その多くはクルマが絡む事故ですが、自転車同士の事故も、程度の軽重はともかく、相当数起きているはずです。ただ、自転車同士の場合、警察に届けられていないものが多く、正確な数はわかりません。実際に警察に届けようとすると、警察官から当事者同士での示談を勧められると聞きます。
例え、自転車同士であっても、自転車は軽車両であり、れっきとした交通事故であるのは間違いありません。しかし、軽微な事故を正式な手続きで処理していては手間もかかるため、特に件数の多い都市部などでは、警察も示談にさせ、扱いたくないというのが本音なのでしょう。
試しに、自転車同士の事故で検索してみると、さまざまな事例が出てきます。事故が決して少なくないことが推察されます。Q&Aサイトに出てくるようなものは、比較的軽微なものが多いようですが、なかには、ネットで相談している場合ではないような、深刻な結果を招いた事故も起きているはずです。
クルマが絡む場合と違って、自転車同士の事故の場合、即死するような事故は少ないと思います。そうなると、マスコミに報じられることもないでしょう。しかし、即死とはならないまでも重篤な負傷をし、場合によっては、後に亡くなるような例も起きているかも知れません。
クルマ向けのロードサービスなどをしている社団法人、日本自動車連盟(JAF)が、
自転車同士の事故の検証を行い、結果をサイトに掲載しています。それによれば、自転車同士の出会い頭衝突事故であっても、地面に頭部が叩きつけられた場合、深刻なダメージを負う可能性があることが示されています。
ダミーによる衝突テストで、ダメージの度合いを表す頭部損傷基準値(HIC)を計測したところ、15,951という非常に高い数値が計測されたと言います。幼児ではHICが570以上、成人では700以上の場合、頭蓋骨骨折となる可能性があり、700〜2,500になると死亡する可能性がある数字なのだそうです。
700〜2,500で死亡の可能性があるのに、15,951、です。時速20km程度のスピードでの自転車同士の衝突でも、頭蓋骨骨折、急性硬膜外血腫、脳挫傷などによって、重度の後遺症もしくは死亡する可能性が十分にありえることを示しています。
なんとなく自転車同士の事故では、それほど重篤な怪我を負うような事故にはならない気がしていますが、とんでもない認識違いということになります。実際、出会い頭でブレーキなしに衝突することもありえます。打ち所にもよるとは思いますが、自転車同士とは言え、決して侮れない危険が隠れているわけです。
JAFは、この結果を受け、次のようにまとめています。
・速度が低めの自転車同士の衝突や停止時の転倒でさえ、頭部が地面に叩きつけられる際の衝撃は大きく、ヘルメットを着用していない場合、致命傷になる可能性が高い。
・ヘルメットは万能ではないが、最も重要な頭部を守るための唯一の安全装備である。
・子供は骨の発達が未熟で、より骨折しやすくなるので、必ずヘルメットを着用させる。
・自転車事故の原因になる、速度超過や一時停止にも注意して、事故そのものを防ぐことも大切である。
・ヘルメットは「SGマーク」など安全基準に適合したもので、サイズの合ったものを選びましょう。
さらに全体のまとめとして、『ヘルメットを着用することで、事故や転倒時の頭部の被害を軽減できる。』としています。ごく常識的で、予想された結論ではあります。確かに、この結果を受けて、ヘルメットをかぶるよう促すのは間違っていないでしょう。
事故が起きてしまった場合に、ヘルメットで軽減できる可能性があるのは、その通りでしょう。それを否定するつもりはありません。ただ、これがクルマの事故だったら、シートベルトをして、エアバッグのついたクルマに乗りましょうで終わるでしょうか。
もっと原因を分析したり、事故が起きる状況の改善や、事故防止の方法を考察したり、提言したりするでしょう。クルマの連盟ですから仕方がないですが、ヘルメットをかぶれ、だけでは結論が安易です。自転車同士の出会い頭の衝突事故の起きる原因も、速度超過と一時停止だけでしょうか。
私は専門機関ではないので、詳細なデータを伴う検証は出来ません。ただ、ふだん自転車で走行して目にする状況などを元に考えると、大きな要因は、自転車の逆走、すなわち右側走行と、一時不停止なのではないかと思います。このようなルールを守らない利用者の多いことが、法令を遵守する利用者の脅威になっています。
