市民が、自転車レーン上に駐車するなど、違法な迷惑駐車車輌を見つけたら、そのナンバーを含めて撮影し、アップロードすることが出来るサイト、“
Towit”です。GPSの位置情報を利用して、地図上の該当地点に自動的にアップされ、誰でも見ることが出来ます。
リアルタイムに違法駐車が報告されることになります。もし、駐車違反の取締り当局が、このサイトをモニターするならば、巡回して違反者を探すより、取締りの効率が上がることになるでしょう。しかも、当局に余分な予算がかかるわけでもなく、市民の税金を使うわけでもありません。
物流業者などは、自社の車輌がアップされて、市民の批難を浴びたり、イメージダウンや売上げが減少する恐れがあります。こうした取り組みが注目されるようになれば、法令順守の徹底を迫られることになるに違いありません。その点でも、違法駐車の抑止力となる可能性があり、なかなか興味深い取り組みです。
しかし、弱点もあります。実際に駐車取締り当局が動いて、罰金やレッカー移動をしないならば、ただネット上で写真が晒されるだけということになります。企業などの自粛効果はともかく、実際には何も影響がないと思われてしまうと、効果は半減してしまう恐れがあります。
当局が動いたとしても、取締りの能力には限度があります。移動させた車輌を置いておく場所も必要ですし、人員やレッカー車などの点からも限界があるでしょう。もし、サイトにアップされたとしても、実際には滅多に取り締まられないとするならば、抑止力はそがれてしまいます。
当然ながら、サイトの存在を知らない人もいます。自分のクルマがアップロードされていることに気づかなければ、自粛効果も起きません。知ったとしても、罰金やレッカー移動は困るけれど、たくさんの写真の中に、一枚二枚写っても関係ないと割り切る人、気にしないと開き直る人もあるでしょう。
今どきのインターネットやソーシャルネットワークの威力を使った先進的な取り組みではありますが、特に高齢者など、ふだんインターネットを使わない世代の人に対しては、その効果も期待できません。場合によっては、もっとローテクで、誰でもわかる方法のほうが効果がありそうです。
駐車違反対策で、もう一つユニークな試みがあります。“
IParkedInABikeLane”というサイトです。ここでは、その名のとおり、“I Parked In A Bike Lane”と書かれたステッカーを売っています。「私は自転車レーンの中に駐車しました」と書いてあり、同種のサイトがいくつかあるようです。
誰でもピンとくると思いますが、自転車レーンに違法に迷惑駐車された車輌に、このステッカーを貼るわけです。貼られたクルマのドライバーは、自分の違法駐車が批難されていることに気づくことになります。あまり罪の意識がなかった人なら、このステッカーを貼られて反省する可能性があります。
知らないうちに貼られていて、それを友人や職場の人などに指摘されたら、ばつの悪い思いをするかも知れません。少なくとも褒められた行為ではないので、分別ある大人ならば、自転車レーン内に違法な迷惑駐車をするのは、極力やめようと考えさせる効果が期待できるでしょう。ふだんネットを使うかどうかは関係ありません。
もちろん、気にしない人は気にしないと思います。のれんに腕押し、馬の耳に念仏という可能性もあります。単にステッカーをはがす手間をとられるだけで、特に負担は生じません。心理的なプレッシャーを与えるだけで、その人のモラルに期待するしかないのが弱いところです。
ところで、このステッカーを貼るという行為、法的にはどうなのでしょうか。国によっても違うでしょうが、いくら相手が違法駐車をした法令違反者だからと言って、警察でも裁判所でもない個人が、罰則を与えたり、制裁を加える権限はありません。では、ステッカーが罰則や制裁なのかと言うと微妙です。
もし、これがタイヤをパンクさせるとか、傷をつけるとか、何らかの形で車輌に損害を与えるならば、それは犯罪ということになります。でも、ステッカーを貼っても、はがせば済む話です。ステッカー1枚では実害も無く、わざわざ被害届は出さないでしょうし、検挙も期待できません。ある意味グレーゾーンなのかも知れません。
このサイトには、このステッカーを使った場合に起きた、口論、ケンカ、損害賠償、その他いかなるトラブルにも責任は負わないと書かれています。あくまで自己責任で使い、間違ってもトラブルにならないような方法で使えということでしょう。
サイクリストの立場からすれば、違法駐車は迷惑なばかりか、危険をもたらします。せっかくの自転車レーンなのに、無神経に駐車されている車両に対して腹が立つということもあるに違いありません。抗議の気持ちを示すために、ステッカーの一つでも貼りたくなるのは無理もありません。
