好調な企業が多いようですが、なんと東京電力も今期黒字の見通しだそうです。電力料金が値上げされているので当然かもしれません。福島の処理もあるので、赤字では困るといえばそうですが、その黒字の規模も、原発事故の前に匹敵するほどの2千270億円もの黒字だと言います。
東電の社長は、原発事故の後に減らされた社員の給料も少しずつ上げていきたいと話しているそうです。これを聞いて、釈然としない人も多いのではないでしょうか。特に、いまだに避難生活を送らざるを得ない状況にある多くの被災者の心中は穏やかではないでしょう。
たしかに現場で頑張っている人もいると思います。社員の給料のアップは、そうした人たちにモチベーションを維持してもらうためにも、必要な待遇の改善なのでしょう。しかし、国民全体の昨年の給与水準である413万円に対し、東京電力社員の昨年の平均給与は684万円だと言います。
これだけ黒字なのに、例えば浪江町が求めている避難民に対する慰謝料の増額に対しては、第三者機関の調停でも増額を促されているにもかかわらず、それを拒否しています。この対応は、苦労を強いられている浪江町の人たちの神経を逆なでする行為ではないでしょうか。
東電は、一つの町に認めれば、他の町民に対しても対応を迫られて、収拾がつかなくなるなどの理由を挙げています。しかし、赤字なら値上げして消費者から巻き上げ、あるいは国に支援させればいい、ある意味ラクな商売です。社員の給料は上げても、賠償の増額は知らないなんて、許されるのでしょうか。
東京電力は、賠償について、『3つの誓い』を発表しています。それによれば、1.最後の一人まで賠償貫徹、2.迅速かつ、きめ細やかな賠償の徹底、3.和解仲介案の尊重、だそうです。言っていることと、やっていることが全く食い違っていることになります。
このことについて、憤りを感じる国民は少なくないと思います。国を揺るがすような大事故をひき起こしておいて、いまだに帰宅できずに大きな困難を抱えている被災者に対しては要求をはねつけ、自分のところの社員の給与だけは上げていくという姿勢が、果たして許されるのでしょうか。
もう一つ、注目すべきは、原発を動かさなくても大幅な黒字になっているという事実です。「総括原価方式」に守られてきた電力事業は、高い給与だろうが、マスコミ対策の宣伝広告費だろうが、原発神話を浸透させる費用だろうが、政治的な工作をする費用だろうが、みな経費として盛り込むことが出来ます。
結果として東電は、これまで全くコストを削るようなことをしたことがありません。今回、事実上の破綻に追い込まれ、外部の人間が入りました。コストを削ってみたら、原発が止まって燃料費がかかっている以上にコストカット、すなわち贅肉部分を削ることが出来たというわけです。
一般の企業が、長期にわたってするようなコスト削減を、1年や2年で出来るわけがありません。すなわち、今後もっとコストの削減ができるだろうことは明らかだと言います。原発を動かす必要もないですし、電力料金の値上げも不要だったのではないかという話になるでしょう。
東電社員専用の病院とか、都心一等地の土地や建物、人気観光地の福利厚生施設など、一時期ずいぶん報道されました。廃炉事業にはそれなりの費用がかかるにしても、全社員の給与が国民平均を5割以上も上回るような待遇を含め、まだまだ贅肉は多いに違いありません。
元々アメリカの2倍、韓国の3倍と言われる高い電気料金をとってきました。タイムラグがあるので、今期の決算にはまだ十分反映していない原油価格の値下がりという大きな要因もあります。今後は、値上げどころか、料金調整とは別に値下げすら可能ということになってもおかしくありません。
さらに、東京電力で、これだけのコストカットが可能なのですから、他の電力会社も当然可能と見るのが妥当でしょう。他の電力会社も、原発が動かないから赤字だ、原発はどうしても動かさなくてはならないと言っていますが、非常に疑わしく見えてしまうのは普通の感覚でしょう。
