ほかの人とつながる手段としてだけでなく、情報源やメディアとしても、その存在感を増しています。アメリカのトランプ次期大統領も、今のところ情報発信にツィッターを多用していますし、SNSが発信源のニュースが世間を賑わせることも増えてきました。
最近は、何か事件や事故が起きた際、現場にいた市民が写真や動画を撮影し、すぐSNSて発信する事例も増えています。それがテレビのニュースで使われることも珍しくなくなってきました。ニュースソースが増えた形となっていますし、災害発生時などの情報伝達にも大きな威力を発揮しています。
これまでであれば、決して広くは伝わらなかったようなローカルな出来事、マイナーな話題も、SNSで話題になって拡散し、そけをマスコミが取り上げ、広く伝わるケースが出てきました。世界中の小さな出来事が、居ながらにして、リアルタイムに近い形で伝わることもあります。
イギリスは北アイルランドのアーマーという街に住む9歳の少年、James Brewster 君は、自転車を盗まれてしまいました。それは彼が大事にしていた愛車であるばかりではなく、去年亡くなった彼の父親に買ってもらった、思い出の自転車でもあったのです。その落ち込みようは半端ではなかったと言います。
彼の母親、 Una Magee Brewster さんは、自分のFacebookに、そのことを書き、泥棒に対して訴えました。
私は、ここ数日の間、家の前を通る人に向かって訴えています。私の息子の銀色の自転車を盗んだ人が、どうか返してくれるようにと。
事情を説明させてください。あなたは一年前に、父親を亡くすという、これ以上ない悪夢のような経験をした子供に、さらなる苦しみを与えたのです。その自転車は、息子の父親からの贈り物でした。
あなたに、もし思いやりの心があるならば、これ以上、何も言いませんから、どうか自転車を返してください。
新しい自転車を買って代わりにすることの出来ない、唯一無二の特別な自転車であることを訴えたのです。すると、家の前の張り紙を見たのか、Facebookを見たのかわかりませんが、なんと3日後、ちょうど父親の命日の日に自転車が返ってきたのです。James 君も驚き、涙を流して喜んだのは言うまでもありません。
盗まれた自転車が返ってくるなんて、なかなかありません。そんな中、父親の思い出のつまった特別な自転車が、奇跡的に返ってきたという事実に多くの人が喜び、この小さな事件が拡散したようです。
マスコミが取り上げ、世界中に広がったというわけです。
もし犯人が、Facebookを見て返してきたのであれば、何らかのつながりのある人物だった可能性があります。子供用の自転車を盗んだということは、子供だったのかも知れません。しかし、いずれにせよ、犯人が改心して返してきたのだとすれば、ちょっといい話と言えるでしょう。
enfant velo
フランスのナントに住む、Philippe Ricolleau さんは、郵便配達員をしています。毎日自転車で配達している、Ricolleau さんの後を付き従うのは、愛犬の、Prunelle です。特に気にする様子もなく、どんどん行ってしまうご主人の後を、おとなしくついて行きます。
10年も前からのことで、地域の人には見慣れた光景でした。愛犬が1歳になった頃、彼女は家で、独りぼっちで留守番するのに退屈するようになりました。そこで、Ricolleau さんは仕事に連れて出かけるようになったのです。地域の人にも愛されていましたし、多くの人が好感を持って見ていました。
ところが、今年の夏ごろ、この事実を勤務先の郵便局が知ることになります。郵便局は、保安上の理由から、Ricolleau さんが愛犬の、Prunelle を配達に連れていくことを禁止しました。これまでは把握していなかったものの、事実を知った以上、認めるわけにはいかないと言うのです。
郵便局にしてみれば、禁止は当然の措置なのでしょう。もし、その犬が人に噛みつきでもして、怪我をさせたらと考えます。場合によっては、郵便局の責任が問われるに違いありません。事実を知ってしまった以上、見て見ぬふりというわけにもいかないのでしょう。
しかし、この決定を知った地域の人たちは憤慨します。みんなから愛され、何も害を与えたりしたことのない、この老犬に対する仕打ちを撤回するよう、
郵便局に請願する署名サイトまで立ち上がりました。動画が作成され、署名した人は、2万6千人以上に上っています。
Ricolleau さんの担当する地区の世帯数がどれくらいあるのかわかりません。しかし、2万6千人というのは、相当な数だと思われます。地域の郵便配達員と一緒に配達に来る愛犬が、地域の人たちから、いかに愛されていたかわかります。
この小さな話も、
FacebookなどのSNSで話題となって拡散し、大手メディアが取り上げるまでになりました。ニュース性という意味では、さしたる意味はありませんが、人々の共感を呼んだ話題であったことは間違いないでしょう。今後どうなるかはわかりませんが、一緒に配達出来るようになってほしいものです。
SNSは急速に普及し、人々の生活の中に入り込んでいます。場合によっては、誰かの発信が非難の対象となり、いわゆる炎上したりする一方、これまで知られことのなかった問題が明らかになることもあります。SNSでの告発によって、企業を追い詰めるような問題に発展することもあります。
例えば、小さな不祥事であったとしても、その後の企業の対応や姿勢によっては、消費者の怒りを買う事態に発展しかねません。これまで、泣き寝入りしたり、少人数ではどうしようもなかったことでも、事態を変えるような力を持つ場合があります。その点では、市民の力を大きく高めたツールと言えるでしょう。
便利ですし、これまで、知り合うことの出来なかった人々と、何かの共通点を通じてつながることが出来るようになったのも大きな変化です。そして、ニュースと言えば、基本的に悪いニュースが圧倒的に多い中、ちょっと、ほっこりするような話題が伝えられるようになってきたのも、嬉しい変化と言えるのかも知れません。
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