他の条件が同じならば車重の軽い方が小さい力でこげるのは自明です。馬力に余裕のあるクルマならともかく、自転車の場合は、人間の力、わずか0.2馬力くらいしかない中で、重さの違いは大きな要素になります。軽量化するためにパーツ交換を考える人もあると思います。
同じ自転車に乗り続けていると気がつきませんが、何かの機会に軽い自転車に乗ったりすると、軽さの威力を実感することもあると思います。軽いフレームやパーツの価格は高いので、予算との兼ね合いにはなりますが、出来るのであれば少しでも軽い方がいいと思っている人は多いはずです。
クルマで、ホイールの交換をする人がいます。見た目は別として、性能や燃費などを向上させるのに有効とされています。ホイールを鉄の重いものからアルミの軽いものに替えることで、いわゆるバネ下重量が軽くなり、パワーや燃費などの改善に効果が高いと言われています。
同じパワーなら軽い方がいいのは当然ですが、バネ下重量、すなわちサスペンションより下の重量を1キロ減らすと、バネ上の重量を4キロから15キロ減らすくらいの効果が得られると言います。4倍から15倍も違うとは驚きです。それだけ、バネ下重量の削減は効果が大きいということです。
このバネ下重量の軽量化は、自転車についても同じことが言えます。もともと、無駄な部分の少ない自転車の重量を減らすのは容易ではありませんが、フォークやサスペンションより下の重量を減らすことで、バネ上の4〜15倍の効果が得られるのだとしたら、これは大きな違いとなるはずです。
自転車の場合、燃費は関係ありませんが、加速や登坂がラクになったり、同じ距離を走行するのに時間が短縮できたり、疲れる度合いが、より小さくて済むことになります。どのくらいの軽量化で、どのくらい実感できるかという問題はありますが、確実に恩恵は受けることになるはずです。
クルマと違って自転車の場合、少しでも荷物を減らしたいと思うのは自然です。車体が軽くなれば違うというのも直感的にわかるでしょう。そこで各種の軽量パーツが販売されることになるわけです。ただ、重量は強度とのトレードオフになるため、往々にして高くつくのが悩ましいところです。
自転車のバネ下重量を減らすと言えば、カーボンなどの軽量ホイールを考える人が多いでしょう。タイヤでも製品によって違ってくるかも知れません。ただ、タイヤチューブに注目する人は少ないのではないでしょうか。消耗品として、いつも決まったものを買っている人が多いと思います。
チューブラータイヤや、チューブレスを使う人もあると思いますが、近年はチューブを使うクリンチャータイプのタイヤが多いと思います。ただ、サイズは別として、チューブの種類は限られており、軽量化のために選ぶ余地は多くないと思います。
ラテックスチューブを使うという選択肢はあります。ラテックスは、天然ゴムで出来たチューブです。相対的に軽く、伸縮性が高くて穿刺抵抗力が高い、振動吸収性が良いなどの長所がある一方、熱に弱く、保管や使用に際して扱いが面倒だったり、自然に空気が抜けやすい、相対的に価格が高いなどの短所もあります。
一般的に使われるのは、ブチルチューブです。こちらは石油由来の化学材料で作られたプチルゴムです。価格が安く、エア抜けもしにくい、耐久性が高くて扱いやすいなどの長所があります。ただ比較的重量は重くなります。薄くて軽量なものもありますが、基本的に耐パンク性能とのバーターになります。
タイヤチューブは、人によってプチルかラテックスか、乗り心地やメンテナンスの手間、価格などの兼ね合いで決めることになると思います。ただ、重量を優先すると、どうしてもパンクのリスクが高くなったり、メンテナンスの手間がかかったりするのが悩ましいところでした。
さて、そのジレンマを解消しようと新しい素材が開発されています。こちらは、熱可塑性エラストマーというプラスチックとゴムを合わせたような素材で出来た、“
Tubolito”というタイヤチューブです。高分子素材を、特許を取得した革新的な技術で製造しているそうです。
特徴として、非常に軽くすることが出来ます。一般的なチューブより最大65%軽い一方、強度は2倍だと言います。これまでの不可能を可能にしたチューブという触れ込みです。修理用に接着テープのように使いやすい、専用のパッチも用意されています。
薄くて軽量、そのぶんコンパクトなので、交換用のスペアのチューブとして携行するにも場所をとりません。エア抜けについても、従来のブチルゴムと同等の空気保持力を持っています。穿刺抵抗力は2倍です。耐スネークバイト性能もゴムチューブ同等以上です。安心のヨーロッパ製というのもポイントだとしています。
特徴的なオレンジ色ですが、これまでのブチルのように黒である必要がないため、革新的な性質を強調するため、この色にしたのだそうです。もちろん、バルブは従来のものと同じで互換性があります。これならば、従来のプチルゴムと同等の使いやすさで軽量化できることになります。
オーストラリアの新興企業である、
TUBOLITO GMBH 社の製品です。まだ日本には上陸しておらず、私も使ったことがないので、実際の性能や乗り心地などについてはわかりません。ただ、ヨーロッパの一部軽量化マニアの間では話題になっているようです。バネ下重量の軽量化の、新たな選択肢と言えそうです。
タイヤチューブは消耗品ですし、地味なパーツです。あまり考えずにいつも同じ製品を使っている人も多いはずです。しかし、タイヤチューブの分野でも、素材を研究し、性能を向上させようと努力している人たちがいます。多くのサイクリストに、軽量化の恩恵が及ぶようになることを期待したいものです。
大谷選手が2打席連発で11号、二桁に乗せました。今シーズンは大事をとって打者だけでもいいような気が..。
Posted by cycleroad at 13:00│
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