March 20, 2015

誰もが同様に移動できる社会

東京オリンピック・パラリンピックが5年後に近づいています。


いろいろな準備が必要となりますが、海外から多くのお客様を迎えるに当たり、街のバリアフリー化の推進も求められています。以前に比べれば、鉄道の駅にもエレベーターが設置される割合が増えていますし、新しい建物にはスロープが取り付けられたりしています。

少しずつバリアフリー化が進んでいるのは確かですが、車椅子で移動する場合、その動線上にどこか一箇所、階段などを迂回できないような場所があれば、移動は困難になります。必ずしも全ての場所がバリアフリー化されているわけではないので、新しい目的地に出かける前は、入念な下調べが必要になると聞きます。

どこへ行くにも、何も調べずに出かけられるようになれば理想的ですが、まだまだ問題のある箇所は少なくありません。見過ごされている部分も多いようです。例えば、せっかくスロープがあっても、急すぎて危険だったり、使う人から見たら、バリアフリーになっていないいような改良もあるようです。

普通は気がつかないような起伏や形状、溝などが問題になる場合もあると言います。さらに言えば、車椅子の行く手を阻むのは、段差や階段ばかりではありません。未舗装の道、公園の芝生、海岸の砂浜、庭園の石畳、砂利道の参道、雪道、野山のトレッキングコースなど、タイヤをとられて行けない場所はたくさんあります。

自転車乗りの感覚で言うならば、ロードバイクでは入って行きにくいような場所と言ってもいいかも知れません。でも、自転車の場合だったらマウンテンバイクがあります。タイヤの太いビーチクルーザーや最近流行しているファットバイクなどを使う手も考えられます。

そう考えたのかどうか知りませんが、もっといろいろな場所へ自由に行けるような車椅子が出来ないかと考えた人たちがいます。そこで生まれたのが、“Freedom Chair”、新しい発想の車椅子です。彼らは、このフリーダムチェアを、腕でこぐマウンテンバイクだとしています。

Freedom ChairFreedom Chair

Freedom ChairFreedom Chair

タイヤはまさにマウンテンバイクのようなブロックタイヤ、4輪ではなく3輪です。ホイールベースを伸ばす形で前輪が取り付けられているぶん安定します。通常の車椅子のようにタイヤを回すのではなく、左右のレバーを倒すことで進む、新しいタイプのドライブトレーンが使われています。

腕の力が自転車と同じように、ギヤとチェーンを使ってタイヤに伝えられます。レバーを引けばブレーキがかかるようになっています。フレームの形状や、ペダルの代わりにレバーを使っているなどは特殊ですが、それをのぞけば、たしかにマウンテンバイクの一種と言ってもいいような仕様になっています。

Freedom Chair

Freedom Chair

実は、パーツも多くがマウンテンバイクのものと共通になっています。これは、コストを抑えるのに大きく貢献します。通常の車椅子と違って、自転車と共通の交換パーツや補修部品が、どこでも安く手に入るだけでなく、どこの街の自転車屋さんでも、修理や交換、メンテナンスを頼むことが可能なのです。

マウンテンバイクと同じで、タイヤを外して分解出来るので、クルマのトランクにも積むことが可能です。これによって、大きく行動範囲が広がることでしょう。動画を見るとわかりますが、かなりラフなオフロードでも走破しています。なるほどマウンテンバイクだと説明するのもわかります。





ちょっとした坂を上ることも出来ます。また、従来の車椅子よりも速い速度が出せます。人が歩くよりも速いスピードです。3輪になってホイールベースも伸びた分、速い速度でも安定して走行することが出来るわけです。今までの車椅子とは違った移動手段と言ってもいいかも知れません。

事実、開発者の人たちは、この“Freedom Chair”は、ある面、車椅子ですが、ある面、マウンテンバイクであり、またある面、レクリエーショナル・ビークルだと説明しています。実際に、この新型車椅子は医療器具としての承認は受けておらず、レクリエーション用の器具として売り出される予定です。

