June 06, 2015

常識や固定観念に囚われない

必要は発明の母などと言います。


何かの必要に迫られて、どうにかしようと考えたり、あれこれ工夫したりする中から、画期的な発明が生まれることがあるのは間違いないでしょう。ただ、大多数の人は必要と感じさえしなかったものが、発明されてみると便利だったりすることもあります。

常人が考えもつかないような点に気づく感性とか、ひらめき、発想、着眼点、創造力といった能力が、何かのきっかけで発揮されて、発明やイノベーションが生まれることもあります。そのきっかけは、従来のものに対する不満だったり、不便さだったり、不都合や不安、不足、不備、不合理、不経済だったりするかも知れません。

もっと何かを改善したい、良くしたい、あるいは事業として成功させたいといった情熱が発明やイノベーションを生むこともあるでしょう。自転車に関しても、古今東西、そうした情熱を持って不満や不便さを解消しよう、イノベーションを起こそうとする人たちがいます。

そうした人たちのおかげで、自転車も誕生以来、進化を続けてきました。古くは、チェーンの採用や空気入りタイヤの実用化から、近年で言えば電動アシスト機構など、画期的な革新が生まれました。製品としては、かなり成熟したようにも思えますが、さらにイノベーションが起こせないかと考える人たちが絶えません。

そのような試みについては、これまでにも数多く取り上げてきました。ただ、正直言って玉石混交です。目新しさやユニークさに驚かされるものも多いですが、そのほとんどは広く普及することはありません。独創的であったとしても、それが必ずしも、多くの人に評価されるほどの価値があるとは限りません。

自転車の分野でなくても、イノベーションを起こすのは簡単なことではありません。たくさんの挑戦の中から生まれるわけで、挑戦する人の多さは重要な要素です。しかし、ユニークさ、新しさ、あるいは発想の奇抜さを追い求めるあまり、なかには突拍子もないもの、思わず笑ってしまうようなものも生まれてきたりします。

Treadmill Bike

その典型的な例が、この、“Treadmill Bike”かも知れません。ずいぶん昔に取り上げましたが、私も、ひと目見て笑ってしまった覚えがあります。“Treadmill”というのは、スポーツジムなどに置いてあるトレーニング機器で、その上を歩いたり走ったりする、ウォーキングマシンやランニングマシンなどと呼ばれる機器です。

室内でウォーキングやランニングでトレーニングする、おなじみの装置です。床が動くような形になっているので、その場で歩いたり走ったりすることが出来まるわけですが、そのトレッドミルを自転車にしてしまおうという斬新な発想です。歩いて乗る自転車と言ってもいいかもしれません。



ペダルではなく、歩いたり走ったりする力で自転車を動かします。一見、画期的な気がしますが、よく考えると、それなら普通に歩いたり、走ったりすればいいわけで、意味がありません(笑)。動画を見ればわかる通り、普通に歩いたり、走ったりするほうが、よっぽど速いところが笑えます。

余計に負荷がかかるぶん、トレーニングになると言えなくもないですが、わざわざこれに乗らなくても、歩いたり走ったりしたほうが、機敏に動けるでしょう。わざわざ、これに乗らないほうが、よっぽど便利です。これを考えた人も、半分ジョークで作ったように見えます。

室内で、トレッドミルでトレーニングするのは、景色も変わらず退屈で飽きるので、外を移動できるトレッドミルにしてしまえば、という発想だったのかも知れません。しかし、わざわざこんな機器を作らなくても、普通に歩いたり、走ったりすればいいじゃないか、というオチです。



さて、私はこの“Treadmill Bike”を過去に取り上げて知っていましたので、こちらの、“Lopifit”を最初に見たとき、また同じことを思いついた人がいたんだな、くらいにしか思いませんでした。しかし、こちらはジョークではなく、実際に販売しています。値段は、1千899ユーロです。

動画を見てみると、実にスムースな動きです。同じ歩くよりもスピードが出ます。これならば、わざわざこれに乗って歩く意味が出てきます。同じ歩く動作でも、大幅な時間短縮になります。あるいは同じ労力で、遠くまで行けることになるでしょう。

LopifitLopifit

これは自転車大国、オランダの会社が販売しているところを見ても、大真面目ということがわかります。実は、電動アシストを使って、歩く力を増幅させて、スピードが出るようになっているのです。もちろん、自転車のスタンダードを変えるようなものではありませんが、立派な乗り物となっています。

自転車ではなく、徒歩がいいけれど、もっと速く、あるいは遠くまで行きたいというニーズもあるでしょう。長時間自転車に乗るとサドルでお尻が痛くなるので、乗りたくないという人もあるに違いありません。これならば、スカートでも乗れると、女性に歓迎されるかも知れません。



スカートでなく、日本の着物のような裾の長い民族衣装でも乗れます。これは、服装の関係で乗れない人には朗報となる可能性があります。アラブ人やイスラム教徒などの衣装でも乗れます。実際にカタールのドーハなどを販売拠点として中東に展開しています。

LopifitLopifit

動画を見ると、案外実用的に見えてきます。この“Lopifit”を作った人が、過去に“Treadmill Bike”という事例があったことを知っていたのかどうかは定かではありません。もし知っていたとしても、多くの人のようにナンセンスと笑い飛ばしはしなかったのは明らかです。



果たして、これがどのくらい売れるのかはわかりません。ユニークな乗り物ではありますが、やはりニッチな製品なのは間違いなさそうです。ただ、全くナンセンスな乗り物だと思っていた“Treadmill Bike”が、一気に実用レベルに進化したようにも思えます。

遠くまで散歩したい人だけでなく、例えば都市部での移動などにも重宝するかも知れません。自転車だとスーツのお尻が擦れるとか、型崩れするなどと気にする人も、これなら乗るかも知れません。そう考えると、案外、歩く自転車もアリなのかなと思えてきます。

LopifitLopifit

発明は必要や不満や不便など、いろいろな動機から生まれてきます。同時に、普通の人ならナンセンスと笑うようなものでも、可能性を追求する着眼点や探究心、常識や固定観念に囚われない考え方や広い視野、実用的な製品にするまで諦めない粘り強さなども、重要な要素なのかも知れません。




年金機構なんて名前は変わっても、ほとんど旧社会保険庁の人ですから、ダメなのはわかっているんですが..。

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