それまで、ママチャリなどにしか乗ったことがなく、始めてロードバイクに乗った人は、トップチューブが邪魔だとか、サドルが高い、前傾姿勢がきついなど、大きな違和感を感じることが多いようです。これでは前が見にくい、姿勢が窮屈、またぎにくい、足が地面につかなくて危険などと感じる人もあるでしょう。
しかし、昔からダイヤモンドフレームが採用されてきているのは、それが強度や重量などから有利だからです。サドルが高いのは、ペダルをこぎやすく、力を伝わりやすくするためです。前傾姿勢になるのは、お尻だけではなく、腕にも体重を分散させて、長時間乗ってもお尻が痛くならないようにする効果があります。
同時に、効率という点で、自転車の最大の敵である空気抵抗を小さくするためでもあります。最初は違和感があっても慣れれば乗りやすくなりますし、リーズナブルだということも理解できるようになるでしょう。違うメーカーのモデルでも、基本的なスタイルが共通しているのには、それなりの理由があるわけです。
多くは長い間の試行錯誤によって行きついた形であり、多くの人がリーズナブルだと認識しているということになります。しかしながら、絶対にこれでなければいけないという決まりはありません。競技用などを除けば、違うスタイルを採用しても問題ありません。自転車の用途によっても変える余地はあるでしょう。
リーズナブルであり、なかば常識となっている原則は、一方で固定観念になっていたりします。なかなか、それに疑問を抱くこともないでしょう。しかし、時々、その常識に挑戦する人が出てきます。自転車にもっと自由な発想、新しい形、コンセプトを持ち込もうと考える人がいます。


この“
Bellcycle”もその一つです。普通に二輪車に見えますが、よく見ると普通の自転車とは、いろいろな点で違っています。通常と違って、前輪駆動ですし、ペダルやギヤなども前輪部分に集中しています。そして、サドルがハンドルよりも前にあるという特徴的なライディングスタイルです。
後輪はありますが、ほとんどの部分が前輪部分に集まっており、正面から見たら、一輪車かと見まごうスタイルです。当然、前傾姿勢にもなりません。動画で見る限り、安定性もよくないように見えます。しかし、これは単に奇をてらった自転車ではありません。


これは、自転車の機能のほとんどを前方に集めることで、モジュール化しようというコンセプトなのです。その時々の用途に応じて、自分で後方のパーツを付け替え、ビルドアップすることを想定しています。そして、単体では、コンパクトで小回りがきき、街乗りに向くという特徴も実現しています。
前輪部分に駆動をはじめとする主要部分を集めることでコンパクトにし、モジュール化された後輪部分を簡単に付け替えることを可能にしています。小さな後輪を取り付けることで、可搬性を高めたり、荷台と一体化した後輪と付け替えることで、カーゴバイクにもなります。


電動アシスト機構を搭載した後輪部分なども考えられます。さらに、個人個人でカスタマイズして、よりパーソナルな用途のためのモジュールを制作して使うことも出来るわけです。その日の使い道や状況によって、モジュールを簡単に、かつ自在に取り換えることで、一台何役にもなるというアイディアです。
後輪部分は、キットとして提供され、自分で好きなように構築することが出来ます。基本的に、オープンソースの考え方に立っているので、他社の製品や、汎用の部品なども使えるようになります。見た目は変わり種自転車に見えますが、しっかりとしたコンセプトに基づいているわけです。
車体がコンパクトなぶん、収納や持ち歩きにも有利ですし、小さいぶん比較的安価に多用途の自転車を組むことが出来る点も利点としています。いろいろな素材も使えますし、いちいち溶接などが必要になるわけでもありません。応用方法も無限に広がります。
クルマで言うなら、トレーラーのようなイメージでしょうか。運転席部分は決まっていますが、後方にいろいろな形の車両を牽引することが出来ます。牽引する部分は、用途や、必要に応じて、自在に変えられます。もちろん特に牽引せずに走行することも可能です。

これが乗用車だと、前輪と後輪の間に一体化したキャビンがあるため、前後を分けるわけにはいきません。あらかじめ、セダンとか、ワンボックスとか、ピックアップトラックなど、いろいろな形は選択出来ますが、一回購入したら変えることは出来ず、自分で組み替えるような自由はありません。
見た目はユニークですが、そう考えると、なるほど一理あります。ライディングポジションには違和感がありそうに思えますが、これも慣れでしょう。走行安定性には劣る気がしますが、これも後輪との距離、すなわちホイールベースを長くとれば安定しそうです。


この“Bellcycle”、まだ販売はされていません。クラウドファンディングサイトで製造のための資金を調達する段階にさえ至ってはいませんが、それに向けてプロジェクトは進行しているようです。実現するかわかりませんが、商品化されたら、従来の常識とは一線を画す自転車ということになるでしょう。
自転車に限らず、その歴史の中で試行錯誤が繰り返され、洗練され、熟成し、誰もがリーズナブルだと考えるようなデザイン、ある意味、行きついたように見える製品は少なくありません。そんな定番の製品にこそ、当たり前と思われた常識を疑う意味があり、新たなブレークスルーが生まれる余地があるのかも知れません。
横浜の貸衣装会社が突然の業務停止した事件、無責任で酷い話ですね。しかも雲隠れして謝罪もなしとは。前から行き詰まっていたのですから、せめて成人の日の前に告知すれば、応急の措置をとれた人もいたでしょうに。
Posted by cycleroad at 13:00│
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