Freedom ChairFreedom Chair

Freedom ChairFreedom Chair

この新しい乗り物は、現在の車椅子の利用者が、多少の段差を乗り越えたり、多少の坂を上ったりするのを助けるだけではありません。これまで車椅子では困難だった、未舗装の場所や野山のオフロード、トレッキングコースや海岸など、いろいろなフィールドへ繰り出すことが出来ます。

そして、そのことは新しいコミュニティに参加したり、車椅子でない友人と行動を共にしたり、今まで出来なかった経験をすることを助けるわけです。これまで、どうしも家に閉じこもりがちだった人を、外へ連れ出すきっかけにもなると考えています。

Freedom ChairFreedom Chair

Freedom ChairFreedom Chair

クラウドファウンディングサイトで資金を調達し、アメリカでは今年の6月から出荷される予定になっています。さらに、発展途上国などにも供給されることになっています。インフラとしてのバリアフリーが、なかなか進まない中、バリアの克服に貢献する乗り物と言えるかも知れません。

彼らが言うように、従来の行動範囲を超えて移動できる、走破性に優れた、腕でこぐマウンテンバイク、つまり自転車と見ることも来ます。もともと自転車には多くの種類があります。場合によって、いろいろな選択肢があるわけですが、その中の一つと捉えても、おかしくありません。





人間が一番大きな力を出せるのは足の筋肉ですから、手を使うのがパワー的に不利なのは否めません。しかし、脚力の衰えた高齢者でも電動アシストを使えば、普通の自転車と同じように走れるように、足を使えない人でも、この“Freedom Chair”で、自転車の人と一緒に走れるのは、素晴らしいことだと思います。

ある移動をするのに、その人の都合でマウンテンバイクを選ぶか、電動アシスト自転車を選ぶか、この“Freedom Chair”を選ぶかの違いです。腕でペダルを回すハンドサイクルなどもあります。どこまでが自転車で、どこからが車椅子と分ける必要もないでしょう。どれを選ぶかの違いだけです。

Freedom ChairFreedom Chair

自転車の種類の違いだけと考えるならば、オリンピックとパラリンピックを分けることにも意味があるのかと思えてきます。もちろん、健常者と障がいのある人と一緒に競争しろというのではありません。例えば、オリンピックの自転車競技の中に、手でこぐ自転車の種目があってもいいのではないでしょうか。

同じ自転車競技の中で、使う自転車のタイプによって競技種目を分ければいいことです。それぞれのタイプの自転車で行なわれる競技というだけで、足が不自由かどうかで、オリンピックに出場する人とパラリンピックに出場する人と分ける必要があるのだろうかという気がしてきます。

Freedom ChairFreedom Chair

陸上競技とか、水泳とか、他の種目でも、男女別・距離別などだけでなく、例えば義足の人など、それぞれ別のクラスにすれば、一つのオリンピックでもいいような気さえしてきます。力が違うために男女別に分けたり、体重別に分けたりするのと同じように、競技を分ければいいという考え方も出来るでしょう。

もちろん、大会運営上の都合など、いろいろ問題があるのかも知れません。素人の乱暴な議論、ある種の理想論であり、実際には難しいのだろうと思います。ただ、もし一つに出来るのであれば、パラリンピックがオリンピックより注目されない、テレビ中継されないというようなことも無くなるでしょう。

Freedom ChairFreedom Chair



同じオリンピックの自転車競技で、足を使う種目に出る人と、腕を使う種目に出る人という違いだけになれば、人々の頭の中のバリアフリーも進むに違いありません。もちろん、街のインフラとしてのバリアフリーも必要ですが、人々の心の中のバリアもなくなっていく気がします。

ふだんの生活でも、MTBにするか、電動アシスト自転車にするか、フリーダムチェアを使うかの違いが、あまり意識されないようになっていくのが理想でしょう。バリアフリーも大切ですが、誰もが普通に、同じように自転車で移動できるような社会、バリアが問題とならない社会が実現することを期待したいものです。





20年ですか。今も信者が増えているそうですが、せめて素性を隠した勧誘は禁止するべきではないでしょうか。

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