世界には、同じようなステッカーを市民団体などが作成し、広く販売している例もあります。迷惑駐車に対し、剥がすのが面倒なステッカーを貼る、また売られている国もあります。ステッカーを貼るという行為に一定のコンセンサスが得られている国もあるようです。少し古いニュースですが、ギリシャの例です。
ギリシャの市民団体、迷惑駐車に「嫌み」ステッカーで対抗
[アテネ 20日 ロイター] 迷惑駐車への対抗策として、違反を犯した車両の窓に「嫌み」なステッカーを貼り付ける試みがギリシャで始まっている。
市民団体Streetpanthersでは、「私はばか!どこへでも勝手に駐車する」などと書かれた手のひらサイズのステッカーを作り、無法駐車する車両の窓に貼っている。
このステッカーは、同団体のウェブサイト(www.streetpanthers.gr)で購入可能。試みをスタートさせた2006年以降、これまでに数十万枚が売れたという。
団体の代表は、ロイターに対し「1台の(無法駐車をする)車両が数百人もの人たちに迷惑をかけることもある」とした上で、「ステッカーを貼るとすっきりする」と語った。(2008年 08月 21日 ロイター)
中には、迷惑な違法駐車車輌に対し、ペンキをかけたり、バックミラーをへし折ったり、コンクリートブロックを投げつけてフロントガラスを割るなど、明らかに損傷させる行為が起きる国もあるようです。治安が違うのでしょうが、信じられないような話です。
日本でも、たまに法令違反を理由に、違法駐車をパンクさせるなどして検挙される人があるようです。中には、検挙されないものの、バックミラーを壊されるといった被害が出ているのかも知れません。もちろんそれらは犯罪ですが、それに比べれば、ステッカーなど穏当で、婉曲な手段に見えてきます。
ステッカーを嫌がらせととるか、注意喚起と捉えるかによって変わってきそうです。ステッカーでなくても、車庫の近くにとめられるなど、迷惑している人が貼り紙をしたりするケースがあります。ここは駐車禁止なだけでなく、迷惑ですよと知らせる貼り紙と考えれば違和感はありません。
取り締まるべき警察の能力には限界があります。ステッカーが必ずしもいいとは言えないまでも、何か抑止力になるような方法が欲しいという考え方には共感する人も多いのではないでしょうか。議論の余地はあるとしても、このようなステッカーは、一つの方法のような気がします。
何らかのペナルティがあれば、駐車違反は減るはずです。フロントガラスを割られて泣き寝入りならば、少なくともその場所に、二度と路上駐車しようとは思わないでしょう。駐車料金を払って、駐車場に停めようと思うはずです。程度の問題はありますが、何らかの抑止力がない限り、違法駐車はなくなりません。
むしろ、わざわざ駐車料金を払って駐車場にとめなくても駐車できるのに、なぜ路上に駐車しないのかということになってしまいます。違法駐車のやり得のような状況は、何らかの方法で是正されるべきです。ステッカーでは抑止力にならないかも知れませんが、この程度が許容範囲でもあるのでしょう。
自転車レーンが全く目に入っていない人や、駐車禁止を無視することに、ほとんど罪悪感を感じていない人はいます。違法を咎める気持ちは別にしても、少なくとも、迷惑をしている人、安全を脅かされている人がいるということを知らせる手段は、ほしい気がします。
この時期、行楽はどこも混むので、ツーリング三昧してます。天気がいいのはありがたいですが、焼けますね。
日本でも、路上駐停車は重大事故を引き起こす元凶としてありますし、警察に位置情報付き写真を添付した通報をもっと皆がカンタンにできるシステムがあれば、道路の安全は大きく引き上げることができるのではないかと、私も常々、考えてきました。
事故を誘発した違法駐車運転に6千万円の賠償命令 消防車や救急車の行く手を阻む違法駐車 緊急事態現場への到着、未だ遠く
http://www.city.minokamo.gifu.jp/home/kouhou/IHAN/1.html
路上駐車の運転手が女児死亡事故を誘発したとして車庫法違反で約3400万円
http://www.47news.jp/CN/200408/CN2004080601003709.html
Towitもそれに近いものですね、実際に、こういったサイトを立ち上げ、運営する人には、頭が下がるばかりです。
やはり、行動しなければ、なかなか変わらないですからね。
自分も行動して、皆の行動も引き出せるような、Towitはそこを上手にしているように思います。
日本でも同様の仕組みがあれば、路上駐停車撲滅の大きな助けるになることは、間違いないでしょう。