技術の進歩やネット社会の進展ともあいまって、これまでにないサービスが登場し、従来のスタイルを一変させることもあります。進化したサービスで利便性がより向上したり、消費者の煩わしさを解消したり、商品の販売が大きく伸びるようなケースも見られます。
自転車の世界でも、新たなサービスを模索する動きがあります。
Fortified Bicycle 社による“
INVINCIBLE”(無敵)と名づけられた自転車とそれに付随して提供されるサービスもその一つでしょう。なんと、自転車の盗難に対して、その被害を100%保証するというものです。

同社の自転車を購入し、サービスに加入していて、万一盗難に遭った場合、24時間以内に新しい自転車が提供されるのです。種類によって価格が違いますが、年間100ドル程度を本体価格にプラスするだけで、盗難に遭っても、また新たに買いなおす必要がなくなります。
世界で唯一の盗難100%保証とうたったこのサービス、クラウドファンディングサイトで資金調達中ですが、今なら、よりお得な値段で購入できます。3年間のコースだと、さらに割安になり、盗難されにくいオリジナルのパーツを同時に購入することも出来ます。

同社オリジナルのU字ロックがついてきますが、これで施錠していて盗難に遭ったら100%保証、しかも24時間以内に新車が届けられます。オリジナルのライトなどは、取り付けるネジを特殊なものにするなどして、パーツ単体でも盗まれにくくなっています。
Fortified Bicycle は、アメリカ・マサチューセッツ州のボストンに拠点を置いていますが、年間150万台以上、金額にして3億5千万ドル以上という自転車が盗まれるアメリカで、こんなサービスを展開したら、とても採算が合わないのではないかと思ってしまいます。
実は、盗難被害を防ぐ仕組みがあります。同社の自転車が盗まれたら、専門のスタッフがネットオークションや、地域の売ります買いますサイトなど、さまざまな換金ルートを監視し、発見し次第、刑事告訴したり、被害の回復に努める体制になっているのです。
同社の自転車は、商品と顧客の管理が徹底されており、盗難被害に遭った顧客の自転車が売りさばかれようとすると、すぐわかるようになっています。そして、個人では困難な盗品売買の監視や発見、刑事告訴から損害賠償までを専門のスタッフが行なう体制になっているのです。
この仕組みにより、同社の自転車については、正式な所有者が売却する場合を除いて、中古品として絶対に二次流通させないことを目指しています。このことが世間一般に知られるようになればなるほど、同社の自転車は盗まれなくなり、同時に、そのぶん同社の利益は増えるというわけです。
これが徹底されれば、おそらく自転車盗の常習犯には、すぐ知られるでしょう。犯人にとって、“Fortified”と書かれた自転車を盗むのは割りに合わなくなります。換金するのが困難なばかりか、刑事告訴や民事訴訟を起こされる可能性が高くなるわけですから、盗むなら他の自転車をということになるでしょう。

年間150万台以上の自転車盗が発生するアメリカでは、このサービスに加入するメリットは大きいと考える人は少なくないと思われます。実際問題として、盗まれた自転車が戻ってくることは期待出来ません。結局またもう一台、お金を出して買うことを思えばリーズナブルでしょう。
言わば盗難保険のようなものですが、24時間以内に届けてくれるのであれば、通勤などに使っている人も不便な期間は最低限で済みます。何より、「盗まれにくい自転車」に乗ることで、盗難被害に遭いにくくなるわけですし、保険金請求などの煩雑な手続きをして、また買いに行くより便利です。


そのほかにユーザーの煩わしさを、なるべく軽減するような工夫も盛り込まれています。例えば、錆びにくいよう亜鉛メッキされたチェーンを使って、錆びて異音がしたり、乗り心地が悪くならないよう配慮しています。耐パンク性能の高いタイヤが使われており、パンクで困るケースを減らします。
もしパンクした場合には、予備の新しいチューブが送られてきます。ライト以外にも、パーツの取り付けネジは特殊なネジが使われており、普通の工具では外せません。U字ロックは、独自の破断されにくい盗難抑止効果の高いものになっています。

これは、なかなか興味深い仕組みと言えるのではないでしょうか。同社製品限定ですので、自分の好きなブランドの自転車に乗りたい人には意味がありませんが、街乗りに使う自転車としては、なかなか魅力的な選択肢になりえるでしょう。特に、油断するとアッと言う間に盗まれてしまうアメリカの都市では、なおさらです。
休日は、自分の好きなブランドのバイクに乗り、通勤や街乗り用に、古くて、あまり盗まれそうに無い自転車を使い分けるような人もいますから、2台目に、この「無敵」の自転車を考える人もあるでしょう。いずれにせよ、消費者に有益な選択肢を提供するサービスと言えそうです。

このサービスが、どれくらい市場に受け入れられ、評価され、販売を伸ばしていくかは未知数です。しかし、もしこうしたサービスが普及するならば、盗難を防ぐ仕組みとして大いに期待できます。好評となれば、他のメーカーにも追随するところが出てくる可能性があるでしょう。
見方を変えれば、現在の自転車の盗難対策は不十分で未熟ということになります。販売後の商品や顧客の管理が徹底され、盗品の換金を防ぐ仕組みが当たり前になっていけば、盗難被害は大幅に少なくなるに違いありません。その意味で、自転車という商品の販売方法に一石を投じるサービスと言えるのではないでしょうか。
新国立競技場、どちらの案も1千5百億位ですが、過去の開催地では高くても、6百億円程度なんですよね..。