March 11, 2016

迷惑駐輪は場所だけではない

日本では、毎年200万件以上の犯罪が起きます。


殺人や強盗、傷害のような凶悪なものから、器物損壊、賭博や贈収賄に至るまで、危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪などの交通犯罪も含め、実にさまざまな犯罪が起きています。2015年の犯罪白書によれば、そのうちの半数、50.9%を窃盗犯罪が占めています。

窃盗犯の内訳を見ると、強盗から空き巣、車上狙い、万引き、置き引きなど、いろいろなものがありますが、およそ4割、39.2%が乗り物盗となっています。その乗り物盗のうちの83%を自転車盗が占めます。窃盗全体に占める割合でも32.6%と、一番多いのが自転車盗ということになります。

犯罪白書犯罪白書

これは届出が出された件数です。盗まれても古い自転車だからとか、面倒だからなどの理由で届けない人も多く、実際には、もっと多くの自転車盗が発生していると思われます。自転車盗は、犯罪全体の中でも非常に多く発生している、言ってみればポピュラーな犯罪ということになります。

自転車泥棒は、それほど悪いという意識がなく、ちょっと拝借くらいの軽い気持ちで罪を犯してしまう人も少なくないのでしょう。多くはママチャリで、被害金額も大きくはありません。あまりに頻繁に起きているため、とくに悪質な例などでないと、ほとんど報道もされません。

犯人にしてみれば、建物や家屋に侵入する必要がありません。選ばなければ、公道や駅前などに、たくさんとめられていますし、中にはカギのかかっていないものもあります。ちょっとまたがって、走り出せばいいわけで、いわば「敷居の低い」犯罪ということも、件数が多い理由と言えるでしょう。

しかし、自転車盗も立派な犯罪です。有罪となれば10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が課されます。ただ実際に、自転車盗で懲役刑になることは、まずありません。初犯の場合などは微罪処分となる例も多いと思われます。ほかに悪質な事件も多い中、それほど重要視されていないのは確かでしょう。

自転車盗は犯罪そんな自転車盗ですが、単純な犯罪でありふれているから、被害額が比較的小さいからと言って、あまく見るわけにはいきません。もちろん、法治国家として犯罪を許すわけにはいきませんが、それだけでなく、社会的にも問題が多いことがわかっています。

少年犯罪の6割は窃盗ですが、その多くは自転車盗です。自転車盗は、その敷居の低さもあって、非行の入り口になることが知られています。軽い気持ちで自転車盗に手を染めた青少年が、それをきっかけに、より悪質な犯罪へとエスカレートしていくのです。

たかが自転車盗ですが、それを見逃していると、青少年を非行に走らせる原因となり、それが反社会的グループに加わったり、凶悪犯罪に手を染めるような犯罪者を生む可能性を広げることになるのです。重大な犯罪を犯させないため、その入り口、自転車盗の時点で非行の芽を摘むことが重要になります。

また、微罪処分されるような犯罪であっても、発生を放置していると、その地域の治安の悪化につながることが知られています。いわゆる破れ窓理論です。小さな犯罪であっても、それが多発していると治安が悪くなり、大きな犯罪を誘発することにもなるのです。盗まれた自転車が他の犯罪に使われることもあります。

高額なモデルを選んで換金する自転車盗もありますが、道端にとまっていたママチャリを盗んで、アシとして使い、別の場所で乗り捨てるという犯行も少なくありません。これだけでも所有者は発見が困難になり、駅前などに放置される自転車を増やすことになります。放置自転車の撤去費用を増やす要因でもあります。

自転車盗難防止その犯行件数の多さから、警察の事務処理だけでもコストがかかります。いちいち捜査は出来ないとしても、処理に人手をとられれば、他の犯罪捜査や検挙にも影響するでしょう。ありふれた犯罪と言えども、軽視したり、増加を座視するわけにもいかないわけです。

警察は、自転車盗を減らすため、防犯対策や啓発活動などを行なっています。ただ、いかんせん件数が多いのと、市民の間に、自転車盗の多さに対する危機感が薄いこともあって、なかなか効果が上がっていません。中でも一番の問題は、自転車にカギをかけない人が多いことでしょう。

地域によってもばらつきがありますが、盗まれる自転車の6割以上が無施錠と言われています。高額なスポーツバイクと違って、古い自転車だから盗む人はいないだろうとか、ちょっと用事を済ます間だけだからとか、あるいは単に面倒だからと、カギをかけない人が相当な割合になるのです。

カギをかけない人にしてみれば、盗まれて損をするのは自分なのだから、無施錠だろうが勝手だろうという論理が成り立ちます。確かにその通りではあるのですが、その行為が自転車盗を容易にし、敷居を下げ、非行の入り口としての犯行を誘発することにもなるのです。

結果として、社会的コストを増大させ、税負担が増加し、治安の悪化や凶悪な犯罪被害増加などの形で、自分の身にも返ってくることになります。社会の一員として無責任な行為であるのは間違いありません。自転車を利用する以上、せめて駐輪時には施錠することを徹底すべきです。

