June 15, 2015

ついでの行動を活かす仕組み

何をするにも、その効率は気になります。


同じ効果を得るのに、少しでも手間が省けたり、時間が短縮できれば効率があがり、そのぶん得をした気分になります。工場の製造過程とか、オフィスの事務作業などなら、それがコストにも直結します。直接、金銭的な価値に結びつくとは限らない、個人の生活でもそれは同じでしょう。

同じ方向へ出かけるにしても、何かをついでに済ますことが出来れば、二度手間にならず、時間を効率的に使うことが出来ます。自転車で出かけようとしたら、家人に、ついでに何かを買って来てと頼まれ、それが効率的なのは明らかなので断わる術がない、なんてこともあるでしょう。

TringTringTringTring

例え、家の中を移動するような些細な行動であっても、ついでにこれも置いてこようとか、ついでにこれもして来ようなどと無意識に考えていたりするのではないでしょうか。たいした違いがなかったとしても、使う労力が減らせたり、無駄な時間を使わなくて済むよう、効率よく行動しようとします。

生物として考えても、生きていく上での効率のいいほうが生存の確率が高くなるわけで、本能的な部分に組み込まれているのでしょう。なるべく効率が良くなるように進化してきたわけですし、少しでも、効率がいいようにと考えるのは、言ってみれば自然の摂理なのかも知れません。

ましてや、ついでの行動が直接利益を生んだり、感謝されたり、何かに貢献するとなれば、多くの人がそうした行動をとるのではないでしょうか。そんな当然の選択、あるいは自然な気持ちを上手に活かして、ビジネスの仕組みを作ろうと考えているのが、“TringTring”です。

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市民が自転車に乗って移動しているのを利用し、ついでに荷物を配達してもらおうという仕組みです。配送したい商店と、届けてもらいたい消費者、それとサイクリスト、もしくは自転車に乗って移動している市民をつなぐことで、そのニーズを満たし、ビジネスとして確立させようと考えています。

お客の注文を受け、商品をデリバリーしたい商店が、スマホのアプリを使って、配送の依頼を出します。あらかじめ登録してある市民は、自分がちょうど自転車で移動中だったり、方向が同じだったり、時間に余裕があるなど、受けられる条件だったら、その依頼に応じます。

荷物を預かった市民、サイクリストは、届け先に荷物を届けることで、5ユーロの報酬を受け取ることが出来ます。ついでに荷物を運んであげるだけで、ちょっとしたお小遣い稼ぎになります。商店は、配達のための人員を常時雇用しておく必要がありません。お客も素早く荷物を届けてもらえて便利です。

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一連の仕組みは、スマホのアプリ上で完結しています。取次ぎにコストがほとんどかからないのがポイントです。ネットが普及し、スマホを常時持ち歩く人が増えたために成立するビジネスモデルと言えるでしょう。現在、オランダのアムステルダムで実証実験が行なわれています。

どのみち自転車で移動している市民がいるわけですから、それを上手く配送に使えれば、商店にとっても、自転車に乗る市民にとってもプラスになります。商品を購入するお客にとっても、配送料が安く済んだり、素早く届けてもらえるなどメリットが生まれるわけで、うまい仕組みと言えるでしょう。

たまたま自転車で移動している市民だけでなく、積極的に依頼に応じる人も出てくるかも知れません。例えば、単に運動不足解消とか、ダイエットのために自転車に乗っているなら、目的地はどこでもいいでしょう。漫然と走るよりも、報酬を受け取れるなら、そのほうがいいと考える人もあるに違いありません。

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自転車での配送のアルバイトとは違って、短時間でも働けることになります。一件ごとなら、疲れたり、何か用事が出来たら、すぐやめることも可能です。配送のアルバイトより報酬の単価は低いかも知れませんが、融通がきくのは利点でしょう。どのみち移動するならば、その移動を効果的に使わない手はありません。

中には不届き者がいて、途中で品物の一部を食べちゃう(笑)ヤツがいないのだろうかとか、非衛生的な人がいたりしないのだろうか、などと下世話な心配も浮かびますが、そこは成熟した市民社会が成立している先進国ならば、おそらく問題ないのでしょう。

スマホを通じて決済や報酬の支払いなどが完結するため、金銭的なトラブルは防げるものと思われます。登録制で、あらかじめ身元がわかった人ですから、無責任に途中で配達を放棄したり、荷物が盗まれるといったトラブルを心配する必要もないのでしょう。

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自転車王国オランダのアムステルダム市民は、環境意識が高いということもあると思います。この取り組みによって少額の金銭的な損得より、トラックでの配送を減らし、環境負荷が小さくなることの社会的なメリットに、大きな価値を見出すということもあるに違いありません。

日本では、トラックの運転手のなり手が減り、物流分野の人手不足が深刻になっていると言います。そのことが配送コストの高騰につながる恐れもあります。この仕組みは、言わば、これまで使われていなかったリソース、見逃されていた配送力の掘り起こしであり、そのメリットは大きいでしょう。

近くにいる人に即、配送を頼むことが出来るため、60分以内に配達できます。これなら、今日の夕食の買い物でも頼むことが出来ます。忙しい現代人、都会の住人なら、配送料を負担しても使いたい人は少なくないはずです。自分であちこち買い物に行くのが困難な高齢者などにも便利な仕組みです。

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この仕組み、まだ実験段階ですが、すでに登録する小売店なども増えてきていると言います。今後の動向が注目されます。ただ、仮に上手く稼動したとしても、実験の場所が、自転車で移動する人の多いアムステルダムだという点は考慮する必要があるでしょう。どこでも成立するとは限りません。

自転車に乗る人が少ない都市だったら、配送力のサプライが不足する事態も考えられます。坂が多い街なら、登録しようと考える人は少なくなるかも知れません。市民のモラルの低い場所であれば、いろいろと問題が起きることも考えられます。

すぐ配送してほしいというニーズや、それにどれほどの価値を見出すかも、国や場所によって変わってくるでしょう。失業者が多く人件費が安いとか、スマホの普及率が低いとか、商習慣や流通環境など、さまざまな要素によっても、成り立つ都市と、そうでない都市に分かれる可能性がありそうです。

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昨今のネットやスマホの普及によって、成り立つようになった仕組みですが、今後このようなスタイルが、世界的に広がるのかはわかりません。しかし、世界的にも自転車の活用に関心が高まる中、少なくとも、今後私たちの生活が変わっていく可能性の一つとは言えるでしょう。

無駄をなくしたり、時間を節約したり、今まで使っていなかったものが有効に使えること、効率がアップすることは、私たちにとって気分のいいことです。今までそうだったように、世の中が今後も効率を高めていくのも間違いないでしょう。その意味で、こうした仕組みが出てくるのは、自然な流れと言えるのかも知れません。




関東も梅雨入りして一週間、そろそろ雨の日も増えてきそうです。毎年の事ながら、ちょっと憂鬱な季節ですね。

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