携帯電話やスマホ、タブレットなどの端末が発達し、広く普及したために、こうした端末を使ってコミュニケーションをとるのは、もはや当たり前になっています。通話以外に、メール、ラインなどの通信アプリ、SNSなど、テキストを使ったコミュニケーションが増えました。
通話するよりも便利だからと、むしろメールやラインなどの文字を使った通信手段を使う人も多いと思います。その中で、文字だけだと気持ちが伝わりにくい、表現をやわらげたい、親密な感じが出せないなどの理由で、顔文字や絵文字などを使う人も多いはずです。
最近は端末に、たくさんの絵文字が用意されています。ハートマークや顔、手の形など、感情を表わす絵文字だけでなく、身近にあるさまざまなモノが絵文字になっており、言葉で書くよりも手っ取り早く、見てわかりやすいからと多用している人も多いと思います。
ところで、この絵文字、日本が発祥だということをご存知でしょうか。元々は日本独自の文化だったものが、その便利さ、ユニークさが注目され、急速に世界に広がったのです。海外では絵文字のことを、日本語をそのままに“Emoji”と呼びます。
昨年の日米首脳会談の際、アメリカのオバマ大統領が、日本発祥で世界的に普及した代表的な文化として、カラオケなどと共に“Emoji”を挙げ、日本文化に感謝の意を表したというエピソードもありました。絵文字はそのまま“Emoji”として世界に通用する言葉となっているわけです。
さて、その“Emoji”を交通安全のキャンペーンに使っているクルマメーカーがあります。アメリカのフォード社です。そのコピーは、“Don't Emoji and Drive”、絵文字&ドライブをするな、すなわちスマホなどのモバイル端末を使いながらの運転はしないようにと戒めているわけです。
ユニークなのは、描かれている絵のドットの一つひとつが絵文字になっていることです。絵は、横断歩道を渡るランナーや自転車、お年寄りの絵などになっており、端末を見ながら、使いながら運転していると、歩行者や自転車の横断を見落としてしまうことを表わし、啓発しているわけです。
この、“Don't Emoji and Drive”の“Emoji”を“Mail”にしたら、メール以外の使用を表現できません。“SNS”だとメールが含まれなくなります。SNSにもいろいろ種類がありますし、“Emoji”とすれば、これら全てを表わして、意味も伝わるわけで、なかなか秀逸なコピーではないでしょうか。
最近、歩きながらスマホを使う人が増えていることが危惧されています。転倒や衝突したり、ホームから転落したり、トラブルになったりということも起きています。また、スマホを使いながら自転車に乗る人も目立ち、その危険性や周囲への迷惑が指摘されています。
危ない、いけないとはわかっていても、やれば出来てしまうからなのでしょう、移動しながらスマホなどを使う人が後を絶ちません。特に学生などは、すぐ返信しなければというプレッシャーもあると言います。歩きながら、自転車で移動しながら、ケータイやスマホを使う姿を見るのは日常茶飯事です。
移動しながらスマホなどを使う人が、これだけ多いのですから、当然クルマを運転しながら使っている人もたくさんいるに違いありません。もちろん道交法違反ですが、外から見えにくいので目立たないだけでしょう。ヒザの上あたりで使っていたら、外からは判別しにくいため、あまり話題にならないだけだと思います。
交通事故のニュースでも、歩行者や自転車に乗った人がクルマにはねられた、轢き逃げされたとは言いますが、その原因までは、あまり報道されません。されたとしても、前方不注意や脇見運転というだけで、それがスマホなどの携帯端末をいじっていたからだと報道されるのは稀です。
VIDEO
しかし、その中の相当割合が端末を使っていた、注視していたことによる、歩行者や自転車の発見の遅れが関係していた可能性は十分に考えられます。具体的に、どの程度事故の原因になっているかはわかりませんが、少なくないであろうと推測されるのではないでしょうか。
私もつい先日、自転車で走行中に、前方のクルマがだんだん右に寄ってきて、急に修正するといった不審な挙動を見ることがありました。すれ違いざまに見ると、スマホをヒザの上で操作していました。あまりスピードは出ていませんでしたし、交通量の少ない裏道だったので、使いながら走行していたようです。
車道の左端を走行していて、徐々に寄ってくるように幅寄せされることもあります。悪意で、あるいは意図的に幅寄せするような人もいますが、そのようにも思えず、自転車の存在に気づいてないかのような挙動の時もあります。なかなか確認するのは困難ですが、ドライバーが端末を使っていた可能性もあるでしょう。
日本でも、もっとドライバーに対しても、『絵文字』しながら運転するなという啓発を行なうべきだと思います。つい使ってしまう人は少なくないと思います。たいていは大丈夫でも、事故につながる危険性は否定できません。そしてそれは深刻な結果をもたらすことになります。
サイクリストも、ドライバーが脇見をしている可能性を頭にいれておかなければならないでしょう。当然見えていると思っても、見ていないことがありえます。当然止まるだろう、当然避けてくれるだろうとい思っていても、そうならない可能性があるのは否定できません。
モバイル端末の発達で、どこにいてもコミュニケーション出来るようになりました。便利になったのは間違いありませんが、それだけ事故の原因が増えたのも事実でしょう。『絵文字』しながら自転車に乗らないだけでなく、『絵文字』しながらクルマを運転している人がいる可能性も忘れないでおきたいものです。
介護のストレスがあったからといって、お年寄りを投げ落として殺すなんて、信じられない人間がいたものですね。