移動手段としてはもちろん、何かの運搬にも使われますし、スポーツ、いろいろな競技用にも使われます。ベロタクシーなど商売道具になることもあるでしょうし、何かの販売に使う移動式店舗だったりします。中には、自転車を何かのアピールの手段として使う人もいます。
こちらは、ブラジルのサンパウロで、街に緑地や公園が不足していることに抗議するために作られた自転車です。自治体の整備方針に対して抗議するわけですが、市民団体やNPOなどが、そうした抗議行動をする時、よくあるのはプラカードなどを掲げてデモ行進する方法でしょう。
しかし、プラカードやシュプレヒコールをあげて行進するだけでは、ありふれています。その時は振り返る人もあるでしょうが、必ずしも印象がいいとは限らず、市民の記憶にも残らないことが多いのではないでしょうか。サンパウロで抗議活動をした“
Coletivo BijarRi”というアート集団は、少し違った方法をとりました。
3輪のカーゴバイクを改造し、カゴに花を飾り、パラソルをさし、格納式のベンチを取り付けました。この改造した自転車で訴えたいのは、街にちょっとしたスペースでもいいから、市民が集まって、休んで、おしゃべりすることが出来るような、木陰になった場所があってもいいということです。
自転車にしたのは、そのまま移動できて、あちこちを回ってアピールするのにも便利だからです。自転車でベンチと緑を移動させ、その場にちょっとした憩いの場所を出現させることが出来ます。ベンチを広げ、木陰で憩えるようなスペースを実際に作り出せ、その楽しさを表現できるわけです。
確かに、言葉や文字で「公園や緑を」と訴えたり、「市民が集まって座り、おしゃべり出来るような、ちょっとした木陰」と言うより、ビジュアル的・感覚的に理解できて、実感がわき、よほど説得力があるのは間違いないでしょう。うまい使い方だと思います。
ちなみに、アピールは別にしても、この自転車、なかなかユニークです。それこそ大きな広場とか競技場などの公共施設、広い公園などで貸し出す自転車としても使えそうです。臨時のイベントにも日陰とベンチを提供できますし、設置や撤去も、自ら移動してもらえば手間がかかりません。
大きな公園などで、サイクリングコースで貸し出すレンタル自転車とは別に、移動式ベンチのような用途に貸し出してもいいでしょう。高齢者を乗せて散策する手段にもなりますし、好きな場所にベンチを広げ、お弁当を食べたり出来ます。あまりスピードが出ないようにしておけば、歩行者とも混在しても危険はないでしょう。
こちらの自転車は、アメリカ・シカゴの広告会社が、“Bike to work”の
プロモーション用に製作した自転車です。“Bike to work”は毎年行なわれている、文字通り、自転車で仕事に行こうと呼びかけるキャンペーンです。自転車で職場に行く日なども設けられています。
日本で、職場まで自転車通勤すると言うと、電車から自転車に乗り換える例も多いと思います。しかし、アメリカでは、一部を除いてクルマで通勤するのが普通です。それを自転車に置き換えれば、温暖化ガスが削減され、環境負荷を減らす直接的な行動となるのです。
毎年行なわれて広く呼びかけられているので、“Bike to work”はおなじみのフレーズです。ただスーツを着て自転車に乗っていても、当たり前すぎてアピールしません。しかし、机のついた自転車にスーツを着て乗っていれば、さすがにインパクトがあります。しかもデスクの上にはパソコンまで載っています(笑)。
これは道行く人たちの目をひきます。“Bike to work”をアピールしているのも、すぐわかります。もちろん、自転車通勤しながら仕事をするわけではありませんが、机つきの自転車という突拍子のなさにユーモアがあり、誰もが笑ってしまう楽しさがあります。これも上手いアピールと言えるでしょう。
こちらは、やはりカーゴバイクにガラスの箱を載せ、中に猫を乗せた自転車です。猫がガラスケースの中でくつろぐ様子が外からよく見えます。この自転車、オランダの“Poopy Cat”という会社の創業者、Thomas Vles さんが製作し、オランダ・アムステルダムから、イギリス・ロンドンまで
ネコを乗せて移動しました。
この会社、箱の中にあるダンボールのネコ用のトイレやオモチャなどを作っている会社です。ロンドンでの出店にあたり、プロモーションをしながら自転車で行くことを考えつきました。ガラスケースですから、ネコが沿道の人々の目にとまるのは間違いありません。
ネコのほうは乗っているだけなので、いたってマイペース、いつもと変わらない様子ですが、行く先々で人々が集まってきては、ネコのかわいさに癒され、笑顔になったのは言うまでもありません。ネコ好きでなくても、思わず見てしまうでしょう。
自転車だと、人が集まってくれば、すぐ止まって見せることが出来ます。沿道の人との距離も近いですし、会話も出来ます。場合によっては、人が集まるような場所へ入っていくことも可能です。クルマでは出来ないプロモーションが可能と言えるでしょう。
一説によると、犬好きの人が好きなのは自分の犬だけ、ネコ好きの人が好きなのはネコ全般だと言います。だまっていても、ネコ好きの人にアピールし、通るだけで沿道の人へのプロモーションになるのは明らかです。さらに、話題となってマスコミにも取り上げられました。
ネコをガラスケースに乗せて自転車で旅行する人なんて、これまでに聞いたことがありません。巷で話題になっていれば、マスコミは、宣伝になってしまうとわかっていても取り上げるでしょう。何度も同じ方法は通用しないとしても、なかなか上手い方法です。
普通にマスメディアを使った宣伝をしようと思えば、大きな費用がかかります。中小企業やスタートアップには、なかなか使えない金額です。しかし、これなら、せいぜい自転車とその改造代くらいの費用で、大きな宣伝になる可能性があります。うまくマスコミが取り上げてくれれば、宣伝としての費用対効果は抜群です。
世界には、上手に自転車をプロモーションに使っている人がいるものです。一方、日本で何かアピールするために自転車を使うと言えば、のぼりを取り付けたママチャリで、国道を何人かでリレーしながら、日本縦断するのが定番です。それしかないのかと思うくらい、同じパターンです。
たまに、自転車にキャンプ用品を積んで、野宿しながら日本一周という人もいたりしますが、バリエーションとしては、その程度でしょう。私はブログ柄、自転車のニュースをよく見ていますが、多くはローカルニュースの隅に小さく載るくらいで、話題にもなりません。
もちろん、欧米と日本では自転車文化も環境も違うので、そのまま当てはまるとは言いません。ただ、もう少し工夫があってもいいように思います。長い距離を、鉄道やクルマでなく自転車で行くというのは、もはや珍しくありません。アピールするなら、何か自転車そのものに工夫してみるのも面白いのではないでしょうか。
雨の日が多くなっています。さらに、この時期としては台風も多く、まだまだ雨が続きそうで憂鬱ですね。