サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
August 16, 2018
電動アシストが提供するもの
電動アシスト自転車が多様化しています。
日本のヤマハ発動機が、1993年に発売したPASが電動アシスト自転車の最初と言われていますが、今や世界中に広がっています。海外では、ペダルをこぐ必要のない、いわゆるフル電動の自転車もありますが、フル電動よりは相対的にバッテリーの持ちが良く、航続距離の長い電動アシスト自転車も広く普及してきています。
欧米では、“Pedelec”や“EAPC”(Electrically Assisted Pedal Cycle、電動アシストペダル自転車)などと呼ばれています。登場当初は、電動アシスト自転車という一つのカテゴリーのような形でしたが、近年はいろいろなカテゴリーの自転車に電動アシスト機構が搭載されるようになってきました。
日本でも、当初はママチャリ型がほとんどでしたが、最近はいろいろなタイプの電動アシストが売られています。ママチャリタイプは、男性には評判が良くないということで、男性を意識したデザインや、スポーツバイクに電動アシストを載せたものも増えているようです。
言うまでもなく、電動アシスト機構は坂道でもラクに登れるのが大きな魅力です。自転車は登りが辛くてイヤだと敬遠していた層にも利用が広がり、いまや50CCの原付バイクの販売台数を逆転するほど売れています。原付と違って、免許も登録も不要で手軽な点が、電動アシストの大きなアドバンテージでしょう。
ヨーロッパなどでは、カーゴバイクにも搭載されはじめています。荷物の運搬する上でも、パワーをアシストしてくれる点で、大きな恩恵をもたらします。子どもを乗せた上に、買い物の荷物を運ばなければならないお母さんにも大きなメリットでしょう。
最近はスポーツバイクに搭載されたモデルのデザインも洗練されてきました。いかにも電動アシストに見えてしまうバッテリーは、フレームの各チューブの中などに隠されているものもあります。モーターもハブに搭載され、多少、チューブが太いかなという程度で、言わなければ気づかないものもあります。
いまやシティサイクルだけでなく、ロードバイクやマウンテンバイク、ミニベロやビーチクルーザー、フォールディングからファットバイクまで、もちろんカーゴバイクなども含め、ありとあらゆるカテゴリーの自転車に搭載されるようになってきています。
さて、そんな中、デザイン的にユニークな電動アシスト自転車が売られています。“
Agnelli MILANO BICI
”というイタリアの工房で、ビルダーによって手作りされている、レトロな自転車です。一見すると、昔のモベッドと呼ばれる、エンジンのついた自転車のように見えます。
左:モベッドの例 右:昭和20年代のホンダ A型
モベッドは、いわゆる初期の頃のペダル付きオートバイです。ヨーロッパでも盛んに使われていたようです。日本では、ホンダが昭和20年代に製造し、ロングセラーだったと言います。50CCのエンジンを、その当時の自転車に取り付けたもので、当時は「バタバタ」などと呼ばれていたようです。
ガソリンエンジンですから、燃料タンクがついています。もちろん、排気ガスの匂いやエンジン音もしたでしょう。この往年のモベッドを彷彿とさせるデザインですが、ガソリンエンジンの音も匂いもしません。当時のスタイルを模した電動アシスト自転車なのです。
モペッドに見えるポイントであるガソリンタンクの部分には、バッテリーが隠されています。もちろんエンジンではなく、電動モーターが使われています。古いモベッドのレトロなスタイルを電動アシストを使って復刻させたわけです。おそらく、当時のことを知る世代には懐かしく、たまらない魅力があるのでしょう。
タイヤも太くて、大きなライトやフェンダーなどもついています。頑丈そうなフレームも含め、かなり重量がありそうですが、そこは電動アシストですので、たいした問題になりません。電動のパワーが、がっしりとしたレトロなスタイルを復元するためにも役立っています。
サイドカーや、ボートやゴルフバッグを運べるカーゴバイクもあります。前だけクルマのボディのように見えるのもカーゴバイクです。クラシックカーの前の部分だけを模していますが、この部分を前に倒すと荷台が現れます。いわば荷台のフタになっています。これもクラシックカーファンにはたまらないのでしょう。
なかなかユニークです。Luca Agnelli さんほか、ビルダーによる手作りの作品で、量産されているわけではありませんが、誰でも購入できます。流麗で美しいフォルムは、昔のモベッドを懐かしく思う世代だけでなく、知らない世代が見ても、かえって斬新に感じるデザインかも知れません。
言ってみれば、電動アシスト機構のおかげで、デザイン的な遊び、重量的な余裕が生まれていることになります。そう考えると、こうしたレトロなモベッド風デザインに限りません。なるべく軽量にするため、シンプルが当然である通常の自転車とは違うデザインの展開も考えられます。
バッテリーをフレームの中に隠し、なるべく電動アシスト自転車に見えないようにするのが、現在の一つの方向性のようです。でも、考えてみれば、必ずしも今までの自転車に似せ、シンプルな形状に縛られる必要はないでしょう。もっとデザイン的な冒険も出来るはずです。
電動アシスト機構は、坂道をラクにしたり、重い荷物が運べるようにするだけでなく、車体の重量などの制約を減らす効果も見込めます。今後は、従来の形にとらわれず、ユーザーの好みを反映した、もっと個性的で斬新、多様なデザインの自転車が登場してくる可能性がありそうです。
行方不明だった2歳児、見つかってよかったですね。発見したボランティアの尾畠さんには本当に敬服します。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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