August 08, 2015

自ら防ごうとする人を助ける

飲酒運転は法律で禁止されています。


クルマだけではなく、自転車でも違反です。酒に酔って自転車に乗り、検挙されて有罪となれば、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金が課せられます。もともと違反ですが、今年6月の改正道路交通法の施行で、あらためて認識した人も多いのではないでしょうか。

自転車だったら、少しくらい飲酒して乗っても大丈夫だろうと考える人は少なくないようです。しかし、飲酒は運動能力や平衡感覚などを著しく低下させますから、非常に危険で事故の原因にもなります。悪質な違反として、法改正施行以後、地域によっては自転車の飲酒検問も行なわれているようです。

ALCOHO-LOCKALCOHO-LOCK

そんな、自転車の飲酒運転を防止しようと、新たなアイテムが開発されました。その名も「ALCOHO-LOCK(アルコホロック)」、東京の品川で、自転車ショップ・サイクランドコーフーを運営している(有)光風輪業商会という会社による『世界初のアルコール検出機能付き自転車ロック』です。

たしかに、自転車用の飲酒運転防止装置なんて聞いたことがありません。クルマと違ってエンジンが無いので、酔って乗らせないためには、ロックを解錠できないようにするくらいしかありません。しかし、飲んで帰って来たので、乗らずに自転車を押して帰ろうということもあるでしょう。

このロック、スマホを使って操作・解錠します。ロックに息を吹きかけ、アルコールが検出されると、スマホに自転車を押して歩いて帰るように注意を促すメッセージが表示されます。ただロックは開きます。押して帰るにも、ロックが開かないと困るからです。

ALCOHO-LOCKALCOHO-LOCKALCOHO-LOCK

その代わり、あらかじめ登録してあるパートナー(家族・恋人・友人など)のスマートフォンに、検出されたアルコール濃度数値と検出場所がアラートとして送信されることになります。つまり、パートナーの説得によって、飲酒運転をやめさせようというわけです。

説得だけでなく、大切な人の存在を思い出すことが、危険な飲酒自転車運転の抑止につながるとの考えだそうです。このロック、スマホを使った今どきのデジタルなアイテムですが、実際に飲酒運転を抑止するのは、ずいぶん情緒的で、感情に訴える方法なのがユニークです。

自転車店コーフーは、アレックスモールトンの取り扱いで知られたショップですが、海外の企業と共同で開発しています。飲酒運転が一番増える時期でもある、年末の忘年会シーズンを目がけ、年内の一般販売開始を目指しています。価格は税別3万〜4万円程度になる見込みだそうです。

ALCOHO-LOCK

面白い製品ですが、このロック、どのような人が買うのでしょう。飲んで帰るお父さんを心配する妻や家族が買って使わせるのでしょうか。飲んで帰ると、自転車の飲酒運転のことなど、すっかり忘れてしまう人が、家族などの協力を得て、思い出そうというのでしょうか。

ただ、このロックを使うことになったとしても、アラートを送信しないようにすることは可能でしょう。飲んで帰る予定の日には、もう一つロックを用意しておくようなことも考えられます。結局、本人の自覚、自分で防ごうと思わなければ、このロックを使う意味はなくなります。

それならば、帰りに一杯飲むことになった時、普通のロックの鍵を仕事場に置いてきてしまうなど、乗ろうにも乗れないように(または困難に)するほうが間違いありません。押して帰れませんが、そこは諦めます。酔っているのに自制して、乗れるのに乗らないで押して帰るというのは、かなり難しいことだからです。

ALCOHO-LOCK

よく、「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。」と言います。「乗るなら飲むな。」は意志が強ければ可能でしょう。飲まなければ意志も保てます。しかし、「飲んだら乗るな。」には無理があります。乗るまいと思っていても、飲んでしまえば、そんな決意はどこかへ吹っ飛んでしまうのが酒の力です。

どれだけ厳罰化しても、飲酒運転がなくならないのが、それを証明しています。学校の先生や、地方自治体の職員など、懲戒免職になるような立場の人でも飲酒運転が後を絶ちません。それどころか、取り締まるべき警察官ですら、飲酒運転で捕まっています。「飲んだら乗るな。」は無理と考えるべきです。


一斉取り締まり陸自隊員、飲酒運転警告で処分 新発田駐屯地

酒気帯び運転:50歳高校教諭を逮捕 福岡県警

飲酒運転、妻に身代わり頼んだ自衛官に有罪判決 地裁浜松支部

飲酒運転、身代わり依頼の大学生逮捕 豊橋署

飲酒運転のトラックが歩道に乗り上げ、中学生をはねる

飲酒運転の警部補2人、懲戒免職と戒告処分に 福岡県警

無免許運転の事務職員免職 飲酒運転の教頭停職 道教委、懲戒処分発表

飲酒運転事故:職員を停職処分 和泉市 /大阪

市議の男が飲酒運転で電柱に衝突、車両を放置して逃走

まだ減らない沖縄の飲酒運転 半年で744件摘発

警視庁巡査を懲戒免職 千葉の飲酒事故で身代わり依頼

ひき逃げ被害者の女、飲酒運転で逮捕

※ごく最近のものだけでも枚挙に暇がありません。これはごく一部に過ぎません。


そう考えると、パートナーの電話やメールでの説得で防げると考えるのにも無理があるでしょう。押して歩いて帰れるのは、親切な仕様にも思えますが、むしろ不要です。しらふのうちにロックしてしまったら、意地でも開かないようにしたほうが、意味があるのではないでしょうか。