実は、この話、私がたまたま見たネット上の動画を元にしています。テレビのワイドショーの1コーナーで、ジャーナリストの玉川 徹さんが取り上げた内容です。ネット動画で、テレビの録画なので、いつ削除されるかわかりませんので、要約を残しておこうと思い書きました。詳しいところは、その動画を見てください。
このことは、今後議論になるであろう、原発の再稼動においても、重要なポイントになるはずです。再稼動容認派、再稼動反対派、それぞれの主張やその根拠はいろいろあります。ただ、容認派、あるいは推進派の主張の大きな部分は、原発を稼動しないと電力料金がさらに高騰し、日本経済がダメになるということでしょう。
いまだ地域独占の電力会社、いまだ健在の総括原価方式が問題なのではないでしょうか。そして、東電の黒字やコスト削減余地を見れば、原発の再稼動は不要なのではないでしょうか。電力会社も、原発を再稼動して大きな社会的リスクを負うことは、経営的にも合理的とは言えないのではないでしょうか。
私は専門家ではないので、確かなことは言えませんが、こうした状況を見る限り、再稼動しなくても電力料金は原発事故以前のレベルに出来るのではないかと思えます。原発が動かせなくても、本来削るべき贅肉を削れば、電力料金は、むしろ下げられるのではないでしょうか。
そこには、いわゆる「原子力むら」と呼ばれる利権集団の意図が透けて見える気がするのは私だけでしょうか。この問題については、世論調査でも再稼動反対の意見が多くなっています。それなのに再稼動を強行して将来に禍根を残すようなことはやめるべきではないでしょうか。
原油価格が大きく下落しています。これだけ安いのですから、少なくとも、今急いで再稼動する必要はないでしょう。これを僥倖として、電力の自由化を進め、総括原価方式をやめ、いわゆる「原子力むら」と言われる利権構造を破壊し、国民が納得できる形で検討できるようになるまで先延ばしするべきではないでしょうか。
原発の発電コストは安いことになっていますが、放射性廃棄物の最終処分などにかかる莫大なコストが含まれていません。将来へのツケは別にして、単純なウランの値段との比較でごまかされているのも、「原子力むら」の仕業だと思われます。本当に安いか疑問だとする専門家も少なくありません。
原発は安定したベースロード電源などと言っていますが、ただでさえ、火災などのトラブルがあれば、稼動を停止させ、安全審査を経て再稼動するまでは長い期間がかかります。今の状況で火力が支えているのを見ても、この安定したベースロード電源というのも、かつての安全神話と同じ、国民に対する刷りこみに見えます。
安全保障の観点から、原油輸入に頼るのは危険という議論もあります。比較的友好国に分散しているとは言え、ウランも輸入です。それを言うなら純国産エネルギー、すなわち風力、太陽光、地熱、潮力などの、いわゆる再生可能エネルギーの開発を進めるべきでしょう。
風力や太陽光は、出力が安定しないという弱点がありますが、それこそ発電時の余力を水素の精製に使って、いわば電池のような使い方をするなど、次世代のエネルギーの開発を進める好機と見ることも出来るでしょう。新たな発展のために、既得権益を持つ団体の妨害を排除すべきです。
あの原発事故から4年近く経ち、喉元を過ぎて、その怖さや悲惨さを忘れかけている人もいるかも知れません。将来の世代のためにも、大きなリスクを抱えることになる再稼動に対して、今こそ私たちは反対を表明していくべきではないでしょうか。
最近、原発事故について、今まで知らされてこなかった事実も明らかになってきています。事故当初に多かったと思われた放射性物質の放出ですが、実は、事故直後よりも後に大きな放出があり、それが広範に広がったそうです。子供の甲状腺への影響なども、これから明らかになる部分があるに違いありません。
専門家の書いたものなどを読むと、あの悲惨な事故も、あれだけの被害で済んだとの見方があります。不幸中の幸いで、あれだけの被害で済んだものの(それでも世界最悪レベルですが)、少し違ったら、チェルノブイリのように放射性物質が飛散し、東日本は人が住めなくなっていたとする専門家もいます。
