September 04, 2015

全天候型が珍しくなくなる日

ベロモービルと呼ばれる自転車があります。


クルマのようにキャビンを持った自転車です。初めて見た方は斬新に思えるかも知れませんが、自転車のジャンル、一つのカテゴリーとして以前からあります。過去にも何度か取り上げています。日本では見ませんが、欧米などでは愛好者が一定程度存在しており、通勤など実用に使っている人もいます。

ただ、トライク(3輪の自転車)やカーゴバイク(荷物運搬用の大きな荷台や箱のついた自転車)など、日本では見ないような自転車が普通に走っている欧米諸国でも、さすがに一部に限られており、広く一般的に普及しているわけではありません。マイナーな分野と言って差し支えないでしょう。

GinzVelo

ベロモービルにも、いろいろ種類がありますが、そのスタイルは、多くのモデルに共通する部分があります。まず、なんと言っても全体を覆うフェアリング、クルマのようなキャビンを持つのが見た目の大きな特徴です。一目瞭然ですが、これによって、雨でも濡れずに済むというメリットがあります。

それだけではありません。このキャビンは多くの場合、流線型のフォルムになっており、走行時の空気抵抗を劇的に減らす効果があります。自転車にとって、空気抵抗はパワーの最大のロスであり、スピードを出す上での大きな障害となります。

アメリカの砂漠地帯の道路などで、人力による最高速度を競うレースが行なわれますが、そうしたレースで用いられるのは、決まってベロモービル型です。人間がむき出しになっている自転車では勝負にならないほど空気抵抗が違います。人間の限られた力を活かすために、空気抵抗は決定的に大きな要素なのです。

GinzVeloGinzVelo

キャビンがあることにも関係しますが、多くはリカンベントがベースとなっています。リカンベントも日本で見ることは少なく、知らない方も多いですが、昔からある自転車のカテゴリーの一つです。その名が示すように、仰向けのような姿勢で乗るのが特徴です。

前輪より前にペダルがある場合が多く、寝そべったような姿勢でペダルをこぎます。実は、このほうがペダルに力が入るのです。そのため、普通のロードバイクとリカンベントで比べると、リカンベントのほうがスピードが出ると言われています。

ロードレースにリカンベントが出場すると、リカンベントのほうが速くて有利になってしまうので、今では多くの公式レースで、リカンベントでの出場が禁じられています。馴染みは薄いかも知れませんが、それほど、人間の脚力を活かせる乗車姿勢でもあるのです。

GinzVeloGinzVelo

加えて最近は、電動アシスト機構が搭載されることが多いようです。普通の自転車より、どうしても車重が重くなりますので、電動アシストで、車重の重さをカバー出来ます。多くのモデルに、ライトやウィンカー、ストップランプなどが装備されるため、どのみちバッテリーが必要ということもあるでしょう。

ベロモービル自体は昔からあって新しくありませんが、時々、一般に向けて新しい自転車、未来の乗り物としてプロモーションされ、売り出されることがあります。ただ、どうしても使い方を選ぶため、これまで広く一般的に乗られるようになることはありませんでした。

GinzVelo

さて、いままた、クラウドファンディングサイトで量産のための資金調達を狙っているベロモービルがあります。“GinzVelo”、典型的なスタイルのベロモービルです。クルマと同じくらいの速さで走れることをアピールしている、人力と電動のハイブリッド自転車です。

ペダルをこがずに、電動だけでも走行できます。キャビンがあるにも関わらず、最高速は電動モードで時速約32キロ、脚力だけで48キロとなっています。空気抵抗の小さいベロモービルならではのスピードと言えるでしょう。また、電動だけで走行しても、一回の充電で120キロから160キロ走行できると言います。

なかなかのスペックではないでしょうか。もちろん、電動アシストで脚力と併用すれば、160キロ以上走れるわけで、航続距離的にも実用レベルになってきていると思います。スピードといい、天候を選ばないところといい、通勤などに使いたいと考える人もあるのではないでしょうか。



