一般的にはパンクが多いと思いますが、チェーンまわりのトラブルというのも多いのではないでしょうか。チェーンが外れてしまい、油で手を真っ黒にしながら直した経験のある人は多いはずです。自転車のメカニカルな部分で、一番トラブルになりやすい箇所かも知れません。
日頃からきちんとメンテナンスをして、伸びなどもチェックしていれば防げるトラブルも多いわけですが、外れだり、切れたり、異音がしたり、上手く変速しなくなったり、衣服を巻き込んだりなど、いろいろなトラブルの元になります。厄介ですが、自転車に乗る以上、チェーンと付き合わざるを得ません。
そんなチェーンの煩わしさから、人々を解放しようという試みは、昔から行われてきました。メジャーなのはベルトドライブでしょうか。ベルトドライブは構造的な短所もありますが、チェーンと違って注油の必要がありません。少なくとも油で手を真っ黒にしなくて済み、メンテナンスはラクです。
もう一つは、シャフトドライブでしょう。日本製のママチャリの一部にもシャフトドライブを採用した製品があります。チェーンにまつわるトラブルがない一方で、いろいろと弱点もあるため、なかなか動力の伝達機構の主流となって、チェーンを駆逐するまでには至っていません。
さて、先ごろドイツで行われた自転車の展示会、“
EUROBIKE”で、また新たなシャフトドライブ機構が発表されました。
ceramicspeed 社が発表したコンセプトモデル、“
Driven”です。まだプロトタイプではありますが、新しいシャフトドライブ機構を提案しています。
シャフトドライブは、ギヤを組み合わせて回転の方向を変えるわけですが、この“Driven”では、スプロケットのギヤと噛み合う、シャフトドライブのギヤの歯の部分に、ベアリングが使われているのが特徴です。これによって摩擦抵抗が49%低減され、パワーを効率的に伝えることが出来ると言います。
スプロケット側のギヤも特殊な形をしています。ギヤの歯が13周に並べられており、ベアリング型のギヤを前後方向に移動させることで変速します。ベアリングを使ったことで、ギヤの摩耗が減り、寿命も延びるそうです。この機構は、アメリカ・コロラド大学の機械工学部門と共同で開発されました。
これまでシャフトドライブは、チェーンと比べてトルクの伝達効率が劣るとされてきましたが、この“Driven”は、その点が改善されています。また、どうしても機構全体が重くなるのも欠点とされていました。こちらは、従来のシャフトドライブ機構に比べ、軽量化にも成功していると言います。
従来のように密閉型のギヤボックスではなく、特殊な歯ではあるものの、スプロケットと組み合わせて変速するため、多くの段数がとれることも利点でしょう。この新しいシステムは、エントリーした366作品の中から、見事今年の“
EUROBIKE大賞”を受賞しています。
一般的にシャフトドライブは、チェーン機構と比べて、どうしてもコストが高くなるのも弱点です。まだプロトタイプであり、市販のスケジュールなども決まっていませんが、もし量産化されてリーズナブルな価格が実現できるのであれば、市販のモデルに搭載される可能性も出て来ると思います。
チェーン方式と比べて、ディレイラーやプーリー、チェーンなどの部品が不要になるぶん、トラブルになりにくく、静粛性が高い、注油や清掃などメンテナンスの手間が少ないなどの長所が期待出来ます。もし、これが一般的になれば、何かと厄介なチェーンとおさらば出来るかも知れません。
例えばクルマの場合、動力の伝達機構として、とっくにシャフトドライブが当たり前になっています。にもかかわらず、自転車では主流となっていません。一部の採用例を除いて、それほど広く普及していない背景には、いろいろな要因があるのは間違いないでしょう。
価格や重量、変速方式や効率といった点に加え、乗り心地やトラブルの頻度、自分でどの程度、応急処置が可能か、プロのレース用に採用されるかなど、さまざまな要素が関わってくるため、この“Driven”によって、果たしてシャフトドライブが主流となっていくかは見通せません。
自転車は、典型的な成熟した製品であり、なかなか新たな技術革新によって大きく生まれ変わるようなことはありません。基本的な部分は、ずっと変わっていません。ただ、世界中で日夜研究開発を進めている人がいます。もしかしたら、将来の大きな進化に向かって、一歩ずつ近づいているのかも知れません。
参院定数6増法案は自民党の都合そのもの、酷い話です。合区への配慮で比例を増やす必要はないでしょう。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(6)