子育て中のお母さんには日常的なことですが、見た目よりもはるかに力が必要になります。ぐずる子供をママチャリに乗せ、スーパーについたら、今度はおぶったりしながら買い物をして、その荷物と子供を抱えてまた自転車に乗せ、家まで帰ります。
子供と荷物をママチャリの前後に乗せて走行すれば、特に低速ではふらつきますし、かなりの重量になりますから、ハンドルを支えたり、止まったとき倒れないようにするのにも力が要ります。中には子供を2人乗せて走行している人もいますから、さらに大変です。
よく聞くのは、駐輪中、荷物を積みおろしていたりする最中にハンドルがまわってしまったり、自転車が倒れてしまって、乗っていた子供が転落する事故です。荷台やハンドル程度の高さでも、子供にとっては相当な高さですから、場合によっては深刻な結果になりかねません。
そのようなことにならないよう、ハンドルを支えつつ、買い物した荷物を荷台に乗せたり、嫌がる子供を自転車から降ろしたり、場合によっては、片手で荷物を持ったまま、もう片手で子供を乗せ降ろしたりしなければならないわけで、相当の腕力も必要になるでしょう。
海外でも基本的には一緒です。ただ、トライクやカーゴバイク等に子供を乗せる人も多く、その場合、日本のママチャリとは違って安定し、転落の危険性が低いだけ助かります。でも、そのままスーパーに入るわけにはいかないので、やはり店内カートに乗せ換えたりする必要はあります。
そのあたりの手間や力仕事を省くことによって、お母さんの負担を減らそうと、新たな自転車を開発する事例は少なくありません。この“
Salamander”もその一つです。自転車をワンタッチで子供を乗せるバギー、ベビーカーに変身させることが出来ます。
どう変身させるかは、動画を見ていただければ一目瞭然です。カーゴバイクが折りたためるようになっていて、2輪のカーゴバイクが3輪の子供乗せバギーになる仕組みです。ベビーカーにすると、フレームが短くなるので、安定するだけでなく取り回しがしやすくなります。
自転車に子供を乗せてスーパーマーケットに来て、そのまま店内にも入れるわけです。買い物した荷物を積むなり背負うなりして、帰りは自転車に戻して帰れます。買い物がしやすいかはともかく、子供を乗せたり降ろしたりせずに、どこでも行けるのはラクでしょう。
手で押すバギー、ベビーカーだと、自転車のように遠くまでは行けません。一方、自転車に子供を乗せて出かければ、目的地では子供をおぶったりする必要が出てきます。送り迎えなども含め、子供乗せ自転車とベビーカーの2in1は、子育て中のお母さんには嬉しい仕様ではないでしょうか。
日本では、3輪の自転車、トライクは乗りにくく、カーゴバイクなどは、ほとんど見かけないのが実態です。この“Salamander”は、自転車の時は2輪で、ベビーカーにすれば3輪になります。その点では、比較的日本でも使いやすいと言えるかも知れません。
子供を乗せるバギーとカーゴバイクを併用するアイディアは、これまでにもいろいろ取り上げてきました。使い方や、よく行く場所などによっても変わってくるので、このスタイルが一番とは言えません。ただ、いろいろな選択肢があるのが、日本と違うところではないでしょうか。
日本で、このような子供を乗せるのに便利な自転車が普及しない背景には、やはり自転車インフラの貧弱さがあるでしょう。ママチャリは相変わらず歩道走行が当たり前のようになっています。せまい歩道を通るのに、トライクというわけには行きません。法律違反でもあります。
自転車インフラの未整備のために、2輪のママチャリに乗らざるを得ず、転落事故が絶えず、お母さんたちは苦労しています。これが諸外国のように車道走行が当たり前になり、自転車レーンなどのインフラが整備されれば、トライクやカーゴバイクにも乗りやすくなるでしょう。
欧米諸国をはじめ、広く世界で自転車が見直されています。渋滞や大気汚染、交通事故の減少、省エネ、人々の健康増進など、多くのメリットが認められ、自転車インフラの充実に力を入れる都市が増えています。環境負荷を減らす点でも自転車を活用しようというのは世界的な流れです。
クルマを使わずとも、自転車で済む移動は自転車のほうがリーズナブルで、メリットも多いということに、みな気づき始めています。もちろん、小回りの効く自転車は、子育て中のお母さんにとっても便利で、欠くことの出来ない乗り物でもあります。日本でも、もっと自転車インフラの整備を考えるべきでしょう。
自転車インフラが充実すれば、カーゴバイクなどの、もっと子供を乗せやすい自転車、乗せて安定して安全な自転車、使い勝手がよく便利な自転車にも乗れるようになります。それは、子育て中のお母さんたちにとって大きな力となるのではないでしょうか。
政府も出生率を向上させるべく、少子化対策として、さまざまな子育て支援政策を掲げています。待機児童の解消も重要です。幼稚園や保育所、認定こども園等の職員配置の改善とか、地域子育て支援拠点事業の実施とか、病児保育やファミリー・サポート・センター、一時預かりなど、さまざまな施策を進めているようです。
そのような施策と比べたら、子育て支援としての直接的な効果は不明です。しかし、子供の転落事故を減らし、移動がより安全になり、子育て中のお母さんの日常の改善には大きく貢献します。政府には、子育て支援の面からも、自転車インフラについて考えてほしいものです。
ローマ法王が批難するまでになっているトランプ氏、存在感が際立ちます。本当に大統領になるのでしょうか。