August 12, 2017

クルマの概念も変わっていく

今のようなクルマが量産されるようになって約百年です。


そのクルマが大きな転換点に差しかかっています。自動運転という新しい技術によって、クルマは自分で運転しない移動手段へ大きく変わろうとしています。コネクティッドカーと呼ばれる、ネットに接続されたクルマになっていくとも言われています。

そして、今までのような化石燃料を燃やして走るクルマから、充電した電気の力で走る電気自動車、EVに変わっていく流れが大勢になりつつあります。イギリスやフランスの政府は、2040年までにガソリンやディーゼルなど、エンジンで走るクルマの販売禁止を打ち出しました。

こうした流れを受けて、トヨタもマツダと資本提携するなど、EVの開発を加速させていく姿勢を見せています。トヨタがけん引してきたハイブリッドカーもエンジンを積んでいます。これまでエコカーとして売ってきたハイブリッド車ですが、禁止されて販売できなくなっていくと見られています。

もちろん、途上国など、インフラなどの問題で、まだまだエンジン車が使われ続ける地域も残るでしょう。しかし、世界の趨勢としてはEVにシフトしていくのは間違いなさそうです。いったん、流れが出来ると、エンジン開発には投資されなくなり、加速度的にEVにシフトしていく可能性は高いと思います。

クルマ、とくに量産車が生まれて以来の大きな変革を迎えようとしているわけです。これによって、さまざまな面で激変が起きると目されます。クルマ産業は、完成車メーカーを頂点に裾野の広い大きな産業ですが、ガソリンスタンドなど周辺産業も含め、大きく変わっていかざるを得ないでしょう。

エンジン車と違い、EVは電動モーターで走ります。つまり、エンジンやその関連の部品を作っていた部品メーカーは不要になってしまいます。EVは、エンジン車と比べて、大幅に部品が少なくて済むと言われています。多くの部品メーカーが廃業したり、業種を変換せざるを得なくなるでしょう。

EVは、エンジン車と比べて構造が簡単で、参入障壁が低いと言われています。既存の世界的クルマメーカーを向こうに回して、これから新たなクルマメーカーを立ち上げ、製品を売っていくのは簡単ではありません。でも、EVであれば、それが大幅に容易になるわけです。

実際に、中国などの新興国を中心に、EVメーカーが続々と誕生しており、虎視眈々とクルマ市場のシェアを奪おうと狙っています。極端に言えば、モーターやバッテリーなどを買ってきて組み立てれば誰でもクルマが作れるので、大きなチャンスでもあるわけです。

エンジン車と違ってEVは、どこのメーカーが作っても同じような走りになると言います。エンジン車のような高度な部品のすり合わせなどによって、他社と差別化するのが難しくなります。この点も新規参入者には大きなメリットであり、チャンスとなるわけです。

中国やインドなどは、大気汚染問題もあって、EV化に力を入れています。それは、国ぐるみでEVによって、クルマ産業の下剋上を狙う動きでもあるのです。一方、自動運転車の開発とあいまって、グーグルやアップルなど、アメリカのIT企業もEV市場に参入してくると言われています。

テレビやパソコン、スマホなども、部品を揃えて組み立てれば、どんな企業でも製品を作れるようになり、中国などのメーカーの新規参入が相次ぎ、低価格でしか差別化が難しくなる、いわゆるコモディティー化が進みました。日本の家電メーカーの苦戦の要因とされていますが、クルマも家電化する可能性があるわけです。

欧米の有力クルマメーカーのトップなどは、未来は間違いなくEVだと言い切っています。世界のEVシフトは、もはや既定路線となりつつあります。各クルマメーカーもEVの開発に力を入れていますが、部品メーカーも先を見据えて、いろいろな取り組みを始めているようです。

BIO-HYBRIDBIO-HYBRID

BIO-HYBRID

シェフラーはドイツのクルマ部品の世界的メーカーです。ベアリングやクラッチ、トランスミッションなどのクルマの部品を完成車メーカーに納めています。このシェフラーも、いろいろな対策を進めていますが、その中には、興味深いものがあります。

バイオハイブリッド」と呼ばれる、4輪の電動アシスト自転車です。(→PDF資料) キャビンがついており、風雨を防げるようになっています。動画を見るとわかりますが、格納式の屋根になっていて、天気がいい時は屋根を格納できるようになっているのも特徴でしょう。

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バッテリーは持ち運べるようになっており、家の中で充電できます。回生ブレーキが搭載され、そのぶんは走行中に充電されます。運転免許も不要、4輪なのでトライクよりさらに安定しており、自転車に乗れない人でも運転することが可能です。それでいて軽快なハンドリングを実現しています。荷物も載せられます。

電動アシスト機構によって、時速25キロまでアシストされます。条件によって変わりますが、航続距離は50キロから100キロくらいになると言います。電動アシスト機構によるアシスト力は調整可能で、必要に応じて変えることが出来るようにもなっています。



このような3輪や4輪の電動アシスト自転車は、これまでにも自転車メーカーなどで開発しているところがありました。この「バイオハイブリッド」は、クルマの部品メーカーが手掛けている点で注目されます。まだ市販化は決定していませんが、実際に市場へ投入することを前提に、今後の市場動向を探っていくとしています。

EVへのシフトという流れの中で、少なくとも当初は、いろいろなタイプのEVが登場してくる余地があるでしょう。これまでのクルマメーカーではない、新たなブレーヤーが登場するのは間違いなく、これまでとは違う発想のクルマを作ってくる可能性は十分にあります。

BIO-HYBRID

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そして、消費者の中にも、従来型のEVより、「バイオハイブリッド」のような電動アシスト自転車のほうが、むしろ好ましいと考える人も出てくるでしょう。特に都市部の渋滞を避けたり、ペダルをこぐことで運動不足を解消し健康増進に寄与したり、車両価格も大幅に安くなるなど、メリットは少なくありません。

EVへのシフトによって、例えばCNF(セルロースナノファイバー)のような軽量で高強度の素材も進化していくでしょう。キャビンがついていても軽い車体が開発されていくに違いありません。もちろん、電池も高性能化していくことが期待されます。これは、電動アシスト自転車にとっても追い風になります。

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これから、EVへのシフトという大きな転換が起きていく中で、これまでのエンジンがモーターに置き換わるだけとは限りません。もちろん、全て電動アシスト自転車でいいことにはなりませんが、これまでのクルマの基本的な枠組みも変わっていく可能性があります。

少なくとも、都市部では自転車のほうが渋滞などに有利ですし、座席も1つか前後に2つで十分という場面も多いでしょう。これまで無駄に運んでいた空のシートの空間を省くという考え方が出てきても不思議ではありません。車体を小さく軽く出来る、「バイオハイブリッド」のような車両が都市部で普及するかも知れません。



EVも電動アシスト自転車もクリーンな点は同じですが、製造工程を考えると、自転車のほうが、より環境負荷は小さくなります。電力消費も小さいのは自明です。エネルギーを有効に使うという点でも、道路という限られた面積を有効に使う点でも、電動アシスト自転車のほうが優れています。

もちろん、従来型EVが不要になるとは言いません。航続距離の問題もありますし、積載力も違います。ペダルをこぎたくない人もいます。ただ、クルマが大きく変わっていく中で、3輪や4輪の電動アシスト自転車が、いわばEVの一種、新たな選択肢、あるいは使い分ける形で、普及していく可能性はありそうです。




連休、お盆で帰省先でご覧の方もあるかも知れません。都心はクルマが少なく自転車に乗るのもよさそうですね。

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