以前は、必要に応じて紙の地図を携行したり、ハンドルバッグのマップケースに入れたりしていたわけですが、自転車専用のナビゲーション機器も市販されるようになってきました。最近はスマホを携行していれば地図アプリが使えますし、現在地もGPSですぐわかって、飛躍的に便利になりました。
ただ、スマホの地図アプリが使えると言っても、走行しながら片手でスマホを取り出して確認するのは危険です。地図確認以外でも、走行しながらスマホや携帯電話を操作している人を見かけることが増えていますが、危険なばかりでなく、周囲への迷惑であり、道交法違反にも問われます。
ハンドルにスマホを取り付けるフォルダーも販売されています。片手で持って操作するよりはいいですが、走行中に注視するのは、やはり危険です。スマホの小さな画面で、走行中に細かい地図や表示を確認するのは難しい部分があるのは否めないでしょう。
そこで、新たな機器を開発しようと考える人が出てきました。スマホを直接ハンドルバーにマウントするのではなく、違う形でナビケーションを実現する機器です。クラウドファンディングサイトで、新たな製品を提案し、量産資金を獲得しようとしている人たちがいます。
こちら、“
HAIZE”は、都会のサイクリストのための、必要最低限の機能に絞ったナビゲーションです。ハンドルに取り付けたベルくらいの大きさの機器が、曲がるべき角や距離の目安を、点滅するLEDの表示で教えてくれます。これならシンプルで、注視しなくても一瞥しただけでわかります。
ルートを辿る案内ではなく、目的の方向を表示させることも出来ます。必ずしも決まったルートを通るのではなく、目的地のおおよその方角を把握しながら、自分で随時、道路を選択しながら走行することが出来るわけです。LEDの表示で、目的地への接近がわかるようになっています。
こちらの、“
SmartHalo”も、考え方は同じです。こちらは輪のようになったLEDの光り方や色で、進むべき方向や目的地への接近を知らせてくれます。最初にスマホで目的地を設定したら、あとはハンドルに取り付けた機器のサインを見て進むだけです。
スマホと連携して、天気予報の変化を通知してくれたり、電話の着信を知らせたり、自転車をとめた場所を忘れても表示してくれる機能などもあります。駐輪中に自分以外の人物が動かそうとするとアラームが鳴る、防犯機能も内蔵しています。持ち主かどうかは、スマホを自動認識して判断します。
自転車にフィットネスとして乗る場合のモードもあります。走行距離や走行時間、あるいは目標消費カロリーを設定しておけば、達成時に光って教えてくれるようになっています。もちろん、走行時間や距離、平均速度、消費カロリー、移動経路といったデータは自動的に記録しておいてくれます。
こちらの“
Hammerhead”も、スマホの専用ナビアプリと連動して方向を指示してくれる装置です。その名のとおり、ハンマーのヘッドのような形が特徴的です。やはりLEDの表示によって、右左折やUターンなどの指示を出します。注視する必要がないどころか、前方を見ながら、目の端で捕らえることが出来そうです。
専用アプリで目的地を入力する際、最短距離のルートだけでなく、重視する条件、例えば景観、沿道の自然環境、天候、アップダウンの少なさといった希望を入力すれば、その条件に合ったルートを探索してくれると言います。安全第一のルートや、楽しいルートも案内可能ということになります。
こちら、“
HAIKU”も同じです。スマホで目的地を設定したら、専用の表示装置が曲がる方向や、そこまでの距離を表示します。フィットネスアプリと自動で連携し、特に操作しなくても、走行距離や消費カロリーの計算、記録といった機能も備えています。
特徴的なのは、ボタン操作などではなく、“HAIKU”の前で手を振るだけで、次の表示をさせることが出来ることでしょう。走行中に、ボタンを押すために、機器を注視しなくていいわけで、より安全でラクに操作することが出来ます。これは親切な設計と言えるでしょう。
こちらの“
BeeLine”も基本的に同じ考え方です。ただ、目的地の方角と距離を示すスタイルです。方向を踏まえた上で、あとは自由に道を選択して走行することになります。都市部で、ルートがいくらでもあるような場所では、柔軟かつ臨機応変に道を選べるわけで、これでも十分でしょう。
郊外だと、選択した道が違う方向へ向かっていることに気づいても、方向を修正できるような道がない場合があります。でも、都市部ならば問題ないはずです。橋やゲートなど、どうしても通らなければ行けないような場所は、そこを外さないように指定しておくことも出来ます。
ルートを決めて、細かく曲がる角を指定されるより、かえって走りやすいということもあるに違いありません。曲がる角を間違えないように神経を使ったり、間違えて戻ったりするよりも、多少距離が長くなっても問題ないと思えば、ラクに走行できるということもあるでしょう。
多くは、クラウドファンディングサイトで資金調達中ですが、5つの製品とも、基本的には同じコンセプトと言えそうです。すなわち、クルマのナビゲーションのように、地図や沿道の情報を表示しようというのではなく、方向を指示することに特化したナビゲーションです。
自転車の場合、画面を大きくするのには限界があります。小さいと注視しなければなりません。そのぶん危険になります、スマホを直接見るより、シンプルに方向や距離、案内を知らせられれば十分、そのほうが望ましいという考え方です。これには多くの方が納得、賛同するのではないでしょうか。
日本では、自転車専用のナビゲーションシステムは販売されていますが、このような方向指示システムは、あまり話題に上りません。その背景には、まだ圧倒的多数の人が、最寄り駅や近くのスーパー、子供の送迎などの用途にしか自転車を使っていないということがあるのでしょう。
自転車で最寄り駅より先へ行こうと思ってない人が多いはずです。知っている範囲しか乗らないのであれば、特にナビは必要ありません。欧米のように、自転車を都市交通の手段として使うような人が増えてこないと、こうしたナビのニーズが出てこないということはあると思います。
ただ、自転車本来のポテンシャルや便利さに気づき、知らない場所へも行くようになれば、地図を確認したくなります。スマホで地図を確認したりするようになれば、おのずと、走行中に確認する危険性も感じるでしょう。不便さにナビが欲しくなるかも知れません。
このようなナビシステムが次々と提案されている欧米と比べると、日本では、まだまだ遅れているわけですが、いずれ、このようなナビのニーズも増えてくる可能性はありそうです。ナビが紙の地図より便利という事実は動かしようがありません。
クルマに搭載するような、地図を表示するスタイルの専用ナビも、普及する余地はあると思います。ただ、手持ちのスマホを活用できることや、安全性や利便性などから考えれば、自転車用には、やはり、このような方向や距離を指示するようなタイプが増えていくのではないでしょうか。
宮崎でまた歩道暴走事故が起きました。まだ原因は不明ですが、認知症だとすると今後増えていくのでしょうか。