な計画についても、いまだ目に見えるような進捗はなく、今後に対する期待もしぼんでいる状況と言わざるを得ません。
先日は、ロンドン五輪に向けて自転車インフラの整備を進め、世界からも賞賛された「
自転車革命」に成功し、自他共に認める「自転車都市」となったロンドンを視察しました。ボリス・ジョンソン市長からは、「ぜひ東京でも取り組むようお勧めしたい。みんな気に入ってくれるはずだ。」と勧められたと報じられています。
これに対する舛添知事の答えは、「
今、自転車の専用レーンを作っているが、(五輪までに)距離を2倍にする。シェアサイクルも広げる。」というものでした。そもそも、この答えが、ロンドンの自転車革命を理解していない証拠と言わざるを得ません。
自転車レーンの整備距離をただ増やせばいいというものではありません。ネットワークとして接続されたレーンでなくては有効に機能せず、自転車の活用にもつながらないことは、ロンドンを見てもわかったはずです。私がこれまで一貫して主張してきたところでもあります。
しかも、東京の自転車レーンは、歩道上に塗られた自歩道を除けば、たった9キロしかありません。倍増したとしても、ロンドンの50分の1、ニューヨークの83分の1です。大都市東京に、たったこれだけのレーンでは、到底意味のあるものにはなりえません。
オリンピックに向けて、東京での自転車の活用を進めるため、自転車レーンを整備するというのは、9キロの自転車レーンを18キロにすることではありません。東京を網羅する自転車レーンは、一つのネットワークです。極端に言えば、ゼロかイチかです。
通常期の整備ならまだしも、2020年のオリンピックに向けて、東京を変えていこうという時に、レーン倍増なんて、お話になりません。わざわざロンドンを視察し、自転車革命の現場を直に見てきてこれでは、期待はずれもいいところです。そこのところを舛添氏は理解しているのでしょうか。
ネットワーク化された自転車レーン網が必要という考え方に賛同するサイクリストは少なくないと思いますが、自転車活用推進研究会も思いは同じようです。冒頭に述べたオンライン署名キャンペーンの続編として、新たなキャンペーン、「
+1 LANE PROJECT;TOKYO自転車シティ化計画」をスタートさせました。
これは、都心全域と五輪施設を網羅する自転車レーンネットワーク構築を提唱するものです。サイト上でリアルタイムで「いいね!」を募ってカウントし、舛添都知事が就任一周年を迎える来年2月に、賛同状況レポートと提言書を都知事宛てに提出しに行くそうです。
自活研では、この提言書をファーストステップとし、オリンピックが開催される2020年まで続く長期プロジェクトと位置づけています。提言書提出を機に東京都と協力関係を築いて、市民が自転車レーン整備に直接・間接に参加できるようなキャンペーンにしていきたいと考えていると言います。
私も、このキャンペーンの趣旨には全面的に賛同します。前回に続き、今回も担当の方から、わざわざ連絡をいただき、ブログでの紹介を依頼されました。もちろん、頼まれなくても取り上げますし、応援します。興味のある方は、ぜひサイトをご覧いただきたいと思います。
ちなみに、サイト上での「いいね!は、フェイスブックを使っていなくてもクリック出来ます。一応、フェイスブックのシェア画面は出ますが、このサイト独自のものであり、フェイスブックのログインは不要となっています。賛同する人は、誰でもクリックできるシステムです。
サイトは趣旨とその説明が簡潔によくまとめられていると思います。世界で自転車が認められているのに東京の現状は惨憺たるものであり、その状況を変えるのに、オリンピックはまたとないチャンスであることがつづられています。サイトには提言書の案が示されています。
オリンピックまで6年をきりました。オリンピック開催が決まったときのような盛り上がりはなくなりましたが、せっかくのオリンピック開催です。このような大きな改革に取り組める機会というのは、なかなかありません。東京の自転車環境を劇的に改善させるチャンスでもあります。
もちろん自転車インフラに限ったことではありませんが、自転車革命として注目され、ロンドンオリンピックを成功させた一つの要因としても、その自転車の活用に向けた基盤の整備が世界的に注目されました。せっかく、このような成功例があるのですから、見習わない手はありません。
東京都民ではない方も多いと思いますが、これは東京だけの話ではありません。その是非はともかく、首都である東京が変われば、全国各地へ伝播していくはずです。東京で自転車レーンのネットワークがつくられ、これは便利で安全だとなれば、市民のコンセンサスも得られやすくなり、各地で整備が加速すると思います。
自転車レーンのネットワークと言うと、何か大仰な感じもしますが、自転車を安全かつ有効に活用しようと思えば、歩行者と分離するため、車道に自転車レーンを整備していく必要があります。それをちょっと増やしたところで意味はありません。整備を進めていけば、ネットワークにならざるを得ないのです。
ふだん、ママチャリで最寄り駅までしか行かないという人にとっては、自転車レーンが出来れば安心して通行できるのは理解できても、ネットワークにはピンと来ないかも知れません。でも、ネットワークとしてつながっている道路に自転車レーンを整備していけば、自然とネットワークになります。
自転車レーンがつながっていけば、思いのほか便利で、安全で、ラクに速く自転車で移動できるようになります。最近、自転車は車道といわれることも増えましたが、車道走行は怖いという人でも安心して走行できるようになります。それを東京の都市部全体に広げましょうという話です。
中途半端に自転車レーンを増やしても、効果が薄いのは明らかです。自転車レーンがつながっていなければ、利便性にも安全にも、そして五輪での渋滞解消にも貢献しないでしょう。やるなら、レーンを連続させる、すなわちネットワーク化は必須で、距離数の問題ではないことを舛添知事には理解してもらわなければなりません。
道路でも、公園でも、上下水道でも、市民のニースを受けて整備するのが自治体の役目です。自転車を使う人がこれだけいるのですから、もっと自転車のインフラが整備されていいはずです。これまで、道路があまりにクルマ優先になっており、本来あるべき自転車インフラが、諸外国に比べ遅れているという事も出来ます。
自転車に乗らない人にとっても、歩道が安心して歩けるようになればメリットがあるはずです。これまで、自転車の走行空間だけ、極端に足りなかったのを是正する必要があります。ある意味、自然な要求とも言えるでしょう。自転車レーンが整備されても損はないと思います。是非一度、サイトを訪れてみてください。
アルツハイマーの血液判定法の発見とは朗報ですね。治療にも道を開くそうで、早期に確立してほしいものです。