January 30, 2018

動力の変化を先取りするもの

移動のエネルギーはどう変わるのでしょうか。


クルマは将来的に電気自動車、EVへシフトすると言われるようになってきました。世界のクルマメーカーは、こぞって開発に力を入れています。しかし、このままクルマがEVになっていくのかと言えば、予断を許さない面があります。デメリットや普及に向けた課題も少なくありません。

バッテリーの容量の問題で航続距離の不安がある一方、充電に時間がかかり過ぎるのが難点と言われています。バッテリーの経年劣化で容量低下が問題になるであろうことは容易に想像つきますし、それで中古車の価格が暴落してしまうとか、大量のバッテリーの供給や廃棄などにも問題が出るのではといった話も聞きます。

当然ながら、急速充電のニーズが高くなるでしょうが、急速充電には莫大な電力が必要になると言います。大幅に普及が進んだとしたら、発電所を非現実的なレベルで増設しなければならなくなる計算です。充電スタンドの整備の問題もありますし、広く普及させるためのハードルは高そうです。

聞くところによれば、例えばドイツのアウトバーンで時速180キロで走行すると、2〜3時間でバッテリー切れになってしまうと指摘されています。高速走行にも難点があるため、英国やフランスと違って、ドイツではEVへのシフトが疑問視されていると言います。

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そのためか、ドイツのクルマメーカーでは、最近、燃料電池車が見直されているそうです。水素を燃料とする燃料電池車と言えば、日本勢が先行しています。ここのところのEVシフトで、トヨタなどもEVの開発を進めていますが、もしかしたら燃料電池車も、将来のクルマの有力候補として見直されてくるのかも知れません。

燃料電池車は、EVと違い充電の必要がありません。EVより航続距離も長く、もちろん温暖化ガスや排気ガスも出しません。しかし、燃料電池の価格は高く、そもそも爆発的に燃焼する気体なので、安全に対するコストもかさみます。燃料となる水素の貯蔵や搬送にも大きなコストがかかります。

水素は、いろいろな方法で製造出来ますが、電気分解などは割高で、結局、化石燃料から取り出すのが有利と言われています。褐炭を使う方法などでも、結局CO2を排出するため、トータルでは環境負荷が低減されないという批判もあります。EVと燃料電池車、どちらも一長一短というところでしょうか。

さて、自転車の世界では近年、電動アシスト自転車の人気が世界的にも高まっています。坂の多い場所や重い荷物を運ぶ場合など、電動アシスト自転車ならば活用出来るシーンも増えます。ただ、電動アシスト自転車にもバッテリーの容量、航続距離の問題があります。

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そんな中で、フランスで軍用の燃料電池を製造する企業、Pragma Industries 社が燃料電池自転車の販売を始めました。一般的な電動アシスト自転車が積むバッテリーの代わりに、燃料電池を積んだ、燃料電池アシスト自転車です。タンクから供給する水素でアシスト電力を発生させるので、充電の必要がないのがメリットです。

搭載する水素の量にもよりますが、航続距離は、一般的なリチウムイオンバッテリーの50キロ程度に対し、100キロと2倍かそれ以上になります。ロードバイクでツーリングする人ならともかく、普通は1日に100キロも走らないでしょうから、実用的には十分なレベルと言えるでしょう。

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一般的なリチウムイオンバッテリーを充電するには、4時間程度かかりますが、燃料電池の水素の充填は、わずか2分で済みます。これならば、例え日中に燃料切れになったとしても、時間的な問題は起きないでしょう。水素は、同重量のリチウムイオン電池と比べて600倍のエネルギーを保持でき、重量的にも有利です。

実は、これまでにも各国のメーカーが燃料電池自転車を開発してきました。これまでプロトタイプが製作されたり、展示会などに試作車が発表・出品されたりしています。しかし、実際に工場生産が開始され、販売されたのは、この、Pragma Industries 社の“Alpha”が世界初になるそうです。

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当然ながら、まだ価格が高いのが難点です。最初はフランスの自治体向けに、60台の水素駆動自転車が販売されました。1台、およそ7千5百ユーロします。電動アシスト自転車と比べると、かなり割高と言わざるを得ません。また、同時に販売される水素ステーションは、3万ユーロです。

当面は自治体や公共サービスなどに限られそうですが、ヨーロッパ各国やアメリカなどから問い合わせが入っており、今年は150台程度を出荷したいと考えているそうです。コストダウンが進めば、もっとリーズナブルな価格になると期待され、2〜3年後には一般消費者向けに販売を開始する計画もあります。

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一般向けには、相応の価格にならないと難しいと思いますが、旅行で、ヨーロッパの長距離を移動する人向けのレンタサイクルとか、配送などで自転車を使う業者などに売れるだろうと見込んでいます。より安い、タンク式の水素充填ステーションの販売も予定しています。

まだ納入先は限られるとは言え、商用ベースの水素アシスト自転車が視野に入ってきたようです。電動アシスト自転車のバッテリー容量、充電時間等の問題を解決する点で有力な製品となる可能性があります。問題は、やはり価格や充填ステーションの設置ということになりそうです。

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リチウムイオン電池と比べるとエネルギー効率が高いので、おなじ体積で多くの電力が供給出来ます。重い荷物を運ぶカーゴバイクであるとか、雨に濡れないベロモービルなど、重量の重い電動アシスト自転車に搭載されれば、それらの性能アップにも大きく貢献するでしょう。

ちなみに、日本のイワタニ産業は、水素のカートリッジによる燃料電池自転車を過去に発表しています。カートリッジの交換で済むなら、充填ステーションの設置は必要なくなります。従来のガソリンスタンドなどで売れるようになるならば、水素スタンドの問題は解消する可能性があるでしょう。





燃料電池のクルマと比べれば、ハードルは低そうです。パワーや航続距離などの性能アップのメリットを考えると、価格が下がれば、リチウムイオン電池に置き換わっていくことも考えられます。案外最初の燃料電池ビークルとして広く普及するのは、自転車ということになるかも知れません。

そもそも、街を走っているクルマは、平均して1人と少ししか乗車していないと言います。そのため、クルマの大きな車室は必要ないと感じる人もあるでしょう。特にヨーロッパでは、環境への配慮も含め、自転車で十分だと気がついて、乗り換える人が少なくありません。

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わざわざエネルギーを使って、無駄な座席を運ぶことはありません。EVでなく電動アシスト自転車で十分であり、燃料電池車でなく燃料電池アシスト自転車で十分と考える人が増えてくる可能性もあるでしょう。エネルギーの面だけでなく、車体の大きさを節約することで、道路の占有面積が減るぶん、渋滞対策にもなります。

もちろんクルマも必要ですが、少なくとも普段の移動はアシスト自転車にする人が、さらに増えてもおかしくないでしょう。これまでも各社が開発してきたにも関わらず、なかなか実用化、量産化しなかった燃料電池アシスト自転車ですが、意外にブレイクする可能性があるかも知れません。




ロシアの組織的なドーピングがプーチン大統領の指示によるとの証言が出たそうです。やっぱり、ですけど..。

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