自転車に乗る時、アイウェアを使う人は多いと思います。
サングラスやスポーツグラスなど、アイウェアは、まず走行中にホコリや飛び石、虫などが目に飛び込むのを防ぎます。目にゴミが入れば痛いだけでなく、目が開けられなくなって前が見えなければ危険です。走行時の風圧に直接さらされるのを防ぎ、目が乾くなどのトラブルを防ぐ役割もあります。
紫外線から目を保護するのも重要です。夏場は道路からの照り返しも強く、長時間自転車に乗っていると、紫外線によって目は大きなダメージを受けます。夕方になると目が充血している人はいないでしょうか。スキー場でサングラスやゴーグルをしないと、いわゆる雪目になるのと同じです。
目が長時間直接紫外線にさらされると、角膜の表面が傷つきます。日常生活で短時間浴びるくらいなら大丈夫ですが、ツーリングなどに行くと、路面からの照り返しも含め、かなりの紫外線にさらされることになります。雪目だけでなく、角膜炎や白内障、黄斑変性症などの原因になると言われています。
ちなみに、紫外線が強いのは夏だけのような気がしますが、そうではありません。紫外線A波(UVA)は4〜8月がピーク、紫外線B波(UVB)は5〜8月がピークだそうです。曇りの日でも、時間帯によっては意外に紫外線が多く降り注いでおり、注意が必要です。
夏の強い日差しや強い照り返しによるギラつきを抑えることで、路面の状況や凹凸などを把握しやすくしたり、まぶしさによって走行中に集中力が欠けるのを防ぐといった役割も見逃せません。まぶしいからと目を細めていたら、目に入る情報も少なくなってしまいます。
市販されている自転車用のアイウェアだけでも種類は多く、レンズの色もいろいろあります。紫外線のカットと色は関係ないと言いますが、色のついていないクリアなものだと、まぶしさを抑えることは出来ません。色つきのものも、グレー系やブラウン系、イエロー系、ブルー系などいろいろあります。
調光レンズというのもあって、光が強いと色が着き、夜間などはクリアになるので、暗くても見やすくなります。ただ、色が変化するのに1分程度時間がかかります。いくつかの色のレンズがセットになっており、必要に応じて交換することの出来るものもあります。
天気や場所、時間帯などに応じ、取り替えて使っている人もあると思いますが、問題はトンネルや日陰になっている場所へ、急に入った場合でしょう。調光で色が変わるのにも時間がかかりますし、もちろん、いちいち止まって取り替えるわけにもいきません。
さて、そんな場面でも便利なアイウェアが開発されました。必要に応じて、瞬間的に色を変えることが出来ます。実は、このアイウェア、液晶パネルに使うシャッター技術を応用したものです。アメリカ軍の特殊部隊用に開発されたものを一般に販売するため、クラウドファンディングサイト、“Indiegogo”で資金調達しています。
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CTRL ONE”と名づけられたこのアイウェア、トンネルや陸橋の下など、日差しが遮断されて暗い場所を通る時に便利で、安全に走行できます。手動での切り替えは、0.1秒です。センサーもついており、暗さに応じて自動で切り替えることも可能です。内臓のバッテリーで動作します。
なるほど、これは便利そうです。トンネル手前で、走りながらサングラスを外せばいいだけという考え方もありますが、その動作をしなくてすむぶん安全になります。当然ながら、暗い場所で虫やホコリなどが目に入らないとも限りません。あっという間に、目標額の2倍以上が集まったのもうなづけるところでしょう。
もちろん、メガネにまで電源が必要となり、ハイテク化する時代かと嘆息する向きもありそうです。1時間で充電できて、50時間動作するとは言え、いちいち充電するのは面倒です。トンネルや日陰の部分を通行する時だけ注意すれば、後は調光レンズやレンズ交換でも十分と考える人もあるでしょう。
しかし、アイウェアの進化は液晶シャッターを取り付けるだけには留まりません。もっとほかにもメガネに新しい機能を搭載できないかと考える人たちがいます。こちらもクラウドファンディングサイト、“Kickstarter”で資金調達を試みている、“
Vufine”です。
これは、ハンズテリーで使えるウェアラブル・ディスプレーです。 手持ちのメガネにマグネットで簡単に装着することが出来、視界の片隅に、情報や動画を表示することが出来ます。例えばスマホと接続して、アプリのナビ画面を表示すれば、手元を見ることなくナビが確認できます。
動画を撮影するカメラと接続すれば、リアルタイムに画像を確認出来ます。例えばヘルメットなどに装着したカメラで後方を撮影し、その画像を投影すれば、常にメガネの中で、後方を確認できるわけです。後ろを振り返ったり、手元を見る必要のない、言ってみれば、デジタル・バックミラーも実現可能です。
これはウェアラブル・コンピュータではありません。ディスプレーだけなので、何らかの機器と連動させることになりますが、そのぶんグーグル・グラスなどのウェアラブル・コンピュータと比べて、10分の1程度の価格となっており、手軽に使えます。
ナビとして、バックミラーとして、あるいは他の用途で使うにしても、その画面を注視してしまうと脇見になってしまいます。一方で、視界の端に画面が表示されるので、手元を見る必要がなく、前方を見たまま確認出来ます。適切に使えば安全性は向上すると言えるでしょう。
アナログな自転車やアイウェアの分野に、どんどんデジタルが入ってくることに、抵抗を感じる人もありそうです。ただ、後方を振り返らずに周囲を確認できるのが便利だったり、スマホで情報を確認したいこともあります。自転車用ナビも使ってみれば便利ということもあるでしょう。
“CTRL ONE”にせよ、“Vufine”にせよ、使い方によっては安全に寄与します。人によって好みは分かれるでしょうが、新しい技術が生まれれば、それは製品に反映されていきます。自転車用のアイウェアにハイテクの波が押し寄せるのも時代の変化であり、自然な流れなのかも知れません。
関東でも場所によって激しい雨となっています。来週は台風も近づいてくるようですし、しばらく雨が続きそうです。
液晶シャッターの眼鏡ですが、太陽電池で駆動できたら面白いと思います。ソーラー電卓と比べて面積は大きいですが、電圧は必要だが電流は不要の液晶、可能性はあると思います。光エネルギーを得られる明るいところで黒くすればよいので、蓄電機能も基本的には不要ですし。むしろ、透過型液晶では、普通は偏光板(透過率50%になる)は必須のように思えるので、暗いときの透過率が気になります。
視界への画像・データ表示は、その面積や表示内容に一定のルールが必要なように思います。バックミラー程度の比率なら問題ないでしょうが、視野いっぱいにナビ情報を重ねるなどの表示は、問題があるように思います。走行と関係のない表示(例えばTV)なども問題なように思います。日本では、一度問題になると変に厳しい規制になりがちです。安全こそ最優先ということを忘れず、上手に育ててほしいと思います。