資料によって多少違いますが、この規模の自転車が所有されていることは間違いないでしょう。中には複数台所有する人もいますが、全体から見ればわずかです。子供やお年寄りなど、自転車に乗らない世代を抜いて考えると、相当の割合の日本人が何らかの形で自転車を利用していることになります。
所有台数は世界でも有数の規模であり、自転車の利用する人の割合の点では自転車大国と言えるでしょう。しかし、台数は多くても、日本人1人が年間に移動する距離に占める自転車による移動距離は諸外国と比べて小さく、自転車が有効に活用されているとは言えない状況です。
自転車が歩道を走行しているという、世界の常識からすれば信じられないような状況を見てもわかる通り、この国では自転車インフラが圧倒的に不足しています。足りないから自転車の利用が進まず、自転車の利用が最寄り駅に行く程度だからインフラの必要性も認識されないという悪循環です。
ドイツ、ベルリン近郊の自転車レーン
欧米諸国をはじめ、最近は新興国にまで自転車の活用を推進しようという動きが広がっています。政府や自治体が自転車インフラの整備に前向きで、市民の自転車の利用率や移動距離を増やそうとしています。渋滞の低減や温暖化ガスの削減、国民の健康増進による医療費の抑制など、多くのメリットがある政策だからです。
日本でも、最近でこそ自転車インフラの整備について、一部で話題に上るようになりましたが、その整備状況については、諸外国と比べ、まだまだ格段の差があると言わざるを得ません。ごくわずかな道路で、車道の端が青く塗られているに過ぎません。
一方、世界では、オランダやデンマークなどの、いわゆる自転車先進国以外でも、最近は自転車インフラが充実してきています。
The Guardiand 紙などに載った世界の自転車インフラを見ると、日本の自転車インフラが、その貧弱さ、みすぼらしさ、レベルの低さを通り越して、哀れで悲しく見えてきてしまいます。
タイ、バンコクの空港周辺の自転車道
オランダ、ズーテメールの自転車専用橋
オランダ、アムステルダムの駐輪場
オーストラリア、ブリスベンの川沿いの自転車道のループ部
オーストラリア、シドニー近郊パラマッタ川のマングローブ林の共用遊歩道
スペイン、セビリア近郊の自転車レーン
フランス、イゾアールへ向かう道
ベルギー、アントウェルペンの専用トンネル
カナダ、カルガリーの自転車専用橋
イギリス、バースの専用トンネル
イギリス、グラスゴーの共用通路
カナダ、バンクーバーのセパレートされた自転車レーン
アメリカ、オレゴン州ポートランドの鉄橋の走行部
スペイン、サンセバスチャンの専用トンネル (→
雨にも強い自転車通勤者の道)
オーストラリア、パースの自転車専用道
スペイン、マドリードの自転車専用橋
オランダ、プルムレンドの自転車・歩行者分離式ブリッジ
オランダ、アイントホーフェンの自転車レーンの環状交差点型の立体交差 (→
オリンピックを呼び水にする)
イギリス、ブリストル近くの自転車専用道
デンマーク、コペンハーゲンの自転車・歩行者分離橋
カナダ、カルガリーの自転車・歩行者分離橋
デンマーク、コペンハーゲンの自転車専用高架道路 (→
自転車行政の革新のチャンス)
北アイルランドのベルファストの自転車レーン
一番最後のものは、何の変哲もなく見えますが、物理的に分離され、充分な幅が確保されています。ここでは、見た目が特徴的なものを中心に取り上げましたが、当然ながら、ほんの一部に過ぎません。普通ですが走りやすそうで、うらやましくなる自転車道は無数にあります。
日本では、自転車インフラの必要性に対して、まだまだ認識が低いのが実情でしょう。長年、クルマ優先で来てしまった結果、その固定観念が抜けない人も大勢います。クルマのための道路整備は充実させるべきだが、自転車用は必要ないと考えている人も多いはずです。
自転車利用者はマナーが悪いし、ルールを守らない奴らにインフラなんて整備してやる必要はないと嘯く人もいます。確かに問題がないとは言いませんが、それとインフラ整備とは別の問題です。クルマは税金を負担しているが、自転車は負担していないと指摘する人もいます。
しかし、その議論もおかしいでしょう。クルマは道路へのダメージが大きいだけでなく、その道路の利用者負担以上に、環境に大きな負荷をかけています。交通事故で人の命を奪い、大気汚染やヒートアイランドなど、より大きな問題を発生させてもいます。
オランダ、ロッテルダム近くの自転車道
クルマの経済波及効果を言う人もいます。しかし、自転車インフラだって、渋滞を減らし、交通事故による人命の損失を減らし、観光資源となったり、移動時間の短縮による生産性の向上、健康増進効果、その他もろもろの経済価値を生みます。クルマと同列に語ることは出来ませんが、決して無駄な設備ではありません。