もちろん、そうすると、無理やり解錠できてしまえば無意味とか、技術的な問題が出てくるかも知れません。クルマ用の飲酒運転防止装置、インターロックなどでも同様の議論になります。改造するなど、何らかの方法で解除する人が出てくるので、いたちごっこで結局意味がないとする意見が出ます。

装置が高価になってクルマの価格が上がってしまい、お酒を飲めない人にまで負担が及ぶのは不合理だと主張する人もいます。私は、それは違うと思います。装置は後付けにして、飲酒運転で摘発された人への罰則として、装着を義務付ける方法もあるでしょう。

アメリカのどこかの州では、そのような措置を導入していたと思います。装置の装着を義務付けられた人が、それを解除するというのは、また別の問題です。そのような確信犯や懲りない人は、装置を監視したり、定期的にチェックして防ぐ方法などもあるはずです。

すでに複数のインターロック装置が開発され、簡単には改造できないような種類もあるのですから、どんどん導入すべきです。これだけ悲惨な事故が絶えないのですから、全車に標準装備にしてもいいくらいです。そうすれば大量生産されて、価格も相当安くなるに違いありません。

厄介なのは、自分は酒が強く、酔って運転しても事故を起こさないと考えるような、浅はかな人です。自分は大丈夫だからと、あらかじめ改造して、装置を解除しておこうと考えるかも知れません。そのような人の飲酒運転を防ぐのは難しいかも知れませんが、それはまた別の話と考えるべきでしょう。

飲酒運転の常習者や、自分は平気と過信して飲酒運転した人が悲惨な事故を起こす例が多数報じられているのに、自らにも起こりうると考えられないような人もいます。その対策も必要ですが、多くは、飲んでしまったために判断力が欠如してしまい、飲酒運転してしまう人でしょう。まずそのような人をなくすべきです。

飲酒運転させないついでに言うならば、最近は自動ブレーキとか、蛇行や居眠りを監視する装置とか、ハイテク装備がクルマに搭載され始めています。それをやるならば、むしろ自動スピード制限装置を搭載すべきではないでしょうか。住宅街の狭い道路とか、スクールゾーンなどで、スピードを出せないようにする装置です。

自動運転の実験が話題になっているくらいですから、出来ないはずがありません。GPSやセンサーなどと連動して、スピードを出すと歩行者が危険になる道路を通ったら、強制的にスピードを落とさせる装置です。スクールゾーンなどは、登下校の時間に限って制限する手も考えられます。

ただ、そうした装置は、ドライバーの不評、不満をかうことがわかっているためか、一向に開発されません。メーカーは開発出来ても出来ると言いません。クルマメーカーは、もっと社会的責任の大きさを自覚して、事故を減らす装置の普及を目指す姿勢を示すべきではないでしょうか。

飲酒運転についても、やろうと思っても出来ないような物理的な仕組みを、もっと開発し、搭載していくべきだと思います。全車標準搭載が理想ですが、せめて、必要な人はオプションで装着できるようにし、装着したら、飲酒運転をするのが相当困難になるようにすべきではないでしょうか。

飲酒運転撲滅警察官ですら、いったん飲んでしまったら、乗らないよう自制できないのが飲酒です。それを考えたら、オプションを装着しておこうと考える人もあるでしょう。飲んでしまえば、知らずに運転してしまうかも知れないことに気づけば、用心のために装着しておいたほうがいいと考える人も少なくないに違いありません。

自転車用の飲酒運転防止装置も同じことだと思います。「ALCOHO-LOCK」のような装置は、アルコールを検出したら絶対開かないようなロックのほうが意味があると思います。飲んでしまった後に、飲酒運転をしてしまわないように、自分で防ごうと考える人をターゲットにすべきではないでしょうか。

どのみち、自分で防ごうと思わない人は、そのようなロックは使いません。使わされても回避するでしょう。自分で防ぎたいと思う人の役に立つよう、極力、飲酒運転が困難になる仕様にすべきではないでしょうか。飲酒を検知しても解錠してしまう装置は親切なようでいて、実は意味がないような気がします。

飲んでしまって自制が効かなくなれば、パートナーに言われようと、乗ってしまう人は乗ってしまうに違いありません。一方、それを思いとどまることが出来る人ならば、わざわざ飲酒を検知するような大掛かりな装置は必要ありません。飲んで帰る時に、あらかじめ家族などに伝えておけばすむでしょう。

平時の決意にもかかわらず、飲めば、わからなくなってしまうのが飲酒とするならば、酔った状態では解除・解錠が困難な、物理的に防止するような方法が必要です。クルマでも自転車でも、それを普及させていくことが、悲惨な飲酒運転による事故を防ぐために、とるべき道だと思います。




東日本の猛暑は一段落したようです。ようやくといった感じでしょうか。それでも、まだ相変わらず暑いですが..。

このエントリーをはてなブックマークに追加

 デル株式会社


Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。



 楽天トラベル






この記事へのトラックバックURL

 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)