わかっていて違反をするような不届き者ばかりではありません。子供を乗せたお母さんなどが、平気で逆走したり、路地から飛び出したりしています。自転車走行のルールを知らなかったり、知っていても全く意識していないのでしょう。そんな人が、それこそ履いて捨てるほどいます。
この状況を座視し、放置しておいていいのでしょうか。警察や自治体も、クルマの事故に対しては敏感に反応し、対策を立てたり、予算をとったりしています。事故が多い場所には標識や信号、構造物などの設置をしたり、取締りを強化したり、いろいろな手を打っています。
その背景には、悲惨な事故の報道を受けた市民からの突き上げ、世論や寄せられる批判などもあるのでしょう。しかし、自転車による事故でも悲劇は起きているはずです。即死ではないので大きく報道されず、不作為への批判は少ないかも知れませんが、重篤な後遺症に悩むような人もいるはずです。
それを思えば、クルマの事故防止対策だけでなく、自転車事故の対策にも、もっと目を向けてもいいのではないでしょうか。たしかにクルマの違反と比べれば、相対的に軽微かも知れませんが、ママチャリのお母さんの逆走を許すべきではなく、その防止を考えるべきではないでしょうか。
私は、このような自転車の通行が無秩序で混沌とした状況に陥っている大元の原因は、自転車の歩道走行にあると思っています。自転車で歩道を走り、無意識のうちにも、歩きの延長のようになって、交通法規を意識せず、自由に走り回っていることこそが、この状況を招いていると思います。
これが例えばオランダなら、生まれた時から、自転車は車道走行が当たり前です。クルマやオートバイで通行するのと同じように左側通行です。(オランダでは右側ですが。)それが習慣になっており、あえてわざわざ危険で走りにくい逆走をすることはありません。
もちろん、交通ルールを守らない人がいないとは言いませんが、自然に秩序が出来ています。徒歩で移動するのとは違い、自転車であっても車両として車道を通行します。交差点ではクルマと同じで、一時停止や安全確認をします。それが当たり前で、しなければ事故になることは、言われなくてもわかっています。
日本でも、もともと自転車は車道走行でした。それが、高度経済成長期にクルマとの事故の増加が問題とされ、道路整備が追い付かないことを理由に、緊急避難措置として自転車を歩道走行させたのです。そして交通行政の怠慢で40年以上にわたって、そのままにしてしまいました。
40年以上も続けていれば、歩道走行が当たり前になってしまいます。歩道だったら右側だろうが駅前広場だろうが関係ありません。歩いているのと同じ感覚で、方向を考えることもなく、特に交通ルールを意識することなく走っているのです。これが、自転車のルールが守られない元凶だと思います。
自転車同士の出会い頭などの事故を防ぎ、死亡したり重篤な後遺症を負わないため、負わせないための対策はいろいろ考えられるでしょう。しかし、まずは交通行政の痛恨の過ちを正すのが先決です。自転車を車道走行させるべくインフラを整備し、自転車レーンを設置すべきだと思います。
今は、車道でも平気で逆走する人が大勢いますが、まずは自転車レーンを設置し、路面標示をし、左側通行を徹底します。すぐには無理でしょうが、どこでも車道走行が当然になり、自転車レーンを表示された方向に走行するのが当たり前になってくれば、自然と秩序も出来てくるに違いありません。
自転車レーンのない細い道でも、無意識に左側通行する習慣が出来てくるはずです。右側通行する人がいなくなれば、出会い頭の衝突は相当に減るでしょう万一、飛び出して来ても、左側通行なら、まだ対処する余地があります。右側通行していると一時停止の標識も目に入りませんが、きちんと左側通行していれば見えます。
るちろん、一朝一夕にはいかないでしょう。40年以上、間違ったことをさせてきたのだから仕方ありません。しかし、本来あるべき秩序を形成し、根本的に事故防止を図るには、遠回りであっても、正しい車道走行を徹底させるしかないと思います。
自転車レーンは、単に自転車が走行する空間というだけでなく、車両として通行するという本来当然もつべき意識を持たせ、左側通行という最低限必要な習慣を身につけさせ、自転車走行の秩序を形成するための対策にもなるはずです。国交省や警察庁、自治体の担当部署には、ぜひ考えてほしいと思います。
「レガシーはお金の問題じゃない、心の問題」意味がわかりません。五輪施設見直しに関して川淵三郎氏の発言が反感を買っているようです。成績を残すことより新たな施設を作ることが大切なのでしょう。エゴ丸出しですね。