ファスナー(線ファスナー)のことです。おそらく、身につけている中にも一つくらいついているでしょう。ジーパンやチノパンなどのパンツ全般、スカートやワンピース、ジャンパー・ブルゾンやパーカー、ダウンジャケット、ジャージなど、さまざまな衣類に使われています。
衣類以外でも、バッグ類やシューズ、サイフや小物入れ、布団や座布団のカバーなど、身の回りに広く使われています。あまり意識していませんが、一日に何度も開け閉めしているでしょう。改めて考えると、とても便利なパーツですが、ごく当たり前のものになっています。
呼び方はいろいろあります。一般的にはファスナーですが、ジッパー、チャックなどとも呼ばれます。元々は、靴のヒモを結ぶ面倒さを解消しようと、アメリカで1891年に生まれたと言われています。その後、メーカーが、閉める時の音からジッパーという商標も登録しました。
日本では、巾着(きんちゃく)の着から、チャック印という商標で売り出されたため、チャックと呼ばれるようになったと言います。チャックという英単語とは関係なく、これはあくまで日本語、和製英語のようなものということになります。ファスナーとジッパーは世界で広く使われています。
ちなみに、フランスでは「フェルメチュール・ア・グリシェール」、イギリスでは「スライドファスナー」、ドイツでは「ライスフェアシュルス」、イタリアでは「キウズーレ・ランポ」、中国では「ラーリェン」、中南米では稲妻を表す「シェレス・レランパゴス」と呼ばれているそうです。
当たり前のように使っているファスナーですが、言われてみれば確かに便利です。ボタンや靴ヒモなどと比べて、圧倒的に速く開閉できます。そんなファスナーを、自転車のパーツに使うことを思いついた人がいます。ノルウェーの企業、
ReTyre 社の人たちです。
使う場所はタイヤです。この“
ReTyre”、ベースのタイヤの外側に、もう一枚ゴム製のスキンをかぶせるために、ファスナーを使うことを考えつきました。例えば、ベースとなるロード用のタイヤの外側に、オフロード用のブロックタイヤを被せれば、簡単に悪路を走行できるようになります。
被せる時も外す時もファスナー方式なので簡単です。専用のベースタイヤとスキンなので、外側のスキンと内側のタイヤはピッタリ密着しており、さらにファスナーで固定されるので、ズレる心配はありません。安全かつ確実なコーナリングやコントロールが可能だと言います。
オフロード用のスキンに加え、冬用のスパイクがついたスキンもあります。これがあれば、積雪時にも簡単に冬用タイヤに切り替えて自転車に乗れるわけです。これは雪国のサイクリストには嬉しいパーツなのではないでしょうか。北国ノルウェーならではの発想と言えるかも知れません。
タイヤを交換する必要はありません。仮に、スポーツバイクのように、クイックリリースでタイヤが簡単に着脱できない自転車だったとしても、スキン部分はタイヤのようにリング状ではないので簡単に装着出来ます。その点でも画期的なタイヤの表面の交換方式と言えるのではないでしょうか。
世界初のモジュラータイヤシステムです。夏用のロード系のバイクと、冬用にファットバイク等を使い分けていた人なら、場合によっては一台で済んでしまうかも知れません。ロード系のバイクと、マウンテンバイクなどのオフロード系の自転車を使い分けていた人も同様です。
都市部と違って、郊外へ行くと舗装されていない道路もあるでしょう。田んぼの中の畦道とか、雑木林の中を抜ける道、海岸や河川敷の非舗装路など、場合によってオフロードを走ることもある人は、ファスナーで、簡単にタイヤを切り替えて使えるようになります。
行く場所によって、あるいは曜日や季節で使い分けるだけではありません。例えば、非舗装の河川敷の道路を通って都市部まで行き、そこから舗装路を走るような場合、途中で切り替えることも出来ます。スキンは小さくたためるので、携行すれば随時切り替えが可能です。
ヨーロッパの都市のように、古い石畳の道など、ロード用のタイヤでは走りにくい場所でも便利に切り替えられそうです。郊外には砂利道が残っているとか、非舗装の林道を通ると早く着く、海岸の砂がたまった道を通るなど、タイヤを切り替えられれば便利な場所は少なくないと思います。
言われてみれば簡単なことですが、これは思いつきませんでした。この手があったかと、ヒザを打った人も多いかも知れません。専用の工具などは不要で、誰でも簡単に着脱できるという点も優れています。これは是非使ってみたいという人もあるのではないでしょうか。
ベースタイヤの上に、もう一枚タイヤを追加することになるので、重量は増えるでしょう。乗り心地も硬かったりするのかも知れません。ただ、ReTyre 社は特殊な線繊維構造とバランスによって、極力重量を減らす工夫をしているそうです。今のところ700C用ですが、26インチも加わる予定です。
この、ReTyre 社はノルウェーのローカル企業で、ノルウェー国内の一部では1年ほど前から販売されているようですが、製品を改良して、サイズや種類のラインナップを揃え、海外への進出を計画中です。ヨーロッパの一部の店舗では、この夏から購入可能になる予定です。
来年以降は、ヨーロッパや北米の他の地域への展開が予定されており、クラウドファンディングサイトでのキャンペーンもこれから始まる見込みです。また、普及させるため、大手のメーカーと提携する可能性もあるようです。いずれにせよ、まだこれからの製品です。
幅によっては、フロントフォークと干渉するでしょうから、ラインナップによって、どの程度汎用性があるかや、使い勝手は変わってくるでしょう。スペックや機能なども含め、まだサイトには詳しい情報は掲載されていないので、今後の展開を待つしかありません。
とてもユニークなアイディアです。住んでいる場所、走る場所にもよっても変わってくると思いますが、期待する人も多いのではないでしょうか。もしかしたら、近い将来、自転車のタイヤにもファスナーが当たり前に使われるようになるかも知れません。
梅雨入りした途端、快晴になってますが、必ずしも週末と好天が重なるとは限らないのが悩ましいところですね。
Posted by cycleroad at 13:00│
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