December 09, 2015

交通事故対策の根本を見直す

交通事故で毎年数千人規模の人が亡くなります。


統計によれば、交通事故死者数は減少傾向にありますが、この数字は24時間以内に亡くなった場合に限られ、それ以降に亡くなる方は含まれません。医療が高度化で延命技術が向上したため、減っているように見える部分もあると言われています。統計以上に多くの人の命が失われているのは間違いありません。

死傷事故クルマの運転も、今のところ人間のやることですから、ミスは避けられません。何かの拍子で事故になったり、予期しない理由、不可抗力とも言うべき理由で事故が起こるようなこともあるでしょう。ある程度、死傷事故が起きるのは仕方がない気もします。

しかし、現状で起きている交通事故、死傷事故は、必ずしも避けられない事故ばかりではありません。例えば、酒酔い運転による事故などは、起こるべくして起きる事故と言えるでしょう。中には未必の故意による殺人と言ってもいいような事例も見受けられます。

未だに軽い気持ちで飲酒運転するような人も存在しているわけで、これを減らせば死傷事故も減らせるはずです。ただ、それらは一部であり、それ以外にも多くの死傷事故が発生しています。果たして、飲酒などによる事故以外の死傷事故は、不可抗力なものだったのでしょうか。

少し前に、検索サイトのアンケートの記事を見かけました。歩行者から見た、クルマのドライバーに対するアンケートです。下に引用します。


歩行中や自転車走行中に車のドライバーにイラッとすることランキング

道を歩いているときや自転車に乗っているときに、我が物顔で通る車のドライバーの行動に困ったことはありませんか。運転マナーを守らないドライバーの行動で、歩行者や自転車に乗った人が危険にさらされることがあります。そこで、歩行中や自転車に乗っているときに、車のドライバーの行動にイラッとさせられることについて調査しました。

ドライバーにイラッとする1位 窓から火のついたタバコを投げ捨て 272票

2位 あきらかに邪魔な路上駐車 195票

3位 信号が変わっているのに突っ込んでくる 180票

4位 狭い道でスピード出す 152票

5位 しつこくクラクションを鳴らし続ける 110票

5位 背後からエンジンをふかして煽ってくる 110票

7位 窓を開け大音量で音楽をかけている 100票

8位 エンジン音がうるさい 84票

9位 横断歩道を渡っているのにクラクション 77票

10位 窓を開けて文句を言ってくる 72票

11位 自転車で普通に走っているのにクラクション 71票

12位 ドライバーの不注意で引かれそうに 68票

13位 横断歩道の上で一時停止 59票

14位 早く渡れみたいに偉そうなジェスチャー 47票

15位 自転車の進路に急に割り込んでくる 31票

(2015年10月20日 gooランキング)

多くの人が思い当たる、同感と思える結果なのではないでしょうか。ここに挙げられたような事例は日常茶飯事であり、実際に体験したことのある人も多いのではないかと思います。サンプルが少なく、ネット上のアンケートなので、必ずしも市民の実感を正確に反映しているとは言えませんが、妥当な結果に思えます。

このタイトルにあるように、『ドライバーにイラッとする』のは、ドライバーの態度が偉そうに思えるからではないでしょうか。クルマに乗っているか、歩いているか、あるいは自転車に乗っているかの立場の違いだけで、偉そうにされるいわれはありません。

抜け道『しつこくクラクションを鳴らし続ける』とか、『背後からエンジンをふかして煽ってくる』、『横断歩道を渡っているのにクラクション』『窓を開けて文句を言ってくる』『早く渡れみたいに偉そうなジェスチャー』などは、確かに偉そうな態度です。

でも、こうしたことをする人も、歩いている場合には、このような態度は、とらないのではないでしょうか。公道や公共の場所を歩いている時に、知らない相手に対して、いきなり偉そうな態度をとったり、挑発的な態度をとる人は少ないと思います。なかには、いるかも知れませんが多くないはずです。

つまり、クルマに乗っているから出てきてしまう行為なのではないでしょうか。決して威嚇的な態度をとったり、攻撃的な性格ではなく、乗らない時に出ることはないのに、クルマに乗ると突然出てきてしまう性質、あるいは感情なのではないでしょうか。

専門的なことは詳しくないのですが、心理学的にも説明できることのようです。クルマに乗ると気が大きくなったり、無意識に強くなった気がして、態度が大きくなってしまうのです。鉄の塊に守られているため、強くなったと錯覚するような効果もあるとも言います。

拳銃などの凶器を持った場合に、強くなった気になるのと同じような効果ではないかとの説もあります。持ったことがないのでわかりませんが、確かに拳銃を持っているというだけで、明らかに有利な立場にあることから、平気で偉そうな態度をとるようになるのかも知れません。

交通事故防止ハンドルを握ると性格が変わるという話もよく聞きます。ふだんは温厚で、思慮深く、人格者だと思われていた人が豹変したりする例もあるようです。しかし、それは顕著な例というだけで、クルマに乗ると、ふだんと違う心理状態になるということは、多かれ少なかれ、誰にでもあることのようです。

なかには、そういうことのない人、自制心が強く、理性で押さえ込める人もいるでしょうが、クルマの中という特殊な状況が、多かれ少なかれ影響を与えているようです。自分では気がつかなくても、無意識にそうなっていたり、度合いは小さくても、変化しているのではないでしょうか。

