December 15, 2016

インフラ整備への動機が違う

世界では、自転車インフラの整備が進んでいます。


自転車の走行空間としてのレーンだけではなく、駐輪場や街角の駐輪ラックなど、自転車をとめるための設備も欠かせない自転車インフラです。自転車を移動手段として使う場合には、どうしても駐輪する必要が出てくるわけで、必要な場所に駐輪できることも重要です。

日本では、いわゆる放置自転車の問題があります。日本は日常的に自転車を使う人の多い国ですが、特に都市部では、駐輪場や街角の駐輪ラックなどの設備の不足している場所が目立ちます。自治体は駐輪容量の不足を、撤去・移送で対処していますが、すぐまた放置駐輪されるいたちごっこです。

ヨーロッパ、特にオランダやデンマーク、ドイツといった自転車先進国では、駅前などに大規模な駐輪場が設置され、自転車レーンと併せて自転車インフラが充実しています。中には、メンテナンスなどのサービス施設も併設された、先進的な駐輪ステーションもあります。

駐輪場用地の問題がないわけではありませんが、比較的便利な場所に設置されています。駐輪場は都市に必要なインフラであり、それだけ市民のニーズがあるわけですから当然という考え方です。少なくとも、日本の自治体のように、自転車の存在を迷惑がったり、目の敵にするような風潮はありません。

Bicycle HotelBicycle Hotel

北国のノルウェーでは、特に冬場、自転車の活用に適した気候風土とは言えませんが、自転車の活用を進めています。先日、途上国を含むすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」が採択されましたが、エネルギー消費や環境負荷の低い交通手段の普及・活用を推進していることも背景にあります。

ノルウェーでは、持続可能な将来のために、野心的な目標を立て、国家ぐるみで推進していますが、他のヨーロッパ諸国と同様、自転車の積極的な活用もその一環です。人々に自転車の利用を促すために、各地に駐輪場の建設を進めています。重点的に整備を進めているのが、鉄道の駅です。

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アーケルスフース郡のリルレストレムは、首都オスロへ通勤する人の多い街です。通勤者に、クルマではなく鉄道を使ってもらうために、“Lillestrom Bicycle Hotel” を建設しました。通勤に鉄道を利用してもらうためには、駅への足として自転車が使える環境の整備が必要だからです。

著名なデザイナーに設計を依頼した、オシャレな建物です。駐輪場ではなく、自転車ホテルというネーミングにしました。場所も駅前で、クルマ用のパーキングや、人々が泊まるホテルなどの施設よりも駅に近い、便利な場所に配置されています。

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利用者は、月極めで契約します。月額50クローネ、最近は円安になっていますが、それでも700円程度という低価格です。ノルウェー政府は、ノルウェー国鉄に委嘱するなどして、全国の至るところで、このような駐輪設備の整備を推進しているのです。

日本とは諸般の事情が違うので、単純な比較は出来ません。しかし、日本の自治体が、放置自転車の多さに仕方なく設置しているのと違い、自転車の活用を推進すべく、率先して整備を進め、自転車インフラの充実を図っています。同じ設置するのでも、全く逆のアプローチです。

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ヨーロッパでは、ラテン系のスペインも、あまり自転車の国という印象はありません(ロードレースは別ですが)。しかし近年は、温暖化対策や深刻な都市の渋滞対策もあって、自転車の活用を進めています。レーンや専用道、専用橋や専用トンネルなどに加え、街での駐輪を容易にする対策も進めています。

渋滞を減らすため、街での移動に自転車を活用してもらおうにも、街中で安心して駐輪が出来なければ利用は進みません。バルセロナで設置が始まった駐輪ラックは、次世代のスマートパーキングと言うべき設備です。人々に安心して駐輪してもらうため、盗難対策も充実しています。

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フレームだけではなく、前後の車輪にもチェーンがかけられるようになっています。サドルもラック内に収容されるので、盗まれる心配はありません。さらに、ヘルメットを収納できるので、駐輪した後、ヘルメットを持って歩くわずらわしさとも無縁です。

しかも、キーはカード式になっており、会員になると発行されます。街角のラックはどこでも、このカードキーで施錠して駐輪できるだけでなく、ネット経由で予約をすることも出来ます。万一盗難にあった時のための保険にも加入しており、時間単位で料金も格安に利用できるという便利なシステムなのです。



街中での駐輪スペースの指定、確保というより、どちらかと言うと、盗難を心配しないで駐輪できる機能がアピールされています。これも日本とは単純に比較できませんが、利用者に駐輪してもらおう、便利に使ってもらおうという姿勢は、日本とは違うと言わざるを得ません。

世界では、自転車の活用の推進がトレンドです。市民に自転車を使ってもらうためにインフラ整備を進めています。対照的に、日本では、自治体が放置自転車対策に頭を悩ませており、自転車を積極的に使ってもらおうという風潮は乏しいのが実情です。

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逆に言えば、日本ではこれだけ自転車人口があるのですから、もっとインフラを充実させたら、さらに活用が進む可能性は十分にあります。都市の渋滞対策や、環境負荷や化石燃料の消費を減らすため、都市部ではクルマの利用を減らし、極力自転車を使うような方向へ誘導するのも可能であり、有効なはずです。

日本では、ママチャリによる歩道走行が一般的で、最寄り駅までなど、きわめて短い距離しか利用されていません。これが自転車レーンや駐輪場などのインフラが充実して、快適で便利に使えるようになれば、ドアツードアで、もっと長い距離を使うようになり、都市交通として機能するようになる可能性があります。

クルマが不要とは言いません。しかし、慢性的な渋滞や駐車場の不足などを考えれば、都市部でクルマを使うのは合理的ではありません。しかし、日本では、まだ依然としてクルマ中心にインフラ整備が進められています。クルマ優先が固定観念のようになっており、そのあたりに、彼我の差の最大の理由がありそうです。



余談ですが、中国の精華大学では、自転車の自動運転の研究が進められています。駐輪とは直接関係ありませんが、クルマの自動運転が実現しようかという時代、自転車が無人で走れてもおかしくありません。2輪であるぶん、転倒した場合などに難はありますが、方法はあるでしょう。

こうなると、将来は、いちいち駐輪場や駐輪ラックに自転車をとめたりする必要がなくなる可能性もありそうです。自転車を降りたら、自転車自身が自動で駐輪場へ行き、用事を終えて乗る時には、自動的に駐輪場からやってくる、なんて光景が出現するのかも知れません。




ロシア・プーチン大統領来日、いろいろ取りざたされてますが、70年の懸案を一夜で解決するのは無理でしょう。

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この記事へのコメント
東京もオリンピックがインフラ整備のきっかけになってくれるといいんですけどね
小池さんになって前よりは期待できそうな気もします
Posted by あるふぁ at December 17, 2016 17:49
あるふぁさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今のところ、豊洲や五輪などにかかり切りの感もありますが、満員電車ゼロみたいなことも言っていますし、期待したいですね。
Posted by cycleroad at December 18, 2016 23:51
 
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