雨の中、乗らざるを得ない時もありますし、運悪く降られてしまうこともあります。でも、出来ることなら避けたいのが雨でしょう。強い風もイヤですが、なんと言っても雨がイヤという人は多いに違いありません。もちろん雨でも平気で乗る人はいますが、出来れば降られないに越したことはありません。
雨が降りそうな時には、自転車で出かけなければいいわけですが、そうはいかない時もあります。多少降水確率が高いくらいでツーリングを諦めたくないサイクリストも少なくないはずです。早く帰れば降られずに済むだろうと出かけると、目算が狂って雨に降られてしまうこともあるでしょう。
特にこの時期に雨に降られようものなら、身体が冷えて大変です。そうでなくても濡れるのは不快です。視界も悪くなりますし、スリップしたりと危険にもなります。メンテナンスの手間も増えますし、出来れば雨に降られたくないと思うのが人情でしょう。特に日本人は濡れるのを嫌うと言われています。
最近は、天気予報の精度も上がりましたし、ネットを使えば、雨雲の様子をレーダーのような画面で見ることも出来ます。スマホの位置情報を使って、雨雲の接近を通知してくれるようなサービスもあって、うまく使えば、雨に降られる事態を回避する確率も高くなってきたと言えるでしょう。
そんなテクノロジーを使わなくても、空模様を見て、これはひと雨来そうだとわかる場合もあります。雨が降り出す前にと、なんとか急いで帰ろうとするケースもあるでしょう。そんな時、非情にも行く手を阻むのが赤信号です。信号待ちの時間が、やけに長く感じられたりします。
もう降られてしまって、濡れてしまっている場合も、赤信号で止まっている時間は、身体が冷えていくわけで、なるべくなら止まりたくないところです。しかし、天気の良し悪しに関わらず、街を走っていれば、赤信号で止まるのは仕方がありません。
ところが、そんな常識を覆そうと考え始めている都市があります。自転車先進国として知られるオランダのロッテルダムです。まだ試験段階ですが、街の信号システムに新しい機能の導入を検討しています。雨が降り出したら、自動でそれを感知して、信号の間隔が変わるのです。
雨が降りだしたら、赤外線センサーで、交差点へのサイクリストの接近を感知します。すると、通常よりもサイクリストの赤信号の待ち時間を短くしてくれるのです。もちろん、ずっと青にするわけにはいきません。しかし、最大待っても40秒で信号が青になるよう調整されています。
ふだんは3分間の待ち時間でも、40秒にすると言います。雨が降ったら、サイクリストはより早く目的地に着けるよう、より平均速度を上げられるようにするという配慮なのです。オランダの他の都市でも、信号の優先順位の実験はしていますが、天気に応じた信号システムの実験はロッテルダムが初です。
さすが、自転車先進国です。日本人からすれば、思いもよらない配慮でしょう。行政側もそうですが、サイクリストの立場でも、雨が降ったら自転車用信号が短くなるなんて仕組みは考えつきません。まさに先進国オランダならではの自転車インフラ実験と言えるでしょう。
雨で、サイクリスト用信号の待ち時間が短くなる分、クルマの待ち時間が長くなるわけですが、クルマは室内にいて雨に濡れるわけではないのだから、多少待ち時間が伸びようと問題ないという考え方です。まだ試験段階ですが、採用ということになれば、順次適用範囲を拡大していく計画です。
日本の行政に、この発想はないでしょう。それどころか、道路のインフラと言えば、まずクルマを優先に考えるのが当たり前になっています。いかに、クルマの流れをよくするかが優先課題です。クルマのためなら、歩行者や自転車は多少の不便くらい我慢しろというスタンスです。
例えば、クルマの流れを良くするため、横断歩道を歩道橋にするような整備がなされてきました。クルマは機動力があるのですから、クルマのほうを上らせたいところです。それは費用が桁違いなので仕方がないにしても、歩行者に階段を上り下りさせる不便を強いてでも、クルマの流れをスムースにするとの考え方です。
最近でこそ、歩道橋は減ってきましたが、クルマ優先は固定観念として、当然のことのようになっています。高度成長の時代とは言え、自転車に歩道を通らせ、歩行者を危険にする世界的にも非常識な施策をとったのも、クルマ優先の考え方です。日本では、いまだに、その思想が無意識に優先されています。
日本では、地球環境への負荷や温暖化ガスの削減のため、エコカーが奨励されます。しかし、本当に環境を考えるのであれば、自転車で出来る移動は自転車にすることのほうが、奨励されてしかるべきです。もちろん全てを代替は出来ませんが、もっと自転車利用の促進を優先してもいいはずです。
クルマもエコカーでないよりは、エコカーのほうがベターですが、まずクルを使わなくて済むなら使わないほうが環境に優しいのは当たり前です。使用時だけでなく、製造や廃棄まで多大なエネルギーが使われます。ヨーロッパの国々が、まず自転車の活用を奨励するのは、ごく自然な発想です。
ならば、少しでも自転車を利用しやすくし、市民になるべく自転車に乗ってもらえるよう配慮するのも当然ということになります。ヨーロッパだって、クルマが不要なわけではありません。しかし、クルマと自転車ならば、自転車を優先するのが、誰が考えても当たり前ということになります。
相対的な交通弱者を優先するというだけではありません。クルマは濡れないし、エンジンがあって疲れないわけだから、自転車に対してクルマが譲ったほうがリーズナブルということもあります。いわゆる持続可能な社会を考える上で、自転車のほうを優先するのが、社会的に正しいということもあるでしょう。
クルマは製造から廃棄まで、多くの資源やエネルギーを消費して環境に負荷をかけ、公共の空間を多く占有し、事故で多くの人命を奪い、大気を汚染し、温暖化ガスを排出し、ヒートアイランドも加速させます。どれをとっても自転車の活用が優先されてしかるべきということになります。
そう考えると、雨の時に信号を切り替えることで、少しでも自転車の不快さ、危険などを減らし、活用を促進するのは当たり前に思えてきます。日本では、クルマ優先が無意識に固定観念となっているせいで、当たり前の考え方が出来なくなっているのかも知れません。
各地での成人式、今年もいろいろトラブルが起きたようです。成人になった途端、傷害致傷とかで逮捕って..。