排気ガスを出さず、クリーンで環境に負荷をかけない乗り物である上、乗る人の健康増進にもなります。最近は自転車の活用が世界中で進んでいます。雨でも濡れず、空気抵抗が小さくてパワーのロスが少ないベロモービルは、一つの選択肢となりえますし、今後、もっと注目されるようになる可能性があると思います。

ただ、ベロモービルも、いいところばかりではありません。車幅があるので、場合によってはクルマと一緒に渋滞に巻き込まれるケースもあるでしょう。キャビンがあるとは言え、衝突安全性の面では、クルマと比べるべくもありません。普通の自転車より駐輪スペースが大きく小回りがききません。

バックミラーはついていますが、姿勢的に後方確認などがしにくいなど、視界が限られる面もあります。車高が低いぶん、特に大型車など見下ろされる形になる車両からの視認性に難があると言われています。リカンベントは一般的に上り坂に弱いとも言われています。

GinzVeloGinzVelo

雨でも濡れず、これならクルマから乗り換えてもいいと考える人もあると思いますが、使い方や住んでいる地域の環境などによって、ある程度左右されるのは間違いないでしょう。なかなか誰にでも受け入れられる自転車、万人向けとは言えません。価格が決して安くないのもネックになると思います。

量産されれば価格は下がると思いますが、それには広く普及する必要があります。このベロモービルが資金調達に成功するかは別としても、もっとベロモービルが一般的になり、ベロモービルが使いやすい環境が整備されることも必要になるでしょう。

そのあたりは、ニワトリと玉子の面があって、まだまだハードルが高いのは間違いありません。ただ、少なくともスペックは上がってきており、実用的になってきています。最近の素材加工技術の進歩や、バッテリーに使われる充電地の性能のアップなども追い風になっていると思います。

GinzVeloGinzVelo

もちろん、日本では更にハードルが高いでしょう。道路環境的に使える場所は限られ、制約があるのは確かだと思います。しかし、動画を見ていると、雨でも濡れないし、空気抵抗が小さくスピードが出るし、これはこれで便利そうという気もしてきます。

以前から、繰り返しベロモービルにスポットが当たったり、一般向けにプロモーションされたり、新たな開発や挑戦が続いています。いまだに広く普及してはいませんが、少しずつ性能も上がっています。繰り返し、市場の扉が叩かれることで、ベロモービルがブレイクする臨界点に向かっているのかも知れません。




欧州の難民問題で、一枚の写真が大きな衝撃を与えています。これまでにも多くの人が溺死したり、窒息死していた痛ましい事実があるのに、やはり感情に直接訴えた部分が大きいということなのでしょうか。

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この記事へのコメント
この種の“自転車”,40年程前の月刊「サイクルスポーツ」で見た記憶がありますが,アイディアとしては実にユニークで面白いでしょう.

ただ,直射日光の下で内部の温度が上がり過ぎるという問題も出て来るのでは?と気になります.やはりコースを指定した特定の大遊園地向きという感じがしますね.
Posted by マイロネフ at September 06, 2015 22:12
私自身、2輪のリカンベントを乗っているんですが、ベロモービルはベンチレーションと空気抵抗の妥協点と雨天の視界確保がネックだと思います。
現状ではまずは50cc程度の出力の動力を備えたペダル付きミニカーから始めた方が未来に繋がるような気がします。
Posted by 乗り物大好き at September 08, 2015 01:26
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
40年前のベロモービルについては、よく知りませんが、今のものは相当に進化していると思います。
フェアリングが曇って前が見えなくなると、走行が出来なくなりますので、何らかのベンチレーション機能が搭載されているものが多いと思います。
フェアリングの下部は開いており、全部囲まれているわけではない場合が多いと思いますし、通気孔があって開閉できれば、内部の温度調節も問題ないでしょう。
ナンセンスに思えるかも知れませんが、場所は選ぶとしても、実際にはかなり実用的なようです。
Posted by cycleroad at September 08, 2015 23:10
乗り物大好きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに弱点もあるのは間違いないでしょうね。海外では電動アシストではなく、電動だけでも走行できるタイプが多いですし、50cc程度のエンジンを積むならば、最近はバッテリーと電動モーターのほうがいろいろメリットが多いと判断されるケースが多いようです。

Posted by cycleroad at September 08, 2015 23:15
 
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