安倍首相は地方創生について、「重要なことは地方が自ら考え、行動して変革を起していくことだ。国も予算や人材等あらゆる方策を使って応援する」と発言しています。国がどうにかしてくれるのを待つのではなく、地方自治体が自ら切り開く必要があることを強調しています。
実際に、国が規制緩和をしても、地方自治体が独自の規制を崩さないため、活性化につながらないということもあるようです。例えば、待機児童の問題にしても、劇的に改善して注目される自治体もあれば、旧態依然として相変わらずの自治体もあります。
一般的に、国が地方を縛っているようなイメージがあります。しかし、むしろ国の規制は緩められているのに、地方自治体のほうが規制を解かなかったり、改革に及び腰だったり、変化を望まない、突出したくない、前例を崩そうとしない、といったこともあるようです。
もちろん、地域によって事情があるでしょう。それぞれ環境も違いますから、一概には言えません。地域ごとの規制が必要な分野もあると思います。ただ、他の自治体は認めていることで、規制を緩和しようと思えば可能なこともあるのではないでしょうか。
例えば、身近な自転車関係で言うと、二人乗りのタンデム自転車の規制です。道路交通法上、つまり国の規制では、タンデム自転車で公道を走行することは違反ではありません。しかし、各都道府県の公安委員会が乗車人員の制限を定めているのです。このため地域によってバラつきがあります。
現在、タンデム自転車で公道走行が可能なのは、兵庫、愛媛、広島、宮崎、佐賀、長野、山形、新潟の8県です。このほかに、三輪ならば利用可能とするところ、自転車専用道路なら利用可能とするところなど、対応が分かれています。8県が出来るのであれば、緩和可能なところも多いのではないでしょうか。
たまたま、タンデムのニュースがありました。
和大生有志 四輪自転車で県縦断
2人乗り四輪自転車で和歌山県を北から縦断中の和歌山大学の学生有志が14日、紀南に入った。学生らは環境に優しい四輪自転車の観光地での活用を研究している。「まずは自転車の魅力を知ってもらいたい」と寒風の中、汗を流してペダルをこいでいる。
大学に寄贈された四輪自転車を活用しようと、昨年4月に観光学部の学生を中心とした12人でプロジェクトチームを結成。ブレーキを改良したり、屋根を付けたりして自転車を観光用に改造した。
四輪自転車は二酸化炭素の排出がないのはもちろん、二輪より安定性が高い。2人で協力して進むため、観光用としては会話が弾みやすい利点も考えられるという。
全国でも三輪で屋根付きの自転車を使った「ベロタクシー」が、1〜2キロ程度の近距離を移動する手段として徐々に普及している。
県縦断は和歌山市から新宮市まで海岸線を通る約220キロの行程。13日早朝に和歌山市の和歌山大学を出発。16日の新宮市到着を目指している。14日にみなべ町や田辺市を通過した。
観光学部1年の八木悠太さん(19)は「坂道が多くて思った以上に疲れるが、自転車だからこそ見える風景がある。あらためて和歌山の素晴らしさを感じた。各地の観光地を訪れ、四輪自転車を知ってもらいたい」と話している。
自転車の名前は「太陽の船」を意味する「ソルビアンカ」。将来的にはこの自転車に太陽光発電を利用した電動アシスト機能を加え、日本一周や海外の旅に挑戦したいという。(2015年02月14日 紀井民報)
3輪のタンデム自転車なら公道走行可能なところは増えますし、4輪になると、ほとんどの都道府県で可能という話も聞いたことがあります。ただ、記事のような並列で乗る4輪は、交通量の多い道路では他の交通の邪魔にもなるでしょうし、あまり一般的とは言えません。自分で所有しようと思う人は少ないでしょう。
普通の2輪のタンデムだったとしても、車体が長くなるぶん、駐輪にも不便ですし、常時2人乗りする人でなければ、なかなか購入する人は少ないと思われます。つまり、タンデムを解禁しても、レンタルは別として、実際に買う人はごく限られるのではないかと考えられます。しかし、世の中にはユニークなことを考える人がいます。

一見、一人用の自転車に見えますが、よく見るとサドルが2つついています。その名も“
Duetta”、シェアリングバイク、つまり二人でシェアできる自転車です。乗車装置が2つ、ついていますので、立派なタンデムです。クランクとペダルは一組で、前の人しかこげないかと思いきや、そうではありません。動画を見て下さい。
同じペダルを2人でこぐというのがユニークな発想です。乗る人に合わせて調整も出来ると言います。この発想は、なかなか思いつかないのではないでしょうか。フレームも短いですし、これなら、ふだん一人で乗って、必要な時だけ二人で乗ることが出来ます。(ただし、タンデム自転車は歩道は走行できません。)
これは、二人で乗りたいケースが比較的多いという人なら便利でしょう。自転車通学の学生が、場合によって友達と一緒に帰るなんてことも可能になります。現状では、2輪のタンデムを認めている県が少ないため、限られてしまいますが、解禁する都道府県が増えれば、日本でも販売されるかも知れません。
後ろの荷台をあまり使わないなら、いっそのことサドルにしてしまうという考え方はあるでしょう。イザとなれば二人で乗れる自転車、二人乗りを兼ねる自転車が普及する、なんてことも起きないとは言い切れません。取り回しがラクなように、普通の自転車と変わらない大きさならば、十分ありえると思います。

安定性など、乗ってみないとわかりませんが、このような形の自転車の是非はともかく、タンデムが解禁になれば、新しいタイプの自転車が登場する可能性は十分に考えられるでしょう。そして、解禁による新しい市場、あるいはニーズが、必ずしも小さいとは限りません。
もちろん、タンデム解禁がそのまま地方創生になるとは言いません。ただ、観光事業として自転車の活用を進めている自治体なら、その促進にもつながるでしょう。公安委員会や地方議会が細則などを変更する手続きだけで、特に大きなコストがかかるわけでもありません。
問題や異論もあるかも知れませんが、国が定めた法律で許されているのに、各都道府県の公安委員会が禁止する必要があるのでしょうか。8県だけが特に他と道路環境が違うとも思えませんし、他の自治体が8県と同等に規制緩和することに問題があるとも思えません。

もし、タンデムを解禁しても、あんな長くて邪魔なタンデム自転車なんて買う人はいない、乗る人は一部などと思っているのなら、それは思い込みかも知れません。この“Duetta”のような商品が売り出され、ブレークしないとも限りません。今は想像できないような製品が出てくるかも知れません。
必要だから規制を緩和する、あるいは解禁が望まれていることを解禁するのも重要です。一方、特に切実と考えられていなくても、規制を撤廃することで、新たな産業やサービス、思いもよらない市場を生まないとも限りません。『地方が自ら考え、行動して変革を起していく』ことを期待したいものです。
ところで、最近頼まれて、まとめサイトのキュレーターをやっています。自転車が趣味でない、一般の人向けの記事ですので、このブログの読者の興味とは違うと思いますが、よろしければご覧下さい。
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なぜ今、自転車が注目されているのか、スポーツバイクはどこが違うのか?
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Posted by cycleroad at 23:30│
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