警察の中には、独自の取り組みをしているところもあります。


無施錠自転車に「安全ロック作戦」 名古屋・中村署

◆持ち主改心、賛同広がる

名古屋市中村区の名古屋駅周辺で自転車の盗難被害が多発していることを受け、中村署は無施錠の自転車を見つけ次第、ワイヤ錠を取り付ける「安全ロック作戦」に取り組んでいる。昨年八月の開始から半年以上がたち、取り組みは署外の団体にも広がってきた。 

無施錠自転車■プレゼント

作戦は、署員らが無施錠の自転車にワイヤ錠を取り付け、一〜二時間、近くで待機。自転車の持ち主が現れれば、その錠と鍵をプレゼントする。現れなければ、その場で外して回収する。

中村署によると、二〇一五年の管内(中村区)の自転車盗は六百四十八件で、県内四十五署のうち四番目、名古屋市内の署では二番目に多かった。被害は名古屋駅付近に集中し、管内の三割に上る。

「盗まれた自転車の半数が鍵をかけていなかった」。同署生活安全課の三石敬司課長は話す。これまで東京都足立区や宮崎県警が同様の方法で効果を挙げたことを知り、三石課長が発案。地域と協力して取り組むことになった。

■財産権は?

自転車の持ち主が立ち会わない状況で錠を取り付けるため、警察外から「財産権の侵害ではないか」との指摘もあった。だが、三石課長は「警察官が見張っているので、錠はすぐに取り外せる。署に連絡してもらってもいい」と言う。財産権の侵害には当たらないと判断し、作戦決行を決めた。

無施錠自転車昨年八月、中村区名駅一の自転車駐輪場で初めて実施し、無施錠の五台に錠を付けた。真夏の屋外で二時間、署員は立ちっぱなしで持ち主を待っていたが、この日は一人も現れず。二回目は同九月、同じ場所で行い、無施錠の七台中、一台の持ち主が現れた。

その後はスーパーやパチンコ店などで各社員らとともに取り組み、今月までに計七回。三十六台の無施錠自転車に錠を付け、このうち十三台の持ち主に錠と鍵を贈った。

無施錠だった理由を聞くと「面倒くさかった」「短時間しか止めないので大丈夫だと思った」という答えが返ってきたが、錠と鍵をプレゼントすると改心したという。署によると、これまで作戦への批判的な意見はなかった。

■波及目指す

「当初は警察官のみで活動してきたが、徐々に賛同していただける企業などが現れてきた」と、三石課長は手応えを感じている。パチンコ店などでつくる中村区遊技場防犯組合では、加盟する十七店舗が二月二十六日、一斉に実施し、署外でも作戦が展開されつつある。三石課長は「最終的な目標は、区内にあるすべての企業や店、学校に波及させたい」と意気込んだ。(2016年2月29日 中日新聞)


実は、この勝手にワイヤー錠をかけてしまうという作戦、記事中にもあるように、名古屋・中村署だけのものではありません。これまでにも、かなり以前から各地の警察署で行なわれています。ただ、全体から見れば一部であり、期間も限定なので効果は限られています。

自転車盗被害個人的に思うのですが、自転車への施錠を義務付けるような法律、もしくは条例などを制定してしまってはどうでしょうか。それを根拠法として、こうした取り組みをもっと徹底的に行なっていくのです。警察官は、無施錠の自転車を発見し次第、連絡先が書かれたワイヤー錠をかけるわけです。

記事のようなプレゼント作戦もいいですが、必ずしも改心するとは限りません。無施錠そのものを違反行為とすれば、その場で所有者を待つような手間もかかりません。発見したら、片っ端からワイヤー錠をかけます。所有者は、それを外してもらうため、交番などに出向かなくてはならなくなります。

罰金などはとらなくても、出向くのは面倒だからと、施錠する人の割合は上がるに違いありません。自転車の施錠割合が上がって、自転車盗の敷居が高くなれば、自転車盗の件数も減ることが期待できます。非行の入り口をつぶし、治安が改善され、社会的なコストも減るはずです。

最初は、たくさんの無施錠自転車にワイヤー錠をかける手間がかかりますが、無施錠だと面倒ということが浸透し、施錠割合が上がっていけば、手間は減っていくはずです。自転車盗の件数も減って、事務処理の手間も減るでしょうから、警察としても犯罪の抑止と省力化の一石二鳥ではないでしょうか。

別の犯罪に使用されることももちろん、なかには放置自転車の撤去・移送と一緒で、ワイヤー錠をかけらても、取りにいかない人もあるでしょう。その場合の処理は必要になります。ただ、それでも街中の無施錠の自転車を減らすことで、自転車盗の機会を減らせるぶんだけ意義があると思います。

自分の財物に施錠しようがしまいが個人の勝手、という自由も認められるべきではありますが、やはり犯罪抑止という公共の福祉のため、ある程度の制約を設けるのは仕方がないと思います。どこに駐輪しようと勝手というのが許されないのと同じように、無施錠は違反ということにしてもいいと思います。

自転車利用者としても、自転車盗が減るのは歓迎でしょう。多少面倒であっても、施錠するくらいは協力すべきです。たったそれだけのことで、非行に走る青少年を減らし、社会的コストが削減出来ます。まず私たちは、たかが自転車盗という意識を変えていくべきではないでしょうか。




あれから、はや5年が経ちました。あらためて災害に備える気持ちに慢心がないようにしないといけないですね。

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