その中で大きな部分を占めるのが、スピードの出し過ぎだと思います。直接的には発見が遅れたとか、運転ミスなど他の原因があったとしても、スピードが出ていたために防げなかった、スピードを出していなければ、被害が少なくて済んだというケースも多いはずです。
前々回、クルマメーカーの社会的責任という話を書きました。GPSやアクセル制御、自動ブレーキなどの技術を使えば、住宅街の細い道や通学路では速度を抑制したり、強制的に一時停止させることも可能なはずです。自動運転の実現は、信頼性の獲得までに時間がかかるので、
その前に出来ることがあるはずと書きました。
社会的なコンセンサスが醸成され、世論の非難を浴びるようになれば、クルマメーカーも動かざるを得ないと思いますが、実際には、そのような状況にはなっていません。一社だけ自主規制するのは事実上困難でしょうし、海外のメーカーまで含めて規制に合意するのは現実的でないのが現状です。
しかし、無謀なスピードでの走行や、ついつい速度を出し過ぎたことによる交通事故のリスクの増大は、交通事故防止、事故死者の減少の観点から見逃すことは出来ません。警察が速度規制を重視し、スピード違反の取締りに力を入れるのも理にかなっています。(やり方には異論もありますが。)
ただ、スピード違反の取り締まりと言っても、警察官の人員が限られている以上、限界があります。他の仕事もありますから、それだけに力を入れるわけにもいきません。地道な啓発活動や、交通安全教育に力を入れても、直接的な効果は大きくないのも事実です。
(↑従来型バンプ)
それでは、無謀なスピードを出すドライバー、周囲の歩行者や自転車を危険に陥れるような非常識なドライバーを防ぐ手立てはないのでしょうか。この課題に、新たな取り組みを始めている国があります。北欧のスウェーデンです。この国の各地の自治体に最近、少しずつ取り入れられつつある装置があります。
スマートなバンプ、“
ACTIBUMP”です。道路にわざと凹凸をつけることで、スピードを抑制しようというものです。もちろん、以前からバンプ、道路に段差をつけるための舗装、あるいは突起物を取り付けた道路はありました。日本でも一部、住宅街の道路などに見られます。
従来型のバンプは、スピードを出して通過すると、大きな衝撃を受けるので、ドライバーにスピードを落とさせる効果があります。しかし、一方で、設置出来るのは市街地など、常時低速で通過させても支障のないような道路に限られるという制約があります。
ところが、この“ACTIBUMP”は、幹線道路のような、普通の道路にも設置が可能です。なぜなら、制限速度で走っているクルマには、バンプとして作用しません。でも、ひとたび速度超過のクルマが通ろうとすると、装置が動いて即座に段差をつくり、通過した車両に大きな衝撃を与えるのです。
スピードを検知する部分と連動して瞬時に段差をつくり、スピードを出し過ぎているクルマにだけバンプになる仕組みです。段差の衝撃で、物理的にスピードを落とさせますし、経験したドライバーは、その不快感に、今後はスピード落とそうと思うはずです。事実、設置後は、速度違反車両が劇的に減ったと言います。
場合によっては、作動スピードを変更したり、調節することも出来ます。動画で見る限り、けっこうな衝撃があるように見えますが、スピード違反をしなければいいわけですから、ドライバーも文句は言えないでしょう。設置してあるのを知っている場所ではスピードを出さなくなるに違いありません。
設置が進めば、ドライバーは他の道路、他の場所でも設置してあるのではないかと、警戒するようになる可能性があります。極端な話、設置するうちの何割かは、ダミーであっても、スピードを控えさせる効果が期待できるかも知れません。そのぶん導入コストも減らせることになります。
横断歩道などの手前に設置することで、スピードを落とさないクルマに、物理的にスピードを落とさせるような使い方も出来ます。自転車と混在して走行するような道に設置してスピードを落とさせ、サイクリストの安全性を向上させるのにも役に立つとしています。
これならば、いちいちスピードの取締りをして、反則金を払わせるなどのステップを踏まずとも、直接、走行速度を実質的に低下させることが可能です。実際に、設置された場所での通過車両の平均速度は大幅に落ちています。今後普及と認知度が上がれば、警戒する人が増え、さらに平均速度が法定速度に近づくかも知れません。
ドライバーにしてみれば厄介に感じるでしょう。しかし、その場所で、規制速度まで落とすのは、事故防止という観点からして、確実にドライバー本人のためでもあります。スウェーデンでも、まだ一部に導入されているだけのようですが、効果は劇的だと言います。重大な交通事故が減少するのは間違いありません。
従来型のバンプが設置出来る場所、街中など以外でも、この“ACTIBUMP”ならば設置できるのは大きいと思います。必要な場所すべてに設置しなくても、あるかも知れないと思わせるだけで、ドライバー全般にスピード順守の習慣を根付かせ、交通事故の防止に大きな効果が期待できます。
必要なのは、導入の決断だけです。日本では道路整備において、クルマ優先の思想が厳然として存在してきました。多くの人の中で、無意識のうちにも常識のようになっています。その転換が必要だと思いますが、交通事故死者を減らすという当たり前の目的、最優先すべき課題の解決のためには、迷う余地はないような気がします。
海の日に続いて、8月11日が今年から山の日になりました。あと唯一祝日のない6月に、川の日があってもいいのでは?と毎年書いてます(笑)。
Posted by cycleroad at 23:30│
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