その名も“
CYCLOTRON BIKE”、まるでSF映画に出てきそうな斬新なデザイン、近未来の自転車を思わせるような独創的なスタイルです。前後輪ともハブレスになっています。リムにはLEDが埋め込まれており、とてもインパクトのある外観となっています。
映画、「トロン・レガシー」に出てきたライトサイクルを連想する人も多いに違いありません。ネーミングも含め、大いに意識しているのではないでしょうか。世界初のハブレスのスマート自転車で、これこそサイクリングの未来であると、開発者は主張しています。
フレームの素材はカーボンファイバーで、空気力学的に、抵抗を最小限に減らす形に設計されています。ワイヤーやケーブルなどは、カーボンのモノコック構造のフレームの中に通されており、スッキリとした外観を実現しています。フレームサイズはS・M・Lの3種類から選べます。
チェーンは使われておらず、ギヤなども外に出ていないので、これまでのように、ほこりや砂などによるトラブルの懸念はないと言います。変速は電動で行なわれます。タイヤはチューブを使わない構造なので、空気が入っておらず、パンクもありません。
各種センサーを搭載することが可能になっており、スマホの専用アプリを使ってデータを収集出来ます。またナビケーションをはじめとする各種のサービスも利用可能です。盗難防止や、盗まれた時にGPSによって、位置を捜索する機能も搭載しています。
落車や事故などのアクシデントが発生したら、自動的に緊急通報を送信する機能もあります。最近関心が高まっているIT技術を使った機能も満載です。世界で最も先進的で、多機能で多目的、汎用性の高い、「スマート自転車」をミッションと考えています。
特徴的なのは、ハブレスの前後輪の空間、本来はハプとスポークがある部分の空間を利用できることでしょうか。例えば、ここに折りたたみ式のバスケットをはめ込むことが可能です。必要に応じてバスケットを広げ、たくさんの荷物を運ぶことが出来ます。荷物の積載が低い位置なので、安定するのが利点です。
後輪には、サイドカーのような、子供を乗せるチャイルドシートを取り付けることも可能です。やはり子供を乗せる位置が低いため、安定していて乗せやすく、安全性も高いのが利点です。左右2台を取り付ければ、同時に2人の子供を運べます。
前後輪をハブレスにしたことによる、この空間の利用方法は、いろいろ考えられます。電動アシスト機構や太陽電池など、各種用途をモジュール化し、必要に応じて交換・装着して利用するようなことも想定されています。このモジュール開発は外部と共同で行なうことも想定しています。
フレームにはオリジナルにデザインしたビニールシートをプリントして張り付けることが可能です。デザインのカスタマイズも思いのままです。そのほか、開発中のものも含めて、たくさんの機能、オプションが盛り込まれており、欲張りすぎではないかと思うほど盛りだくさん、意欲的な提案となっています。
たしかに斬新で近未来的なデザインですが、冷静に考えると、内容的には必ずしも新しいとは限りません。少ないながらも、ハブレスのタイヤを実現した自転車は過去にもありました。夜間の視認性を向上させるため、リムの部分を光らせたり、レーザーを路面に向けて照射するアイディアも初めてではありません。
今どき、カーボンのフレームは珍しくもありません。ご存知のとおり、電動のコンポは既に商品化されていますし、プロのロードレースの世界では、もはや当たり前のようになっています。もちろん、スマホのアプリと連動させた各種の機能は、昨今の提案のトレンドと言っても過言ではありません。
ハブレスの車輪の中心を荷物運搬用に使う自転車も過去に取り上げたことがあります。つまり、一つひとつは目新しくありません。しかし、過去200年の自転車の試行錯誤を全て結集して、“versatile”、何でも出来る自転車を作ろうというコンセプトなのです。価格は999ユーロから購入可能です。
乗ってみたわけではないので、軽々に判断は出来ませんが、一番気になるのは、その一番の特徴、すなわちハブレスというところでしょうか。チェーンを使っていないということなので、ギヤと、もしかしたらシャフトドライブなどを組み合わせているのかも知れません。
やはり、パワートレーンとしては、今のところチェーンを使ったほうが優れているのは否めないわけで、走行性能的に不利なのではないかという点が気になります。チューブを使わない独自のタイヤということで、乗り心地やメンテナンス性なども気になる点です。
もちろん、あえてハブレスにしたおかげで、その空間をモジュール化し、さまざまな拡張性、発展性を持たせるという楽しみがあるのも確かです。一長一短だとは思いますし、乗ってみなければわかりませんが、そのあたりの選択が妥当なのかどうかも興味をひくところです。
ハブレスを選択したことで、なんと言っても、目を引く近未来的なデザイン、斬新なイメージを獲得しているのは間違いありません。クルマなどでもそうですが、実用性や走行性能、経済性ばかりが選択の基準とは限りません。そうした面に全て目をつぶってスタイル、カッコよさが第一という人もいます。
その点で、ここまで思い切ったデザイン、今までの自転車とは一線を画したスタイルにしたと言うのは、どうしても似てきてしまう自転車のデザインに一石を投じるものと言えるでしょう。ハブレスにしなければ、獲得できなかった斬新なデザインという点で、その選択は必須だったのだと思われます。
現在、クラウドファンディングサイトで資金調達中ですが、すでに目標額に達しています。最終的に、どの程度の完成度、機能の実現がはかられるかは未知数の部分もあります。好き嫌いは分かれると思いますが、デザイン的な冒険と機能面でも欲張った、意欲的なチャレンジと言えるのではないでしょうか。
バングラデシュでテロが起き日本人も巻き込まれてしまいました。もはやどこで起きても不思議はないのでしょう。