October 22, 2016

自転車グッズの意外なお手本

生物の世界は驚きに満ちています。


身近で見慣れた生物の中にも、実は驚きの仕組みや能力が隠されていたりします。ごく普通に見える生物の身体の一部が、実は優れた機能を持っていたり、思いもよらぬ構造が隠されていたり、効率の良い仕組みを有していたりします。それらは、より優れた製品づくりの教科書にされています。

例えば、速度が速くなるに従って難しくなる新幹線の騒音の低減に、カワセミの嘴やフクロウの羽根の構造が応用されています。ハスの葉から撥水加工、蛾の眼から無反射フィルム、カモメの羽根から静音のファン、サメの肌から競泳用の水着、カタツムリの殻から汚れないタイルなど、さまざまな製品が生まれています。

Photo by Toshinori baba,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by 	Tennen-Gas,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

どの生物も、長い年月を経て進化してきた中で、そのような優れた仕組みを獲得しました。逆に言えば、優れていなければ生き残れなかったかも知れません。人間には真似のできないような高効率でエネルギーを利用したり、生き延びるための戦略となっている仕組みも少なくありません。

言うまでもなく、自然界は弱肉強食の厳しい世界です。長い間、餌がとれない時もあれば、天敵に狙われることもあります。適切な生存戦略を持ち、優れた能力を発揮する種だけが生き残れます。身体の構造や能力を必死に発達させ、長い年月、多くの種が淘汰される中を生き残ってきたのでしょう。

Photo by www.birdphotos.com,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.スカンク This image is in the public domain.

天敵から捕食されないためにも、いろいろな戦略があります。優れた移動能力で逃げるもの、擬態して相手を欺くもの、甲羅や針などで防御するもの、身体の大きさや攻撃能力を身に着けるもの、毒などを持つことで襲わせなくするもの、身体の一部を切り離して目くらましにするものなどもいます。

ユニークな生存戦略を持つものもいます。よく知られているように、スカンクは、臭いおならで捕食しようとする敵を撃退します。正確には、おならではなく、肛門傍洞腺(肛門嚢)から放出する分泌液の悪臭なのですが、この臭いのあまりの強烈さに、捕食者は襲う気を失くすわけです。

SKUNKLOCKSKUNKLOCK

さて、このスカンクの生存戦略を自転車用品に応用することを思いついた人がいます。アメリカ・サンフランシスコに住む、Daniel Idzkowski さんです。彼は、盗難防止用のU字錠に、この仕組みを取り入れたのです。その名も、“SKUNKLOCK”(スカンクロック)です。

施錠されたU字錠を切断しようとすると、中から強烈な催涙ガスが噴き出します。盗もうとした泥棒に、吐き気を催すような強烈なガスと有害な物質を浴びせ、盗むのを断念させるというものです。まさに、スカンクの敵に対する撃退方法そのものです。

ちょっと聞くとジョークのようですが、考えてみれば、なかなか上手い方法です。どれくらい強烈なのかわかりませんが、切断の途中でそんなガスが噴き出せば、悶絶して切断を続けるどころではなくなるでしょう。盗まれずに済む可能性は高いと思われます。

SKUNKLOCKSKUNKLOCK

泥棒にしても、わざわざ悶絶するような目に遭いたくありません。スカンクロックを知っていれば、犯行を思いとどまるに違いありません。ほかに、いくらでも有害物質が噴き出さないロックで施錠された自転車があるわけですから、あえて手を出そうとは思わないでしょう。結果として盗難防止効果が発揮されるはずです。

言われてみれば、なるほどと思いますが、これはなかなか思いつかないのではないでしょうか。スカンクは誰でも知っていますが、それを自転車の盗難防止、自転車盗の撃退に使うとは、よく発想したものです。現在は、クラウドファンディングサイトで資金調達を目指しています。

SKUNKLOCKSKUNKLOCK

もともとU字錠の盗難防止能力は相対的に高いとされていますが、今どきの窃盗犯は、持ち運びできる電動ノコギリを用意しています。プロが使うような工具を用いれば、ものの数分で切断されてしまいます。まさか、白昼の往来の多いところで、電動ノコギリは使わないだろうと思えば、そんなことはありません。

白昼の街角で電動ノコギリを使っていても、いちいち気にも留めない人がほとんどでしょう。むしろ堂々と切断していれば、カギを失くした持ち主だと考えるかも知れません。いずれにせよ、その行為を見て、わざわざ通報するような人は少ないでしょう。



仮に怪しいと思っても、自分の自転車ではありませんし、あえて問いただす人は多くないと思われます。不審に思ったとしても、あっと言う間に切断して盗んでしまうと言いますから、通報も間に合わないでしょう。U字錠を使うことで、多少手間はかけさせられるかもしれませんが、自転車盗の被害は防げません。

もちろん、スカンクロックでも100パーセント防げるわけではありませんが、途中で断念させる可能性は高まると期待されます。商品化されて知られるようになれば、あえて狙わないと思われるので、そのぶん防犯効果は高まることが期待できます。

SKUNKLOCKSKUNKLOCK

ロックの中に、加圧されたガスが注入されているため、切断しようとすると噴き出しますが、日常の使用で噴出することはないと言います。その安全性は保証されています。もちろん、U字錠自体、硬質な炭素鋼で出来ており、簡単には切断されない現状で最高レベルの素材だと言います。

特徴的な白と黒のツートンカラーが、スカンクを連想させます。もちろんスカンクロックと大きな文字で書かれています。知らない犯人には意味がありませんが、このスカンクロックが知られるようになれば、この見た目とロゴだけで防げるようになるかも知れません(笑)。

動物をお手本に、さまざまな製品が開発されていますが、自転車用のU字ロックに応用するとは、意表を突くアイディアです。なかなかユニークな発想だと思います。ほかにも、自転車用品に応用できるような、生物の仕組みは、まだまだ埋もれているかも知れません。




鳥取県中部で強い地震が発生しました。熊本の時のように、さらに大きな地震が起こらなければいいのですが。

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