November 30, 2016

定番商品が置き換わる可能性

定番となっている自転車用品は少なくありません。


ライトやケーブルロック、インフレーター(空気を入れるポンプ)など、デザインはメーカーによって多少違いますが、構造や機能などは昔からあまり変わっていません。時々、新製品が出ないわけではありませんが、基本的な部分は同じで、定番となっているアイテムが多いと思います。

ヘルメットもそうです。素材や加工技術は多少進化しているとしても、構造や形状など基本的な部分は、あまり変わりません。最近はIT技術など盛り込んだ新しいコンセプトのものが発表されたりしますが、実際に市場に出回っているのは、定番のものがほとんどです。

ただヘルメットの場合、定番とは言っても、かぶる人と、かぶらない人に分かれます。国や地域によって、装着が義務付けられているところもありますが、自由なところが大半です。趣味でスポーツバイクに乗る人はともかく、欧米諸国も含め、街でヘルメットをかぶっていない人が多い国はたくさんあります。

EcohelmetEcohelmet

事故や落車による頭部の怪我は致命傷になりかねないこと、ヘルメットが頭部を保護するのに有効なこと、万が一に備えて、ヘルメットをかぶったほうがいいことは、誰でも理解しています。しかし、それでもかぶらない人が多いのは、必要と感じていない人が多いということなのでしょう。

髪型が崩れるとか、持ち歩くのが面倒、蒸れて暑い、自分に似合わない、格好が悪いなど、いろいろ理由もあるに違いありません。行政などは装着を推奨しますが、法令で決められてもいないのに強要するわけにもいきません。かぶりたくない人、必要性を感じてない人にかぶらせるのは困難です。

ただ、かぶりたいけれど、持ってきていないから、かぶれないということもあります。例えば観光客や、訪問した人が出先で自転車シェアリングを利用するような場合です。持ってこなかったからと言って、必要になるたびに購入するわけにもいきません。仕方なく、かぶっていない人もいるはずです。

EcohelmetEcohelmet

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そんな隠れたニーズがあるのではないかと考えた人がいます。ロンドンで工業デザインを学ぶ大学生だった、Isis Shiffer さんです。紙でヘルメットを作ることを考えました。出来上がったのが、この、“Ecohelmet”です。再生紙を利用したエコなヘルメットです。

クリスマスの飾りや、飛び出す絵本などに使われているような、広げると立体的になる構造になっています。紙がハチの巣状、ハニカム構造になるため、強度が出ます。なんと、こんな紙製なのに、ヨーロッパの安全基準をクリアする耐衝撃強度を備えているというから驚きます。

折りたためる構造なのも長所です。たたむと、バナナより多少大きいくらいの大きさになります。バッグにも入りますし、普通のヘルメットのようにかさばりません。紙ですから、重いこともありません。持ち運びやすいというのは、大きな長所です。

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さらに、値段が安いのもメリットです。1つ5ドルほどになる予定です。これならば、旅先でも気軽に購入出来るでしょう。紙なので、従来のものより耐久性は劣りますが、たたんで持ち歩けば、繰り返し使えます。一度で使い捨てというわけではありません。

紙なので、水に弱いのは弱点です。しかし、表面がコートされており、雨の中で使っても3時間程度は持つと言います。コーティングしている素材も生分解されるので、自然環境への負荷も少なくなっています。この点でもエコヘルメットの名に反しません。

かぶった際の見た目も、遠くから見たら、紙とはわからないかも知れません。普通の自転車用ヘルメットより単純な形なぶん、カッコ悪いと感じる人もあるとは思いますが、値段といい、たためる構造といい、その欠点を補ってあまりあると思います。

EcohelmetEcohelmet

見てしまえば、誰でも考えつきそうに思えますが、なかなか紙でヘルメットを作ろうとは思わないでしょう。この、“Ecohelmet”は、有名な、“International James Dyson Award”の2016年の最優秀賞に輝いており、優れたアイディアとして高く評価されています。

紙だと頼りなく感じてしまいますが、ヨーロッパの規格をクリアしてるわけですし、プラスチックと発泡スチロール等で出来た普通のヘルメットと、そう変わらないのでしょう。そもそもヘルメットは消耗品ですから、期間は短くなるとしても、一定の期間で買い替えが必要という点でも変わりません。



自転車シェアリングを導入している都市では、貸しヘルメットを用意しているところもあります。しかし、他人が使ったものは抵抗があるので、一回ごとに洗浄して再包装するコストがかかっています。洗浄や再包装に必要なエネルギー等を考えれば、必ずしも従来型を繰り返し使うのがエコとは限りません。

これは、なかなか画期的なヘルメットと言えるのではないでしょうか。アイディアと、実際の受け止められ方は別なので、これがどのくらい広く受け入れられるかはわかりません。でも、新しいタイプのヘルメットとして可能性を秘めていることは間違いないと思います。



従来のものと違って、使い捨てという印象があるのは否めません。しかし、使い捨てタイプのものが、繰り返し使われるタイプのものより、重宝され、世の中の定番になるような例は多々あります。すぐ思いつくのが紙コップや紙皿ですが、通常の食器が使いづらい場面では当然のように使われています。

ネルドリップの布フィルターのほうが美味しいかも知れませんが、今は紙のコーヒーフィルターのほうが多く使われています。昔は桐箱とか、茶箱のような木の箱だったのかも知れませんが、今は紙を使った箱や梱包などが、私たちの生活や流通の中で、欠かせないものとなっています。

使い捨てライターが登場した頃は、オイルライターやガスの充填式ライターと比べて安っぽく、笑われていたのかも知れませんが、今では当たり前のようになっています。万年筆を使う人もいますが、便利なボールペンが圧倒的多数となり、多くの場面で置き換わっています。

EcohelmetEcohelmet

そう考えると、この“Ecohelmet”が、従来型のヘルメットに置き換わる可能性もないとは言えません。もちろん、耐久性や使い勝手などの点で、従来型も残っていくでしょうが、手軽で、折りたためる利便性、値段の安さ、十分な耐衝撃性能など、そのポテンシャルは十分に備えている気がします。

もちろん、あまり普及しない可能性もあります。ただ、定番の商品が大きく変わるのは、技術の進化やハイテクによるとは限りません。手軽で、安くて、折りたためて、紙製といった、従来のものと大きく違う商品性こそが、ヘルメット概念や買い方、使い方を変え、定番商品をガラリと変えるかも知れません。




結局、五輪施設は元のまま、五輪後の赤字が懸念されます。いっそ競技団体に施設を運営させたらどうでしょう。

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