移動や運搬、趣味やトレーニング、いろいろな用途、シーンで使うでしょう。だからこそ、不便なことや不満が出てくるという面もあります。そんな不便や不満を解決すべく、いろいろな自転車用品が生み出されます。しかし、たくさんのアイディアが出される中で、実際に製品化されるものは、ごくわずかです。
最近は、クラウドファンディングサイトで資金調達に挑戦する人も多いですが、成功するとは限りません。事業化資金の調達に失敗し、いわば日の目を見なかったアイディアにも興味深い部分があるので、3回にわたって取り上げてきましたが、今回はそのシリーズの最終回です。
こちらは、“
City Bike Basket”、アメリカ・ニューヨークの自転車シェアリングシステムである、“Citi Bike”用につくられたカゴ、バスケットです。ニューヨーク以外でも、同じ形状のシェア自転車が使われている場所であれば使うことが出来ます。
シェア自転車である、“Citi Bike”には、自分のカバンを載せるための荷受けはついていますが、前カゴはついていません。このバスケットならば、“Citi Bike”のハンドルの前の荷受け部分に簡単に固定できます。取り外して、そのまま店の中へ持って行くことも出来るので便利に使えそうです。
シェア自転車ですから、ステーションで一旦返却して、また別の場所から乗るような場合もあるでしょう。そんな時でも、そのまま次の自転車にセットして使えます。たしかに、“Citi Bike”で買い物に行く人ならば、専用の買い物カゴとして便利そうに見えます。
ただ、便利なのは、買い物に行く時、自宅と往復するような時に限られそうです。よく“Citi Bike”を使う人でも、いつも持ち歩くのには向きません。買い物以外の用途には使い勝手もよくないので、結局その都度持っているバッグを自転車に載せることになると思います。
一瞬便利そうに思えますが、よく考えると用途が限られ、あまり活躍の場はなさそうです。必要な時に、その場で借りられたら便利かも知れませんが、わざわざ所有したいと思う人は少なそうです。5万ドルの目標に対して、わずか1人、50ドルしか集まりませんでした。率にして0.1%です。
こちらは、“
GroUrban”、小さなプランター、植木鉢です。自転車のボトルホルダーに入れて、毎日の通勤に、お気に入りの植物を持っていける移動用のプランターです。クルマのドリンクホルダーや、自転車のボトルホルダーに、小さな観葉植物を飾れたら、オシャレと感じる人もあるでしょう。
特にガーデニングが好きでなくても、植物をめでる気持ちがわからないわけではありません。ただ、わざわざ持って歩きたいという人は少数でしょう。自宅やオフィスに置く人はあっても、いちいち持って移動し、片時も離さないほど、一つの植物に固執する人は少ないと思います。
遊び心という意味では、面白いアイディアと言えるでしょう。自転車のドリンクホルダーに観葉植物を入れている人を見たら、思わず和むかも知れません。しかし、資金調達のほうは、33人から支持されたものの、1.4%しか集まらず失敗となっています。
こちらは、“
DriBarz”、ハンドルバーに取り付けて、雨の日に手が濡れないようにするフェアリングです。たしかに、手が濡れた状態で前から風が当たって、冷えてかじかむと辛いものがあります。ブレーキ操作などに支障をきたす可能性もあるでしょう。
防水加工されたウェア類と違って、手袋の場合は革などが多く、雨で手が濡れてしまうことも多いと思います。完全に水が入らず、濡れないような手袋では指が動かしにくく、自転車用には向きません。レインウェアで雨を防いでも、手は濡れてしまうケースは多いでしょう。
出先で、急に雨が降り出して、手が冷たくて辛い時など、欲しくなる気はします。ただ、いちいち携行するのも面倒で、かさばります。常に取り付けておくのも邪魔です。そう考えると、あまり実用的とは言えません。48人、12%あまりの支持はありましたが、目標までは遠く、失敗です。
こちらは、“
FitRider Bike”、腕でもペダルがこげる自転車です。自転車は、どうしても下半身が中心となり、上半身のトレーニングにならない点が不満だという人もあるでしょう。腕も使ってペダルをこげれば、足のパワーを腕でもカバーでき、全身運動にもなるというアイディアです。
腕も使ってペダルをこぐという考えは、決して珍しいものではありません。似たようなことを考える人は少なくないのでしょう。これまでにも、何回となく登場しています。腕の力は前輪に加えて両輪駆動にするなど、仕組みは少しずつ違いますが、基本的な考え方は同じです。
上半身も運動になるよう、バランスよく全身運動となるようという考え方、わからないではないですが、それに魅力を感じる人、必要と考える人は多くないようです。このアイディアに対しては、わずか5人、0.07%しか集まらず、資金調達は成りませんでした。
こちらは、“
Revolve Bike Discs”、チェーンリングに、パンツの裾が巻き込まれないようにするカバーです。スポーツバイクには、普通チェーンカバーはついていません。しかし、いつもレーパンなどで乗るとは限らず、スーツや普段着、ジーンズやスラックスなどで乗る場合もあるでしょう。
そんな時にこれを貼っておけば、汚れたり巻き込まれたりといったトラブルを防げます。これは、確かに便利そうです。チェンカバーと違って、必要に応じて簡単に取り付けられる点も長所です。ちょっとしたアクセサリーにもなっています。
なかなか実用的に思えます。ただ、どうなのでしょう。裾の広がっていないパンツの時は不要ですし、いつも必要になるわけではありません。必要な時には、裾をとめるバンドなどを使えば済むことです。109人から15%強の支持を集めましたが、目標額には遠く、資金調達には至りませんでした。
◇ ◇ ◇
どのアイディアも使えないわけではありません。でも、悪くはないけど自分には必要ない、あってもいいけど特に欲しくない、といったところでしょうか。考えた本人は、いいアイディアだと思ったでしょうが、多くの人が欲しがるようなものを生み出すのは、そう簡単なことではないようです。
浅田真央選手引退ですか。これほど国民から愛された選手もなかったのではないでしょうか。お疲れさまでした。