April 19, 2015

分離をするだけでは能がない

世界で自転車を活用する動きが広がっています。


このブログでも、たびたび取り上げているように欧米諸国でそれは顕著ですが、欧米ばかりではありません。お隣の国、韓国でも最近、自転車に乗る人が増えています。国も積極的に自転車の活用を推進しようと、インフラの整備などに力を入れています。

韓国では従来、大人が乗るのはクルマであり、それも大型車や高級車を良しとするような風潮が強かったと言われています。そのため、自転車に乗ることを蔑んだり、見下すような風潮があり、自転車は子供の乗り物とされ、大人が自転車に乗らない国とされてきました。

李明博大統領「自転車通勤したい」しかし、李明博(イ・ミョンバク)前大統領の時代に、欧米諸国にならって、もっと自転車を活用しようという機運が高まりました。環境負荷の低い乗り物として、もっと見直すべきで、積極的に活用して温暖化ガスの削減にも貢献させるべきとのコンセンサスが醸成されていったのです。

李明博前大統領は2008年、当時1.2%と低率だった自転車の輸送分担率を2017年までに10%に高める目標を掲げ、環境面だけでなく、自転車製造業の振興などの経済面にも力を入れる計画を発表、「クルマは20年かかって世界5位国家となったが、自転車は5年以内に3位国家になる」と宣言しました。

また、訪韓客を増やす観光資源としても注目し、全国一周自転車道路なども含む総延長数4千4百キロに及ぶ自転車道を計画しています。同時に、このような自転車インフラの整備が、国民の健康を増進し、医療費などの削減にもつながるとして、国家レベルの政策として打ち出しました。

前大統領自ら、官邸から青瓦台の執務室まで自転車で移動するなど、先頭を切って、韓国で言う「グリーンライフ」を国民に浸透させるべく力を入れました。国民が自転車に多く乗ることで、雇用が創出され、観光収入が増え、渋滞や交通難の解消などで数兆ウォンに達する経済的効果が見込めるという予測も公表しています。

仁川自転車専用道路オンパレードこうした韓国の自転車政策については、日本であまり報道されませんが、前大統領は、自転車の活用を「世界的な流れである。」と明言しています。そして「“自転車時代”へと進むのが遅すぎないよう急ぐべきだ」と強調し、既存の道路の再整備などにも取り組みました。

また、「グリーン政策として推進すべき『主要交通手段』は、ハイブリッドカーでも電気自動車でもなく自転車だと断言し、我々の進む道だ。」とまで言い切っています。自転車の活用の必要性について、ここまで明確に宣言している国家元首のいる国(当時)は、そうないと思います。

その結果、自転車を子供が乗るものと見下すような風潮から、大人で自転車に乗る人が非常に少ない国だった韓国は大きく変わりつつあります。国民の間でも意識が変わり、自転車に乗る人が増え、大規模自転車道の開通のニュースなども伝わってきています。

現在の朴槿恵政権では、セウォル号の沈没や、地下鉄の追突事故など、公共交通の安全性の問題がクローズアップされ、残念ながら自転車どころではないようです。しかし、自転車インフラの整備の推進については、政策として受け継がれ、着々と進んでいるようです。

その韓国から、今回報じられているのは、なんと高速道路の中央分離帯に自転車道というニュースです。



韓国で、高速道路の真ん中を走る自転車専用レーンが登場!

韓国で、高速道路の約30kmにおよぶ区間の中央部分に自転車専用レーンが設置された。その様子をドローンによる空撮映像でご紹介しよう。

この自転車専用レーンが設置されたのは、ソウルから約160kmほど南にある、大田(テジョン)と世宗(セジョン)を結ぶ6車線の高速道路の中央部分だ。自転車専用レーンの頭上をソーラーパネルが覆い、電力の供給だけでなく、日よけ用の屋根としての役割も果たしている。自転車に乗る人たちが自動車の排気ガスを吸い込みながら走る、という状況が気になるがが、全てのクルマを電気自動車にすることが出来ればこの計画は完璧だろう。

ここで思い出すのが、370万ドル(約4億4,000万円)の総工費をかけて昨年オランダに設置された、ソーラーパネルを道路に敷き詰めた「SolaRoad」だ。設置距離は約70mと韓国のものよりだいぶ短いが、これはパネルの耐久テスト用に試験的に設置されたものであり、電力の供給以外にも、路面にライトで情報を表示したり、交通情報を収集・管理するといった用途を想定している。

それでは早速、ドローンが撮影した韓国の自転車専用レーンの映像をチェックしてみよう。


(2015年04月17日 Autoblog)


これはユニークです。高速道路の中央部分に設置するとは、他に例がないのではないでしょうか。当然ながら信号で止まる必要はなく、屋根までついています。これなら自転車でも高速に移動できるでしょう。中央分離帯を自転車道と発電にも使うとは、一石三鳥のアイディアです。

確かに、排気ガス臭いかも知れませんが、こんな自転車道があれば、長い距離でも高速で移動できます。ぜひ使いたいという人は多いのではないでしょうか。この高速自転車道路が使える人ならば、自転車通勤できる距離も伸びるでしょう。自転車の交通手段としてのポテンシャルも上がります。

高架の高速道路の下とか、側方の土手の部分とか、利用できる場所はないだろうかとは考えたことはありますが、中央分離帯は気がつきませんでした。この手があったかという感じです。このアイディア、日本でも使えるのではないでしょうか。

もちろん、幅のある中央分離帯ばかりではないと思います。でも部分的であっても、ある程度の距離がとれるならば、設置する手はあると思います。特に都市部と郊外を結ぶ部分であれば、自転車道としての利用価値も高く、一定のニーズはあると思います。

ふだん、高速道路を使っても、中央分離帯の形状まで気にしておらず、よく覚えていませんが、グーグルマップの航空写真で見てみると、幅の広そうな中央分離帯は、けっこうある気がします。高速道路以外の、東京で言えば第三京浜とか京葉道のような、有料道路やバイパスの中央分離帯も使える場所があるかも知れません。

自転車専用レーン

太陽光発電パネルを屋根にし、その売電料で工事費は回収できそうです。なんなら多少の料金をとる手も考えられます。すぐ脇をクルマが高速で走っているわけですが、目隠しも兼ねて高さのあるガードレールを設置すれば、問題はなさそうに思えます。

事故が起きて、クルマが中央分離帯に突っ込むという事態も考えられますが、それは一般道を走っていても起こりうるわけで、大きな問題とは思えません。中央分離帯のわずかな幅とは言え、貴重な公共空間であり、自転車の活用という点からも眠らせておくのはもったいないと思います。

もしかしたら、高速道路の構造等を定める法令の改正などが必要になるのかも知れません。現状では安全面などから、所管の省庁の許可が下りないような気もします。このような自転車道をつくってしまう韓国の柔軟性、また、政治的な行動力は見習うべき部分ではないでしょうか。

日本の道路公団などが自発的に始めるのは期待できそうにありません。規制緩和が必要なら、政治の力も必要となるでしょう。そのためには世論が喚起される必要があります。もし、この韓国の事例が成功して大きく話題になれば、日本でもという声が高まるかも知れません。この道路の今後に注目したいと思います。




日本でも大きく報じられ、衝撃的だったあの韓国の客船セウォル号沈没事故からもう一年も経つんですね。

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