January 20, 2016

自転車インフラも検証が必要

自転車インフラの考え方が変わってきています。


最近各地で少しずつですが、自転車レーンを整備しようという動きも出てきました。もちろん、まだ全体から見れば微々たるものですが、以前は市街地の道路に自転車レーンの整備しようという話なんて、聞くことすらなかったことを思えば、変わってきつつあることは間違いないでしょう。

自転車通行帯などと称して、歩道上に色を塗って自転車を通らせる場所を指定するのが大部分だったことを考えると、まだまだ例外も多いですが、車道に自転車レーンを整備する傾向が出てきたのも変化と言えるでしょう。国土交通省や警察庁が、自転車を車道走行させる方向へと大転換をした結果もあると思います。

車道に設けられた自転車レーン自転車レーン

一部のサイクリストを除いて、市民の圧倒的多数が、自転車は歩道を通るものと信じて疑わないという状況も変わりつつあります。少なくとも自転車は車道走行だという知識は徐々に浸透しつつあり、地方自治体の中には、自転車レーンの整備の必要性に気づくところも出てきました。

ただ、自転車レーンと言っても、一朝一夕には整備できません。これまで長年にわたって、歩道を拡幅し、自転車を歩道に閉じ込めようとしてきたこともあって、必ずしもすぐに自転車レーンが設置できる状況ではありません。当然ながら予算の問題もあります。

全国初の自転車専用レーン

そこで、道路上に矢印と自転車のマークをペイントし、自転車の走行空間を表示するところも、一部で見るようになってきました。まだまだ少ないですが、クルマのドライバーに対しても、自転車が車道走行であることを示し、車道を共有するよう促すサインでもあります。

もちろん、きちんとセパレートされた自転車レーンのほうがベターですが、これも一つの自転車インフラとして、評価できる傾向と言えるでしょう。自転車レーンの幅が確保できない場所について、言ってみれば次善の策、あるいは、つなぎの策として、今後広がっていく可能性があります。

自転車は左側通行路面表示統一自転車路示す「ナビマーク」

これは、欧米にも見られます。例えば、アメリカでは“sharrows”と呼ばれる路面表示です。近年、各地で増えつつあり、2006年に、いわばアメリカ版の流行語大賞にノミネートされたのを見ても、急速に広がりつつあるインフラの一つとして認知されています。

呼び方としての“sharrows”は造語で、道路の共有“Share”と矢印マーク“Arrow”を組み合わせたものとか、“Shared Roadway Markings Arrows”や“Shared Lane Pavement Arrows”を省略形にしたなどの説があります。道幅が狭いなど、自転車専用のレーンが設置出来ない場所などにペイントが広がっています。

by BikePortland.orgby BikePortland.org

さて、この“sharrows”ですが、最近の研究で、自転車利用者の安全性を高める効果は疑わしいことが明らかになってきました。“sharrows”は役に立たないどころか、かえって有害とする調査もあります。速度制限などと併用するなど、一部を除けば、その効果は疑われるというのです。

まだ、どこの都市でも設置されて比較的日が浅く、サンプル数が少ないこともあるので、統計的に有意かについては問題もあるようです。しかし、自転車レーンが設置された場所や、何も対策されていない場所などと比較調査した結果、安全性向上への寄与に疑いがあることが強く示唆されると言います。



“sharrows”は無駄で意味がない方策、自転車インフラの「カス」だと結論づけている人もいます。普通に考えれば、無いよりはマシに思えますが、イメージとは違う可能性があるようです。少なくとも最近の研究は、これまで考えられていたような安全効果は見込めないとの結果を示しているようです。

Sharrows“sharrows”の設置場所と、自転車レーンの設置場所、そして何も無い場所とを比較する場合、同じ条件にするのは困難です。同じ場所で3種類の形態にすることが出来ない以上、似たような道路で比較せざるを得ません。しかし、全く同じ条件にならないのは明らかです。

道路幅や交通量、平均速度、路面表示の見易さ、舗装の状態、そのほか多くの条件が関係してくるに違いありません。近くに学校があるとか、見通しが悪いとか、自転車通勤する人が多いとか、酔っぱらいが多いとか、さまざまな要因によって、結果が違ってくる可能性もあるでしょう。

もちろん、調査では条件を近づける努力をしたとは思いますが、多少不確実な部分が残るのは仕方のないところです。しかし、そのようなことを置いても、意味がない、少なくともクルマの走行速度が遅くない場所では、効果が認められないことが強く示唆されるというのです。

これは少し意外な結果です。しかし、道路標示があっても、ドライバーが気をつけるのは最初だけだったりするのかも知れません。考えてみれば日本でも、ひし形の道路標示など、ドライバーがほとんど意識していないものもあると思います。あまり注意喚起になっていない可能性は否定できません。

安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン

アメリカの“sharrows”と、日本の道路標示を同列に考えることにも問題があります。しかし、この研究結果は注目に値すると思います。日本でも、今後同様の路面表示の効果について検証する必要があるでしょう。普通に考えれば、無いよりはマシに思えますが、むしろ有害ということも十分にありえます。

現状で結論は出せませんが、少なくとも、有効そうだというだけで導入を進めるのは問題と言えるでしょう。効果も期待出来ないのに、道路標示だけで済ますような風潮が広まるのも困ります。出来ることなら、調査等でも安全への寄与が認められる自転車レーンの設置を求めていきたいところです。



今は余計に気をつけているであろうところにバスの事故が相次いでいます。何だか乗るのが心配になりますね。

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この記事へのコメント
 すでに、自転車は車両という常識がある欧米と、車両意識のない日本では、正反対の結果が出てもおかしくないと思います。
 欧米では、標識があることで、自転車の走行エリアが広がったと勘違いして、中央に広がってしまい、危険を増すかもしれません。
 一方、日本では、車と対向が安全と信じる自転車に指摘するには、最低でも矢印がほしい良いうのが現状です。
 最終的には、安全に追い越しのできる幅のある、分離した自転車レーンが理想ですが、まずは、左の端を一列という常識・習慣をつけさせる必要があるように思います。
 ところで、JAFMATE(JAFの機関紙)によれば、自転車の違反を車の免許に反映させる例・地域が増えてきているようですね。中学生の時の自転車の違反で、取得時の免許交付を遅延するなどが始まると、”とにかく何でもいいから歩道を走れ”と言っている当地の中学校も少しも変わるかも。
Posted by ひでさん at January 22, 2016 15:03
自動車の自動運転の最大の障壁が自転車と言われないようにしないとね。時間がない。
自転車と自動車の車車分離がキーワードかな。
Posted by なななな at January 24, 2016 08:07
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いろいろな面が違いますから、日本と同列には語れないのは確かでしょうね。
ただ、今後路面表示が増えていけば、アメリカと同じように効果が見込めないという結果になることも十分考えられます。
いずれにせよ、イメージで導入して満足するのではなく、きちんと検証することが必要ということになりそうです。
そのような事例が報道されて話題になったこともありましたが、罰則にも、まだ工夫の余地がありそうですね。
Posted by cycleroad at January 24, 2016 23:35
ななななさん、こんにちは。
クルマの自動運転のために自転車を規制するという考え方は、自転車を歩道走行させるのと同じ発想であり、それでなければ実現しない自動運転では、イザという時の安全も確保できず普及しないでしょう。

Posted by cycleroad at January 24, 2016 23:43
 
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