December 21, 2016

ヘルメットに求められる役割

ヘルメットはサイクリストを守ります。


事故や落車の際、頭部への打撃を和らげ、致命傷となるのを防ぎます。かぶらない人も多いですが、イザという時、サイクリストの頭を守る役割を果たすことに異論はないでしょう。ヘルメットは、昔から人間の頭部を守ってきました。そのことが、Nutcase 社のヘルメットの広告に描かれています。

Nutcase

Nutcase

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コロッセオで戦うローマ帝国の剣闘士の頭をライオンから、中世のヨーロッパの騎士の頭をドラゴンから、日本の武士の頭を忍者の攻撃から、海にもぐる潜水夫の頭を大ダコから守ってきました。よくみると、全員自転車に乗っています(笑)。

それはヘルメットではなく、冑(かぶと、兜)だろうというツッコミはともかく、ヘルメットが、人間の頭をずっと守ってきたことをアピールしています。もちろん、現代ではライオンやドラゴン、忍者や大ダコからではなく、交通事故や落車の時の衝撃という敵から守ることになります。

 Coros LINX Coros LINX

さて、そんなヘルメットですが、最近は、さらに新しい機能を持たせようと考える人が少なくありません。こちらのヘルメット、“Coros LINX”は、イヤホンやヘッドフォンに代わる機能が搭載されています。単なるスピーカーによるのではなく、骨伝導によって音を伝える機能を備えています。

耳に当てたり、耳の中に入れるようなイヤーパッドはありません。普通のスピーカーが音を空気振動として伝えるのと違い、あごひもに取り付けられ、顔の骨に密着した振動板から、骨伝導の仕組みを使って、音を伝えます。このことにより、耳をふさぐことがなく、周囲の音からの情報を遮断することがありません。

骨伝導は、特に珍しいものではなく、人間はふだん自分の声を、普通に空気の振動による音、気導音と、自分の骨の中を通って伝わってくる骨伝導との両方で聞いています。一度、レコーダーに録音した自分の声を再生して聞くと違和感があるのは、このためです。

 Coros LINX Coros LINX

空気中を伝わってきた音が鼓膜を振動させることによって聞く音は、難聴になると聞くことが難しくなります。20代後半で耳が聞こえなくなっても作曲をしたことで知られるベートーベンは、指揮棒を歯で強く噛み、棒の先をピアノに押し付けて骨伝導で音を聞き取ることで、作曲を続けることができたと言われています。

この骨伝導の仕組みを使ったヘルメットなのです。日本でも、自転車で走行中にイヤホンなどを使うのは道交法違反です。でも、このヘルメットであれば耳をふさぐことなく音楽を聴くことが出来ます。言ってみれば合法的に音楽を聴きながら走行できるというわけです。

ヘルメットと手元のスマホが、Bluetoothで通信するようになっており、手元のリモコンで操作して、スマホのストレージ内の音楽を聴くことが出来ます。音楽だけではありません。スマートフォンのアプリと連動させて、例えばナビゲーションの音声案内を聞くような使い方も出来ます。

 Coros LINX

スマホをハンドル周りなどにマウントして、目で見るより、音声で確認したほうが、前方不注意にならずに安全ということもあります。また、かかってきた電話に出ることも出来ます。高性能なマイクも内蔵しており、聴くだけでなく双方向のやり取りが可能です。

そのほか、アプリを使って、スピードや距離、時間、ケイデンスや消費カロリーといった、走行情報を聞いて確認することも出来ます。これも、小さなサイコンを見る必要がないので、前方不注意にならず、安全性が高まると考えることも出来るでしょう。

そのほか、GPSを使って、トライブデータを保存したり、仲間とデータをシェアするSNS機能、緊急時にGPSデータを含めて通報するシステムなども搭載しています。もちろん、ヘルメットとしても、アメリカやヨーロッパの安全基準をクリアしています。USBから1回充電すれば、10時間以上稼働します。



少し前に、クラウドファンディングサイトで資金調達をしていましたが、目標を大きく上回る金額を早々にクリアしています。すでに製品の生産が行われ、発送もされているようです。こうした用途には、相応のニーズがあることをうかがわせます。

新しい工夫が取り入れられた製品と言えるでしょう。ただ、骨伝導を使って耳をふさがなければ、果たして本当に安全と言えるのか、という問題は残ります。音楽以外の周囲の音が、耳を通して入ってくるという理屈はわかります。しかし、必ずしも聞こえればいいということではないはずです。

走行中にこれを使うと、音楽のメロディや歌詞、ナビゲーションの情報、あるいは電話を通した会話などに、当然ながら注意が行きます。そちらに注意が集中してしまうと、どうしても周囲の音に対して注意力散漫になることもあるはずです。聞き落としたり、危険に対処するのが遅れることもありえます。

 Coros LINX Coros LINX

そもそも、公道を走行中に音楽等を聴いたり、会話をすることには、安全上の問題があります。実際に、例えば会話の内容に気をとられた結果、瞬間的に前方不注意になったり、周囲からの情報に対して注意散漫になるなどして、事故が起きています。

クルマの運転中に、電話での会話が禁止されているのと同じです。耳と口を使うだけで、目は前を見て運転しているから安全だということにはならないのです。どうしても、会話の内容に気を取られて前方不注意になる瞬間があったり、注意力が散漫になったりしてしまうからです。

そのような危険性を排除するため、走行中に、いわゆる「ながら」状態になるのを防ぐというのが、イヤホン禁止を定める道交法の主旨です。走行に集中し、最大限安全に注意する義務を果たすという、道交法の精神に鑑みれば好ましいとは言えません。

 Coros LINX Coros LINX

そのような本質的な意味から言えば、自転車で走行中に音楽を聴いたり、会話をしたり、ということは安全上推奨されません。しかし、忙しい現代人は、自転車で走行中も電話を受けたいとか、音楽を聴きたい、あるいは、その時間を利用して何かを聞きたいということもあるでしょう。

安全上、好ましくないとわかっていても、自転車に乗っている時間を有効に使うことを優先する人がいるのも事実です。その場合、耳をふさぐイヤホンやヘッドフォンを使うよりはマシということもあるわけで、その意味で、言ってみれば苦肉の策、次善の策ということになりそうです。

ある意味、自ら危険を増やしてしまうわけですが、その状態の中で、なるべく安全にするヘルメットということになります。そんな、現代人のわがままに応えつつ、現代の新しいリスクからサイクリストを守るというのも、今の時代に求められるヘルメットと言えるのかも知れません。




ドイツでまたテロ事件が起きてしまいました。繁華街に出かけることも多い時期、市民の不安が広がりそうです。

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