April 25, 2016

必要なので自作するしかない

シリアの情勢が混迷の度を深めています。


シリアの内戦は6年目に入りました。ジュネーブでの和平協議では主要反体制派が公式協議から離脱しました。政権側と反体制派の戦闘は激しくなっており、停戦の維持が危ぶまれています。さらにISも含めた三つ巴の戦闘の行方は、全く予断を許しません。

アメリカやロシア、トルコ、サウジ、イランにヨーロッパ各国の思惑と勢力争いが複雑に絡み合い、シリアの将来は混沌として見通せない状況です。ヨーロッパには昨年来、100万人以上のシリア難民が押し寄せ、それが欧州諸国の政治を揺るがし、テロ問題とも相まってEUの理念を揺るがす事態となっています。

シリア難民Photo by Foreign and Commonwealth Office,under the OGL License.

シリアの内戦で、国外へ逃れた難民は460万人に上ります。シリア国内で避難生活を送る人たちも700万人以上と言われており、国民の半分以上が難民となる深刻な事態です。シリアからの難民がヨーロッパを目指す様子が報道されていますが、近隣のトルコ、ヨルダン、レバノンにも多くの難民が押し寄せています。

ヨルダンでは、60万人以上が難民キャンプに収容され、さらに100万人以上がヨルダン国内で居住しているとされています。ヨルダンは国家予算の4分の1を難民支援に費やさざるを得ず、ヨルダン人への公共サービスにしわ寄せが行き、財政的にも深刻な状況に陥っていると言います。

Zaatari refugee camp,This image is in the public domain.

ヨルダンにあるザータリ難民キャンプ(Zaatari refugee camp)は、一番多い時で20万人、人数は変動していますが、今も8万から12万人の難民が暮らしています。人口で言うと、東京の国分寺市、千葉の成田市、大阪の池田市といった市に匹敵します。なんとヨルダンで第4の都市となる大きさだと言います。

難民キャンプと言うと、馴染みのない日本人がイメージするのは、大規模な避難所かも知れません。しかし、実際の難民キャンプは大きな街です。ザータリ難民キャンプも砂漠の中の街ですが、人口十万人規模の人が集中して居住している都市です。相当な広さがなければ、これだけの人数を収容しきれません。



収容されていると言っても、難民はテントの中で肩を寄せ合って食料が支給を待っていればいいわけではありません。必要な支給を受けるため移動したり、自分たちで調達する必要があります。ただでさえ人手の足りないヨルダン政府や国連、NPOのスタッフが、これだけの人数に食料を配って歩けるはずがありません。

キャンプが開設されて4年が経ち、ザータリ難民キャンプは、まさに街のようになっていると言います。キャンプ内の通路には、シャンゼリゼ通りなどと名前がつけられ、野菜や衣類、日用品だけでなく、家電や嗜好品などまで手に入る、大きな市場まで出来ています。

シリア難民 難民キャンプ

難民は、不自由ながらも、難民キャンプという街で、自分たちの生活を築いているわけです。水を汲んだり、支給される物資を取りに行ったり、不足はしていますが、場合によっては医療などのサービスを受けに行ったりすることもあるでしょう。これだけ広ければ、相当な距離の移動を余儀なくされることもあるに違いありません。

もちろん、ほとんどの難民はクルマなど持っていません。基本的には歩くしかありません。ただ、中には自転車を手に入れて移動している人もあるようです。広大な難民キャンプで生活していく上で、自転車は難民の貴重な移動手段となっているのです。

Photo by Mustafa Bader,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

中東の暑い場所ですから、もともと自転車を使う生活でなかった人も多いと思います。しかし、これだけの広さを移動するには時間もかかります。水や食料をはじめ、必要な物資を運ぶのにも、歩くより多くの物が素早く運べます。燃料も不要ですし、考えてみれば当然のことですが、自転車が役に立つわけです。

でも、シリアでの戦禍を逃れて来た人たちの中には、戦闘や爆撃、爆弾テロなどによって負傷している人もあるに違いありません。中には手足が不自由だったり、障害を負っている人もいるでしょう。つまり、ペダルをこいだり出来ない人もいるであろうことは、容易に想像できます。

UNHCR/C.

3年前にシリアから家族2人と共に脱出してきて、このキャンプで暮らす、Safwan Harb さんも障害を持っています。そのためキャンプの移動で非常に苦労してきました。そこで、Harb さんは、自転車を入手し、改良することにしました。市場で流通している電気部品などを集めて、なんと電動自転車を作りあげたのです。

The disabled refugee inventorThe disabled refugee inventor

元々、自転車を作っていたわけでも、自転車に詳しかったわけでもありません。しかも難民キャンプに収容されている難民という困難な立場にもかかわらず、自分で電動自転車を発明してしまったのです。まことに逞しいと言わざるを得ません。その様子をイギリスBBCが取材しています。

The disabled refugee inventorThe disabled refugee inventor

キャンプの中の移動は、生活していく上で、どうしても必要です。障害があったとしても、日々の移動は死活問題であり、そのために自転車を手に入れ、必要とあらば電動自転車まで自作してしまうバイタリティには、まさに脱帽するしかありません。日本の日常とは、あまりにも違う現実です。



平和な国、日本に住む私たちには、砲弾の飛び交う中を逃げまどい、国を捨てて難民とならざるを得ない状況というのは、なかなか実感しにくいものがあります。いつまで続くがわからない難民生活を、砂漠の中のキャンプで生き抜いていかなければならない境遇というのも、想像するに余りあります。

シリア難民

シリア難民のことはニュースで目にしますが、遠い中東での話であり、なかなか実感が沸かないのも仕方がないかも知れません。ただ、難民と言っても、6年前までは我々と同じように普通に暮らしていた人たちです。そう考えると、あらためて平和と、民主国家に暮らせることに感謝の念が沸いてきます。




新しいエンブレム、国民参画、透明性、公明正大と言うなら、せめて国民の意見集計を公表してもいいのでは?

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