そんなことを言い始めたら、例えば公園の植栽の整備などは無駄ということになり、公園そのものもいらないという話になってしまいます。電線の地中化とか、道路の清掃だって不要、直接経済価値を生まない公共投資は全て無駄ということになってしまいます。
自転車インフラは、歩道や公園や街灯や街路樹などと同じように、本来あって当然の公共物と考えるべきでしょう。日本では、長らくそれが欠落していたため、その不備に気づかないだけです。自分は公園を使わないからいらないと言わないのと同じで、自転車に乗らないからいらないと考えるべきものではないと思います。
自転車インフラは街の基礎的な公共物で、市民の財産であり、それがあることで、事故が減ったり、渋滞が減ったり、大気汚染が減ったりします。国際公約を守るための温暖化ガス削減費用が減るかも知れません。誰もが直接・間接的に恩恵を受けるはずです。
デンマーク、コペンハーゲンの階上の部屋でも自転車に乗ったまま上り下りできる大規模住宅
日本は敗戦後、欧米に追いつくこうとしてきました。前回の東京オリンピックを機に、インフラの整備は大きく進んだと言われています。その後、高度経済成長を経て、欧米並みになったと思われている社会インフラですが、まだまだ足りないのが、電線の地中化と自転車インフラではないでしょうか。
諸外国の都市を訪れると、それらが日本で欠落していることに気づきます。他の部分は見劣りしないのに、自転車が歩道を走っている様子は、外国人には奇異に見えます。そんな国は日本くらいしかありません。例えるなら、せっかくスーツでビシッと決めているのに、ビーチサンダルをはいているようなものです。
ここに挙げたようなインフラは、諸外国においても、見本となるような部分、理想的な場所ということはあるでしょう。もっと貧弱な設備もたくさんあると思います。しかし、いろいろと制約はあるにせよ、日本では望むべくもないレベルの整備が進められているのも確かです。
ようやく日本でも、車道に自転車レーンを設置しようという機運が出てき始めています。しかし、まだその内容はお粗末と言わざるを得ません。オリンピックで外国人が多数訪日しても恥ずかしくないよう、自転車インフラもグローバルスタンダードにすべきです。そのためにも、世界のインフラのレベルは意識しておきたいものです。
浅田真央選手の復帰を喜んだ人は多いでしょう。彼女を悪く言うのは某元首相くらいで、国民的ヒロインですね。
>しかし、自転車インフラだって、渋滞を減らし、交通事故による人命の損失を減らし、観光資源となったり、移動時間の短縮による生産性の向上、健康増進効果、その他もろもろの経済価値を生みます。クルマと同列に語ることは出来ませんが、決して無駄な設備ではありません。
>自転車インフラは、歩道や公園や街灯や街路樹などと同じように、本来あって当然の公共物と考えるべきでしょう。日本では、長らくそれが欠落していたため、その不備に気づかないだけです。自分は公園を使わないからいらないと言わないのと同じで、自転車に乗らないからいらないと考えるべきものではないと思います。
まさに!
先進諸国を見ても、日本だけが異常なまでに自転車安全通行インフラ整備が遅れているんですよね。本当に悲しくて恥ずかしいレベルなまでに。なのにそのインフラ整備の怠慢を自転車利用者のモラルのせいにしているのですから、呆れを通り越して、憤りまで感じるレベルですよ。諸外国の行政は、それを乗り越えて、今の日本より高いレベルの自転車インフラ整備をやり遂げているのですからね。
真っ当なインフラを整備すれば、自転車利用者はそれに従うまでなのですから。これは世界中すべての国で言えることです。日本はそれができていないだけです。
また、サイクルロード氏のおっしゃるとおり、日本以外のあらゆる先進諸国ができているのに、日本だけができていない、その理由は「本気で、やろうとすらしていない」だけですね。
自転車は健康と環境にやさしい乗り物のシンボルとしてあります、なのに、京都議定書の国ニッポンでは、自動車優先という過ちをおかし、その結果、メタボ蔓延による医療費高騰や渋滞による緊急車両到着遅延や経済停滞、大気汚染、ヒートアイランド、道路の損壊、地域の安全の破壊等、極めて強い害をまき散らしています。
これらのほとんどは、自動車から自転車への人々の乗り換えで解決できる問題なのにも関わらず、です。
先進諸国ができている自転車インフラ整備が、なぜ日本でできていないのか?それは、単に、地域の魅力を高めるために自転車を活用しよう!という意識の高さ、低さの違いだけで、日本はまだまだそれを高められる見込みがたくさんあり、いつまでも自転車インフラ後進国のままで居てはならない、ということを示しています。
すべて善良な市民は、もっともっと自転車インフラ整備を行政に繰り返し要請しつづけてよいものでしょう。自転車への乗り換えは、地域を安全にし、大気汚染を減らし、渋滞を減らし、ヒートアイランドを抑制し、人々の健康を高め、観光資源を増やし、街のコンパクト化を促すことによって、地域の持続可能性を高めるのですから。