『信号が変わっているのに突っ込んでくる』とか、『狭い道でスピード出す』などは、とにかく早く行きたいというドライバーの心理が表れている気がします。もちろん本当に急いでいる場合もあるでしょうが、特に急いでなくても、われ先に行こうとする心理になってしまう傾向もあるのではないでしょうか。

歩いている時には、特に理由が無ければ、わざわざ人をかき分けて、少しでも早くと先を急ぐことはないでしょう。しかし、クルマに乗っているというだけで、スピードを出したり、信号が変わっているのに突っ込んだりしてしまうのです。これも、クルマの持つ心理的な効果なのだろうと思います。

『自転車で普通に走っているのにクラクション』『自転車の進路に急に割り込んでくる』といった行為も、偉そうな態度をとる効果や、先を急ぐ効果から説明できる気がします。自転車が遅いのでイライラするのでしょう。あえて危険な嫌がらせをする人がいるのも説明がつきます。

啓発運動道を歩いている時に、お年寄りがゆっくり歩いていたり、車椅子に乗っていて速度が遅い人に対し、わざと煽ったり、偉そうな態度をとったり、嫌がらせをしたりするでしょうか。クルマに乗っているというだけで、同じ人なのに行動が変わってしまうわけです。

『窓から火のついたタバコを投げ捨て』『あきらかに邪魔な路上駐車』『窓を開け大音量で音楽をかけている』『エンジン音がうるさい』などの迷惑行為もそうでしょう。クルマに乗っているだけで、迷惑で周囲から白い目で見られるような行為が平気で出来るようになってしまうと考えられます。

つまり、ただクルマに乗るというだけで、偉そうになったり、攻撃的になったり、急ぐようになったり、迷惑行為が平気になるわけです。多かれ少なかれ、ドライバーはこうした影響を受けているはずです。そして、このことが直接・間接に事故の原因になっていることもあるに違いありません。

狭い住宅街の道路を抜け道にして、猛スピードで走りぬけるような行為は、殺人的行為と言わざるを得ません。子供が飛び出してきたら避けられるはずがありません。それを平気でやってしまうような人が、普通に出てきてしまうのがクルマの与える影響の怖いところです。

狭い住宅街の道路などでスピードを出す人を見ることは少なくありません。歩いている時に例えるなら、ナイフを振り回して人ごみを通るようなものでしょうか。いつ人を怪我させてもおかしくない状態です。クルマも一種の凶器と考えれば、似た部分があります。

交通安全意識の向上交通死傷事故の原因として、人間ですからミスもあるでしょう。不可抗力なものもあるかも知れません。しかし、クルマそのものの及ぼす心理的な影響によって、事故を誘発するような危険な走行をさせている例が少なからずあるはずです。それが背景となっている事故も多く起きているのではないでしょうか。

交通安全の啓発活動を行ったり、飲酒運転の検問を強化したり、違反行為の取り締まりを徹底するといった対策も必要でしょう。しかし、それだけでは防げない事故があると思います。このような前提に立つならば、また違った対策が求められるのではないでしょうか。

例えば、住宅街の道路にはハンプを設けるなどして物理的にスピードを出せないようにするとか、車道に自転車レーンを設け、しかも物理的に分けて、クルマと自転車が接触しないようにするといった対策です。クルマに乗ることの影響を受けても、物理的に事故にならないようにする方策にもっとシフトすべきです。

クルマに乗るだけで受ける影響を排除するのが困難なのは明らかです。だとするならば、物理的にその影響が事故につながらないようにすべきでしょう。そのような対策が進めば、もっと違うレベルでの交通死亡事故死者の減少につながると思います。

減っているとは言え、依然として交通事故死者が数千人か、潜在的にそれ以上というのは看過できない多さです。もはや、それが当たり前のようになって、異常とも思わなくなっています。しかし、誰の身にも、明日起きても不思議ではない事態です。もっと抜本的に不幸を減らす対策を進めるべきではないでしょうか。




師走に入って忘年会などお酒の席が続いている人も多いでしょう。いろいろと気をつけなければなりませんね。

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この記事へのコメント
素晴らしい記事をありがとうございます。この度のは特に心を打つものです。
現在の惨状を的確に捉え、我々や善良な公正な人々の気持ちを代弁して下さっていることは間違いないと思います。
自動車はドラッグより危険、という主張の本があるぐらいですし、私もそれに同感です。
http://firefly1384.web.fc2.com/dokusyo/d030.html

もっと抜本的に不幸を減らす対策を進めるべきであることは確かであり、
オランダ等の都市では、自動車への締め付け強化をし自動車を減らして自転車等の活用を促すという抜本策によって効果を上げています。

自転車人口が多い程、死亡事故が減少。アメリカとオランダでは4倍の開き
http://findbike.jp/news/20150412-fatal-crashes/

日本も高齢化対応の地域づくりが急務ですから、一刻も早い決断が必要だと思うところです。
Posted by GreenTopTube at December 15, 2015 20:16
GreenTopTubeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
『善良な公正な人々の気持ちを代弁して』いると言うより、クルマに乗ると、態度や心理がかわってしまうということが、むしろ、あまり認識されていないのではないと思います。
その点を指摘しているのです。
だとするならば、それを踏まえて、取締りや啓発活動だけではなく、クルマに乗ることで変わってしまう態度や心理が事故に影響を及ぼさないようにすることを考えるべきではないかと言いたいのです。


Posted by cycleroad at December 16, 2015 23:30
 
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