インド南部のバンガロールに住む、Gandharv Bakshi さんも、その一人です。バンガロールは、カルナータカ州の州都で、南アジア有数の世界都市でもあります。都市圏の人口が1千3百万人にも上り、近年高い経済成長を続けていますが、インドの他の都市と同じように、慢性化する大渋滞が悩みの種です。
クルマで通勤するより自転車のほうが速いので、Bakshi さんも自転車通勤をしています。朝夕好きなサイクリングが出来て渋滞も回避できる、いわば趣味と実益を兼ねた自転車通勤を大いに楽しんでいますが、毎日のことなので、いろいろと懸念や不便を感じることもあります。
日頃から、自転車での通勤をもっと安全に、そして便利にしたいと感じていました。バンガロールは、新興国として人々の起業熱の高いインドの中でも、起業家を多く輩出してきた文化で知られています。Bakshi さんも、自分でビジネスを始めようと考えた一人です。
彼は、ふだん感じている不満や不便を解決するような、サイクリスト用のバックパックを製作したいと考えました。サイクリングを愛する人たちが、安心して通勤などで自転車に乗れるようにするためです。自らもサイクリストであると同時に、起業家として、自転車文化を広める伝道師になりたいと望んだのです。
出来上がったのが、こちら“
Aster”です。夜間でも安全に走行できて、事故に遭う人を減らすための工夫が満載です。視認性を向上させるため、反射材が大きくプリントされ、バックパックの背面にはテールライトがついています。サイドにもライトが配置され、側方からの視認性にも配慮しています。
バックパックを背負うとき身体の前面にくる、ショルダーストラップの部分にもライトを取り付けたのは、前方のクルマのドライバーが、バックミラーで見た時、サイクリストの存在を確認できるようにするためです。急な右左折や進路変更、停止、不用意にドアを開けるといった危険を減らす効果が期待できます。
また、背面にはモーションセンサーによって減速すると自動で点灯するブレーキランプがついており、追突される危険性を軽減します。さらに、右左折や進路変更を知らせるためのウィンカーまで搭載しました。ウィンカーは、ハンドルバーに取り付けたスイッチから無線(Bluetooth)で操作するようになっています。
これらのライト類の電源としてUSBで充電できる、4,000 mAhのビルトインバッテリーが搭載されています。これによって、10〜15時間という十分な時間、バッテリーが持ちます。さらに、手持ちのスマホのアプリに、バッテリー切れのアラームを送るようになっており、電池切れを防止します。
アプリは、明るさを調整したり、照明類のオプション機能を操作するだけでなく、盗難防止アラーム機能も搭載されています。ハンドルバーに取り付けた、ウィンカー操作用のユニットに加速度センサーが内蔵されており、自転車が動かされた場合にアラームを発信することが出来ます。
バックパックとしての機能も充実しています。容量は、18Lと24Lの2種類、ヘルメットホルダーや、U字ロックを取り付けるホルダーもついています。スマホ用のポケットやジッパー付きのボトルポケット、レインカバーも用意され、イザという時のために、ホイッスル付きのバックルも装着されています。
ノートパソコンとバッテリーチャージャーを収納できる専用ポケット、着替え用の服や、靴を入れることが出来る着脱式ポケット、自転車用の携帯工具やパンク修理用キット、スペアのチューブなどを入れるポケットなども用意されており、弁当も入るようになっています。
また、緊急時の情報スロットが、目立つように取り付けられており、もし事故に遭った場合には、救急隊や医療関係者が、必要な情報を入手できるようになっています。血液型やアレルギー、緊急連絡先など、必要な情報をあらかじめ準備しておくわけです。
特徴的なのは、ジッパーによってフラットな状態にまでフルオープン出来る形状でしょうか。この機能によって、重量や形状などを見ながら、上手にパッキングすることが可能です。中身がデコボコになったり、重量が偏るなどして、背負いにくくなることを防げます。持ち物を整理したり、チェックするのも容易です。
もちろん撥水性の高いTPU加工がされており、防水機能も万全です。表面は汚れが落ちやすい加工なので掃除もラクです。ジッパーの部分も防水になっているので、内部に雨水などが侵入しないようになっています。まさに至れり尽くせりの仕様と言えるのではないでしょうか。
現在、クラウドファンディングサイトで資金調達を行っていますが、すでに目標額に到達しており、購入も可能になっています。これは、サイクリストにとって、特に自転車通勤などで荷物を持ち運ぶ必要がある人にとっては、なかなか魅力的なバックパックではないかと思います。
この“Aster”、世界で最も安全なサイクリング・バックパックという触れ込みです。ネットで見ただけでは、ライトのついたバックパックの効果や、使い勝手まではわかりません。しかし、開発者自身が自転車好きで、自転車通勤をしており、製品の開発に情熱を持っていることを考えると、期待できそうです。
インド・バンガロールの自転車環境、交通状況等は、日本と違う部分もあるでしょうが、おそらく、サイクリストの不満や懸念の多くは共通すると思います。細かいところまでの工夫、行き届いた配慮は、自らもサイクリストならではのこだわりと言えるでしょう。
最近は、クラウドファンディングサイトなどのおかげで、誰でも自転車用品を企画、開発、製造販売できる道が開けています。そして、世界中に自転車好きがいます。自転車に乗る環境をよくしたい、安全にしたい、便利にしたいと情熱を持っている人が大勢います。
もちろん、既存メーカーの開発者も自転車に乗って、日夜考えているかも知れません。でも、考える人の数は多いほうがいいに決まっています。世界中のたくさんの自転車乗りの知恵やアイディアが広く発信され、刺激しあい、新しい製品が生まれてくる状況は、自転車用品をより良いものにしていきそうです。
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