雪国の冬の降雪期もその一つでしょう。一般的な自転車では、雪道の走行は滑って困難です。最近はファットバイクなどもありますが、雪に覆われる期間は、自転車を封印している人も多いに違いありません。基本的には海外でも同じですが、冬でもなんとか自転車に乗れないものかと考えた人がスウェーデンにいます。
エンジニアの、Mikael Kjellman さんです。彼が考えたのは、滑りやすい雪道、凍結した道を克服するため、4輪にするという方法です。さらに、降る雪を遮り、寒さをしのげるように、ベロモービルにするという結論に至りました。出来たバイシクル・カーが“
PodRide”です。
なるほど、4輪ならば転倒はしないでしょうし、スパイクタイヤを使えば滑らずに走行出来ます。ベロモービルならば、降雪や寒さもしのげます。もちろん普通の舗装路でも使えます。夏と冬でタイヤを履きかえれば、雪の降る地域でも、年間を通じて自転車が使えることになります。
言われてみれば当たり前のことですが、雪国向けのベロモービルという発想は、おそらく、これまでなかったのではないでしょうか。Kjellman さんは、試作したベロモービルを1年間に渡って乗り続け、十分に実用的であるとの確信を得て、
クラウドファンディングサイトでの資金調達に踏み切っています。
見た目、外観はデフォルメされた漫画のクルマのようです。ポップでかわいらしいデザインです。普通、ベロモービルと言うと、空気抵抗を極力減らそうと、リカンベントの寝そべった形で、車高も低いものが大半でしょう。しかし、“PodRide”は車高を高くすることを選択しました。
車高を低くして、寝そべった乗車姿勢にすると、乗る人の目線が下がり、リカンベントに慣れていない一般の人は乗りにくく感じるに違いありません。そこで、空気抵抗を考えるより、車高を高くし、普通の小型のクルマに近い目線の高さ、乗車姿勢にしました。そのほうが人々に受け入れられやすいだろうとの読みです。
車高の低いベロモービルは、リカンベントスタイルで脚力を最大限活かせると同時に、空気抵抗が少ないため速いスピードが出ます。“PodRide”は、あえて車高を高くして、それほどスピードは出ない代わりに、より実用性にこだわったのです。その結果、デザインもマンガのようなポップなものになりました。
電動アシスト機構を採用しており、時速25キロまではアシストが効きます。航続距離はおおよそ60キロだとしています。日常の近距離のアシとして使うには、十分なスペックでしょう。動画で見るとわかりますが、雪道の上でも、実に軽快に走っています。
車体を覆うフェアリングは、撥水性の高いファブリックを使うことで車重を抑えています。LEDを使ったヘッドライトやウィンカー、ストップランプなども装備しています。それだけでなく、雨や雪が降った場合のために、ワイパーまで備えています。
雨や雪が降ったり、室内外の温度差があると、曇って前方や周囲が見えにくくなりますが、ベンチレーションシステムとして、外気が取り入れられる構造もあります。さらに温風が吹き出すデフロスターまで搭載しており、冬の降雪期の見通しの悪さへの対策もバッチリです。
車体後方には小さなトランクまでついており、荷物を積むことも出来ます。もし、荷物を積むのにトランクだけでは足りない場合、トレイラーを牽引することも出来ます。太陽がまぶしい時のために、サンバイザーまで装備しているのは、ご愛嬌でしょうか。
乗り心地を良くするため、エアサスペンションを装備し、シートもクッションのいいものを選んでいます。通常のリカンベントやベロモービルの場合、ペダルをこぐ力が伝わる際のロスにつながりかねないので、敬遠しがちな装備ですが、それよりも実用性、快適性を優先しています。
雪国で積雪が多いと、道路脇に除雪された雪が積みあがり、道路の幅が狭くなってしまいます。そんな場合でも、ベロモービルならば車幅も狭いため、冬の雪国の細い路地などにも入っていきやすいはずです。クルマとは違った利点があって、日常のアシとしては、なかなか優れている面もあるのではないでしょうか。
日本の雪深い地域の細い道だったり、除雪した雪でクルマだと通りにくいような場所でも重宝しそうです。高齢者で免許を返上した後の交通手段として使うことも考えられますし、ガソリンスタンドが減っている場所でも、電動アシストであれば、自宅で充電出来ます。
快適装備満載、走りも軽快、これはなかなか魅力的なベロモービルではないでしょうか。日本では、ベロモービル自体が一般的に知られていないので、すぐに普及するとは思えませんが、雪国でのベロモービル、一つの選択肢として可能性を秘めているような気がします。
熊本で起きた大地震、今後の雨で土砂災害も懸念されますが、断続的に続く余震が早くおさまることを祈ります。
Posted by cycleroad at 23:30│
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