喉元過ぎれば熱さ忘れるで、目先の電気料金のため、あるいは原発を再稼動しないと電力料金が更に上がるなどという「原子力むら」のウソに騙されて、原発の再稼動を認めていいのでしょうか。あれだけの津波は、そうそう起こらないなんて考えていいのでしょうか。
福島原発の事故原因はいまだ究明されていません。東電の隠蔽工作が疑われていますが、実は津波ではなく、地震による配管などの断裂によって、冷却水が送り込めなくなったのが原因との説もあります。もしそうなら、原発再稼動どころか、いつまた過酷事故が起きるともわかりません。
遠い将来に、再び同じような規模の津波によって、苛酷事故が起きる可能性を言っているのではありません。日本の火山は活動期に入ったと言われています。御嶽山や西之島、阿蘇山中岳、口永良部島だけではありません。各地で火山性微動が観測されるなど、警戒レベルが引き上げられています。
一時期より減ったとは言え、地震も多発しており、9世紀や18世紀の大規模噴火や巨大地震が集中した時期との類似点も指摘されています。南海トラフなどを震源とする3連動地震なども取りざたされています。これから危ない時期になっていくことを考えると、すぐまた大惨事が起きないと誰が言えるのでしょうか。
いま再稼動が取りざたされる川内原発のすぐ近くには、活動が活発化する桜島や、新燃岳が噴火した霧島山、阿蘇の中岳、雲仙岳など、そうそうたる火山が揃っています。噴火による火砕流が直撃する可能性とは言わないまでも、地震も含め、何が起こるかわかりません。
それらの火山は、いずれも18世紀の江戸時代に大噴火していますし、火山活動の長いスパンを考えれば、未知のレベルの大噴火が起きても不思議ではありません。ただでさえ、欧米の最近の原子炉と違って、格納容器も二重でなく、コアキャッチャーも装備されていない原発で大丈夫なのでしょうか。
日本では、シビアアクシデントなど起きないとの前提で原発が作られています。しかし、最近の原子炉は、もしメルトダウンしても溶けた核燃料が外に出ない構造になっているそうです。厚いコンクリートに超耐熱合金を被覆したコアキャッチャーという冷却プールに逃がす構造だそうです。
仮にメルトダウンしても、二重の原子炉で密閉され、汚染水が漏れ続けるようなことにはならない構造となっており、今どき中国製の原子炉でさえ、この方式が取り入れられていると言います。この原子炉にするには高額の特許料がかかるので、「原子力むら」の人たちが、この問題を明かすはずがありません。
世界最悪レベルの事故を起こし、また地震や津波や噴火に襲われる可能性は高まっているのに、世界的に見ても古い設計の原発を、小手先の対策だけで再稼動しようなんて、危険極まりないと言う人もいます。私には技術的に正確な判断は出来ませんが、いろいろ知ると、確かにその通りという気がしてきます。
安倍首相は海外に売り込もうとして言う『日本の原発技術は世界最高レベル』は大嘘ということになります。最高どころか、先進国には決して輸出できない、古い技術であるのは専門家には常識と言えるでしょう。安倍首相は、自覚してかどうかは別として、「原子力むら」に操られていることになります。
新潟県の泉田知事は、原子力規制委員会の策定した新しい安全基準は、地震や津波に対する対処療法であり、いかにメルトダウンさせないかに終始するものと批判しています。もしメルトダウンが起こったら、やはりお手上げです。こんなものは新しい安全基準とは到底言えないと言っています。
世界ではメルトダウン事故が起こると考えて、対策を講じています。日本の原発は、いまだにメルトダウンを起こさないという考え方です。これでは、お話にならないというのが、専門家の本音だと思います。あまり報じられることはありませんが、この設計思想の古さについては、専門家の異論はないはずです。
こうした事実は、「原子力むら」の人たちによって、国民に知られないようにされています。私は素人ですが、総合的に見て、再稼動はするべきではないと思います。人知れず黒字をいいように使おうとしている東電のことも含め、しっかりと事実を見極め、判断すべきではないでしょうか。
今回は直接、自転車とは関係のない話ですが、ペダルをこぎながら考えたことを書いてみました。