使い方によっては、相反するようなニーズもあるでしょう。そのため自転車にはいろいろな種類があり、用途によって求められるニーズを汲むような方向に分化、進化しています。自転車用品・パーツに関しても同じことが言えます。時と場合によって、必要に応じたものが選べるようになっています。
さまざまなニーズに応えるパーツ・用品が販売されていますが、まだまだ不十分であり、自分が欲しいものがないという人もあるでしょう。もしかしたら同じ不満を感じている人が多いかも知れないと考えて、自分で自転車用品やパーツを生み出そうとする人もいます。
二回にわたって、新しいアイディアを披露しクラウドファンディングサイトで資金調達に挑んだものの失敗した例を取り上げてきました。資金調達の成功例だけでなく失敗例も、その理由や背景などを考えると興味深いものがあります。まだいくつか事例があるので取り上げてみたいと思います。

こちらは、“
Dually Bikes”、後輪が2輪ある自転車です。トライクですが、後ろ2輪は密着しており、ほとんど2輪と同じです。この自転車があれば、子どもが補助輪なしで自転車に乗れるようになるという触れ込みです。従来からあるような補助輪は、子どもたちにバランスをとることを教えないと言うのです。
確かに、補助輪に頼ってしまうので、なかなか補助輪が外せないというケースは多いでしょう。補助輪なしで自転車に乗れるようになるのに、時間がかかるのは否定できません。最近は、補助輪をつけるより、ペダルがなく、足で地面を蹴って進むストライダー型で練習するほうがベターだと言われています。

この自転車、後輪が2輪あるぶん、1輪よりは安定します。バランスがとりやすいので、最初から、補助輪なしで乗れるということのようです。そして蹴って進むのではなく、最初からペダルを使いますので、たしかに慣れれば、すぐに自転車に乗れるようになりそうに思えます。
後輪が2輪あるためトラクション、つまり駆動力が大きいという利点もあります。なるほど、ユニークな目の付け所かも知れません。しかし、自転車に乗れるようになったからと言って、後輪を1輪外すようには出来ていません。乗れるようになっても後輪がダブルのままなのが、気になるところでしょう。
結果としては、11人、2%しか集まらず、資金調達には失敗しています。補助輪の代わりに後輪を1輪増やすという発想は面白いですが、補助輪と違って外すわけにはいかないといところが、デメリットと見られたようです。もう少し工夫が欲しかったというところでしょうか。

こちらは“
Swagger Bike Stand”、自転車に取り付けるものではなく、別途持ち運んで、必要に応じて自転車を自立させるために使うスタンドです。よくある金属のパイプではなく、平たい板を組み合わせた形状になっており、蝶番でつながっています。栓抜きがついているのはオマケです。

一般に、後輪のハブの部分で支えるスタンドが多いですが、これはペダルの付け根を支える形になっています。このことにより、前輪や後輪のどちらかを外した状態でも自立させることが出来ます。斜面であっても自立させておける点もアピールしています。
クルマなどに自転車を積んで移動し、現地に着き、おろして自立させておくような場合を想定しています。ただ、デザイン的には手作り感満載です。板と蝶番とチェーンの切れ端があれば、誰でも簡単に作れそうに見えるからでしょうか、23人、目標額の18%あまりと、資金調達はなりませんでした。

こちらは、“
STASHERS Bike Tube Cooler & Storage System”、システムとうたっていますが、要は飲み物を自転車に積むためのクーラーバッグです。円筒状になっており、缶の飲料がそのまま入ります。4缶用と3缶用と2缶用があり、全てつなげると最大9缶まで運べるのがウリです。
トップチューブ下の空間を、何かを運ぶために使おうというのは誰もが考えるでしょう。そのためのバッグや箱状のケースなど、これまでにも多数の製品が考えられてきました。その意味では、特に目新しいアイディアとは言えません。断熱材を使って保冷するというのも、ありふれています。

個人的に、この発想は出て来ないと思ったのは、9缶運ぶという点でしょうか。いくら夏場は喉が渇くとは言え、わざわざ9缶も持って出かけようとは考えません。もちろん、日本と違って、自動販売機がすぐ見つかるわけではないといった事情もあるのでしょうが、9缶も携行するという発想はありませんでした(笑)。
もちろん、飲料の代わりに、衣類やケータイ、サングラスなど身の回りの物を入れておくことも出来ます。必要に応じて、大中小の3つの中から組み合わせて持って行くことも出来ます。身近な工夫ということなのでしょうが、18人、16%弱しか賛同を得られず、資金調達には至りませんでした。

こちら、“
MagLOCK Bike Pedal”は、いわゆるビンディングペダルです。ただ、普通のそれと違い、固定するのに磁石の力を使います。主に、マウンテンバイク用で、オフロードを走る場合などに使うことを想定しています。普通のビンディングペダルと違って、着脱が簡単なのが利点です。

ロードと違って、オフロードの場合、走行中にビンディングが外れたり、走りながら再び固定しようと思っても、不安定で着脱しにくいこともあるでしょう。そのような時でも、磁石式なので簡単に着脱できます。外す場合も簡単なので、転倒したのにビンディングが外れないということもありません。
磁石の数を変えることも出来るようになっています。それによって解放力を調整できるようになっています。ビンディングペダルに磁石を使うというのは新しい発想と言えるでしょう。実際に使ってみないと、このメリットや良さはわかりませんが、3万ドルの目標に対し、64人、19%弱で失敗です。

こちらは、“
e-Bike Generator”、簡単に言ってしまえば自転車に連結するトレイラーに発電機を載せたものです。これで発電し、電動アシスト自転車やフル電動の自転車に電力を供給します。このトレイラーを連結して走れば、バッテリーの容量による航続距離という制約を外すことが出来るという発想です。
実際に、2日間クロスカントリーライドをしても一度も充電切れにはならなかったそうです。もちろん、発電機ですから、別の電気製品などに給電することも出来ます。キャンプをする時など、屋外で電力を使いたいシーンでも活躍するでしょう。

この発電機、25CCの4サイクルエンジンが使われています。つまり、エンジンで発電して充電し、その電力でアシストする仕組みです。考えようによっては、回りくどいやり方であり、それならばエンジンをそのまま使ってオートバイか原動機付自転車にしたほうがいいのではという疑問がわきます。
日産自動車が、エンジンで充電するEV、ノートeパワーという車種を販売していますが、それに少し似ています。わざわざエンジンで発電して、一旦バッテリーに充電してから、電気でモーターを動かすなんて回りくどい、エネルギー効率が悪いと思いますが、人気が出て売れ行き好調だと言います。
その理由は、エンジンで充電してもEV、つまりモーターで走るクルマであるため、電気自動車ならではの加速感など、乗り心地が違うのだそうです。このトレイラーも考え方は似ていますが、わざわざトレイラーを牽引しなければなりません。排気ガスも出ます。
確かに、自転車に積めるようなバッテリーでは、どうしても航続距離が限られてしまいます。ロングライドをするため、バッテリーの制約をなくしたいというニーズはあるのかも知れません。しかし、わずか7人、4%強しか賛同者は集まらず、資金調達には失敗しています。
◇ ◇ ◇
こうして見てくると、世の中には、いろいろなニーズがあるものです。言われなければ、思いもつかないようなものもあります。人々のニーズにはキリがなく、新製品開発のタネはたくさんあるように思えますが、製品として世の中に売り出すためのハードルは、決して低くないと言えそうです。
米国がアサド政権への攻撃に踏み切りました。シリア情勢の混迷は米ロ関係、難民・テロ等にも影響しそうです。