January 21, 2018

革新の意欲にあふれている国

インドは13億人もの人口を抱える大国です。


近年は目覚ましい経済成長を続けており、単に新興国としてだけでなく、ITなどの分野において存在感を増すなど、世界経済の中でも注目度が高まっています。しかし、一方で貧富の差も激しく、いまだに3億人は電気のない生活を強いられており、上下水道がなくて、衛生面で困難な人口は莫大な数に上ります。

最先端のAIやIoTなどで起業する人がいる一方で、農村部などでは、貧しい生活を余儀なくされている人もいます。そんなインドで、イノベーションと言った時、世界的な水準でのイノベーションとは限りません。もっと生活に密着したレベルでのイノベーションを必要としている人たちがいます。

National Innovation Foundation India”は、そんな草の根レベルのイノベーションを促し、支援する団体です。世界レベルの先端分野のイノベーションは、インドの農村部などでは役に立ちません。もっと身近な変化への努力をサポートすることによって、インドの生活レベルを向上させようと努めています。

アイディアのコンテストを行い、優秀なものは特許の申請を代行したり、実現に向けた資金援助をするなどといった支援をしています。このサイトにはたくさんのアイディアが紹介されていますか、それを見ると、貧富の差が如実に現れており、インドの置かれた状況というのが、少し理解できる気がします。

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トラクターなど農器具の工夫といった、場合によっては先進国でも通用しそうなものもあります。一方、インドの弁当箱、ティフィンボックスに手を洗うよう促す紙をつけるといった素朴なアイディアもあります。若い世代、小中学生と思われるような児童、学生のアイディアも含まれています。

日本では、あまり意味をなさないアイディアですが、インドの子供たちは食事の前に手を洗う習慣が根付いておらず、忘れがちです。それが劣悪な衛生環境と相まって、深刻な健康上の問題を引き起こしています。インドにおいては、とても意味のあるアイディアなのです。

インドでは、水道の普及していない地域がたくさんあります。水瓶を頭に乗せて水を運ぶのが、主に女性の仕事となっています。この重さで首を痛める人が多いので、肩にも分散させるための器具です。冗談のようなアイディアにも見えますが、いたって真剣です。インドも都市部と農村部では大きな違いがあります。

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一方で、インドでも都市部では、クルマでの移動やスマホの利用なども当たり前です。そのため、先進国と同じように、スマホをしながらの運転による事故が多発し問題となっています。これを防ぐためのアイディアが、おそらく小学生くらいの少年から出されています。

運転をする時に、ドライバーの両手がハンドル、またはシフトレバーに触れていないとセンサーが感知すると、クルマが止まってしまうという装置です。片手で運転し、片手でスマホなどを使うことを防ぐ装置です。素朴ですが、面白いアイディアです。場合によっては、先進国でも使えるかも知れません。

さて、そんな生活に密着したアイディアの中には、自転車を使ったものが少なくありません。インドの都市部だけでなく、農村部でも自転車は、生活に密着した道具として活用されています。移動に使うだけでなく、どうやって生活を便利にするため、ラクにするために使うかという視点が散見されます。

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左は、舗装されていない悪路が多い地域で、上下に大きく揺れるのをショックアブソーバーで吸収するのではなく、推進力に使おうというアイディアです。右は、自転車が高価で満足に修理もできない地域で、ギヤまで竹で作った自転車です。

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左は、ペダルをこいで発電することで小さなライトを点灯させ、夜間でも勉強が出来る学習机です。右は、視覚障害者が行き先を入力するだけで自動で走行する三輪車ですが、この発案者も視覚障害者です。

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左は、渇水のため作物の栽培に苦労する中、苦肉の策として制作された自転車を使った遠心力ポンプです。右は、安定した電力が得られない村でも使える揚水ポンプです。

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左は、2本のほうきを後輪連動で動かして効率的に掃除ができる、清掃自転車です。右は環境負荷を減らす通勤手段として提案された、圧縮空気の力を利用した自転車です。

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左は、乗る人の体重を利用して推進力を得る、重力自転車です。右は、切断等の理由で、片足しか使えない人でも乗れるような工夫をした自転車です。

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左の自転車は、平らになっているグリップを押すような形で回すことでブレーキがかけられます。右は、ふだん使っている自転車に簡単に着脱でき、農薬噴霧業務を助けることができる装置です。

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左は、さまざまな工夫が施されて、効率よく農薬噴霧作業ができる自転車です。右は、トラクターなど到底買えない農家でも使える、自転車のパーツを利用した畑を耕す器具です。

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左も農薬噴霧自転車です。機械化されていない農作業の重労働を少しでも軽減しようというアイディアが目立ちます。右の機械、馬、ラバ、ヒツジ、ラクダなどのたてがみや体毛は定期的に刈り取る必要があるのですが、そのための人力シェーバーです。

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左は低電圧で電力の安定しない地域でも使える溶接機です。右は肥料や堆肥、牛糞などを撒く作業を大幅に効率化できる自転車です。

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左は水陸両用自転車です。生活のため、どうしても川を渡る必要があるのに、なかなかボートが来なかったり、たびたび洪水で水没する地域での切実なニーズを満たすために考えられました。右はペダル式洗濯機、毎日たくさんの洗濯をするのに手洗いしか方法のない人々にとって画期的な機械です。



先進国の人から見たら、自転車を使うまでもないものも多く、特に優れたアイディアには見えません。しかし、多くは電気や内燃機関などの動力が利用できず、世界からの知識や情報も利用できない中で考えられたものです。まさに、草の根レベルで少しでも便利にしよう、効率を上げようという努力です。

似たような環境にあっても、イノベーションを起こそうという努力や、その意欲のない人ばかりの国も少なくありません。もちろん、グローバル経済の先端レベルでのイノベーションとは、比べるべくもありませんが、インド人のバイタリティーや意欲を感じます。

日本のような国は、豊かになったおかげで、身の回りで、工夫をしたり、考えたりする機会は減っている気がします。何か不便があれば、探して買ってくるだけです。もちろん、企業は少しでも便利な製品やサービスを提供しようと努力していますが、市民はそれを取捨選択するだけで事足ります。



インドと比べれば、はるかに不便や不快なことは少なく、恵まれた環境にあることは感謝しなければなりません。不便なことがあれば、すぐに製品やサービスが登場する点でも恵まれているわけですが、そのぶん、生活レベルで工夫をしたり、考え出そうと頭を使わなくなっている面はありそうです。

すでに、インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールなどでは、ハイテク産業が集積し、世界的にもIT産業の牽引役として注目されています。今は貧しく、遅れている地域でも、今後急激な経済成長によって、大きく躍進するところが出て来るに違いありません。

インド人のイノベーションを起こそうという意欲やモチベーションは高く、これから国を発展させ、豊かになろうという意志にあふれています。国ぐるみでメイク・イン・インディアも掲げています。今は、あまり見ることもないインドの製品が、近い将来、私たちの身の回りにあふれるようになるのかも知れません。




明日は関東平野部でも大雪の恐れと報じられてます。ただでさえ雪に弱いのに、被害や混乱が危惧されますね。

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